広島県は3月15日、カーボン・サーキュラー・エコノミー(※)の実現に向けて、カーボンリサイクルを核とした新たな産業集積を目指すための方向性や今後3年間の取り組みを「推進構想」として策定したと発表した。

2050年までにカーボンリサイクルを県の産業の柱の一つとして育成し、県経済の発展と世界のカーボンニュートラルに貢献することを広島県は目指している。カーボンリサイクルは高い技術力が求められ、市場規模が将来大きく成長することが予測されており、県内で実証研究拠点の整備が進んでいるなど同県に優位性があるとして、今回の構想策定に至った。3章で構成される同構想の概要は、下記のとおり。

第1章「カーボンニュートラルに向けた国内外の動向」

各国の温室効果ガス削減目標や政府のエネルギー転換イメージを示し、国内外の動向と県内産業への影響を考察

第2章「カーボン・サーキュラー・エコノミー実現に向けた広島県の強み」

広島県の強み(大崎上島の実証研究拠点、県内の研究者や企業の保有技術や取り組みなど)を整理し、カーボンリサイクル分野の技術開発とともに、カーボンリサイクル以外のCO2排出削減技術についても幅広く支援・育成する方向性を提示。大崎上島では、革新的低炭素石炭火力発電の実証事業を実施し、カーボンリサイクル実証研究拠点を整備した。今後、スタートアップ企業も含めた基礎研究拠点も整備する予定。

第3章「カーボン・サーキュラー・エコノミー実現に向けた具体的取り組み」

研究拠点整備による「拠点化=ブランド化」と、スタートアップ企業を中心とした「新産業集積」を進めるための今後3年間の取り組み

カーボンリサイクルの拠点化
  1. 研究開発支援
  2. スタートアップ企業の創出・育成・誘致の強化
  3. プロジェクト創出や企業間連携を目的としたマッチング促進
  4. 研究者の交流機会創出
  5. ビジネス化に向けた需要拡大支援
  6. 大規模な資金投入につながる環境整備
  7. 県内研究事例や企業の取り組みの情報発信
カーボンリサイクル以外のCO2排出削減も含めた新産業集積
  1. 各種マッチング機会の拡充
  2. 県内企業などへの裾野拡大
  3. 若手研究者の育成と次世代教育

広島県はすでに、カーボンリサイクルについて産学官連携や研究活動の集積に向けた取り組みを進めており、県内外の企業・大学・団体などによる「広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進協議会」を2021年5月に発足させた。同推進構想により、カーボン・サーキュラー・ エコノミー実現に向けて広く社会に呼びかけ、共感し連携する仲間を拡大していきたいとしており、今後の取り組みの展開が注目される。

※ カーボン・サーキュラー・エコノミー:CO2を資源と捉え、CO2が生物・化学品・燃料など、さまざまな形に変化しながら自然界や産業活動のなかで、大気中のCO2を増加させることなく持続的に循環する社会経済のこと

【参照サイト】広島県カーボン・サーキュラー・エコノミー推進構想の策定
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