環境省は6月24日、企業による環境課題への取り組みと情報開示を支援する「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」を公表した。気候変動や自然資本といった複数の環境課題に対し、個別にではなく、課題間の相互関係を意識した「統合的アプローチ」で取り組むことを提案している。
近年、気候変動対策、生物多様性の確保、循環経済への移行など、企業が取り組むべき環境課題は拡大し続けている。これに伴い、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)など、サステナビリティに関する情報開示の要請も複雑化・高度化し、一部は義務化の動きも見せている。このような状況は、企業の開示担当者にとって大きな負担となっている。
今回公表された手引きは、こうした背景を踏まえ、企業が複数の開示要請に効果的かつ効率的に対応するための一助として作成された。手引きが提唱する「統合的アプローチ」の核心は、各環境課題を個別のサイロとして捉えるのではなく、それらの「つながり」を意識して一体的に取り組む点にある。これにより、経営層の関与のもとで業務プロセスを改善し、複数の環境課題の同時解決を目指す。
手引きでは特に、TCFDとTNFDのフレームワークを主な対象として、統合的な対応を具体的に解説している。両フレームワークは「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という4つの共通の柱を持つため、統合的なアプローチと親和性が高い。例えば、気候変動と自然資本に関するリスク管理を同一の会議体で審議し、共通の評価軸で重要度を判断することで、部門間の縦割りを排し、より円滑で質の高い経営判断が可能になるとしている。
また、手引きは理論的な解説に留まらず、すでに統合的な取り組みを進めている企業の事例(伊藤園、積水化学工業、リコーなど)を豊富に紹介し、実践的な内容となっている。さらに、EUのCSDDD(企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令)などを背景に国際的な要請が高まる環境デュー・ディリジェンスで収集した情報を、TCFDやTNFDの情報開示に活用する視点も提供しており、企業のレジリエンス強化に資する戦略的な情報開示を後押しする。
手引きの想定読者は、企業の経営層、サステナビリティ関連部門、事業部門とされているが、統合的アプローチは全社的な関与を必要とすることから、幅広い企業関係者の活用が期待される。
【プレスリリース】「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」の公表について
【参照レポート】環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き[PDF]
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