積水化学工業株式会社はこのほど、米国Velocys Inc.と、CO₂を原料とした合成燃料(e-SAF:electro-Sustainable Aviation Fuel)の製造技術構築に向けた戦略的提携のため、基本合意書(MoU)を締結した。積水化学のCO₂→COケミカルルーピング技術と、Velocysのマイクロチャネル反応器を用いるFT(Fischer-Tropsch)反応技術を組み合わせることで、CO₂を資源とする合成燃料の製造が可能となり、航空産業の脱炭素化に貢献する見込みだ。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、あらゆる産業でCO₂排出削減が求められている。特に航空産業は世界のCO₂排出量の約2.6%を占めており、その対策としてSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の導入が注目されている。国際エネルギー機関(IEA)などによると、航空産業のCO₂削減目標の65%はSAFの導入により達成されるべきだ。現在主流のSAFは廃油やバイオマス由来の原料から製造されているが、今後のSAF需要増大を見据えると、CO₂と再生可能エネルギー由来の水素から製造されるe-SAFへの早期の取り組みと普及が不可欠とされている。このような背景から、CO₂を燃料や化学製品に変換して活用するCCU(Carbon dioxide Capture, Utilization)技術が注目を集めている。CCU技術は、CO₂を有価物資源として再利用し、化石資源を代替することで大気へのCO₂排出を抑制する。
積水化学工業は、CCU技術の社会実装による世界のCO₂排出削減を目指し、CO₂を90%以上の高い反応収率でCOに変換する独自のケミカルルーピング技術の開発を進めてきた。一方、Velocysは、都市ごみや産業廃棄物、バイオマス、あるいはCO₂から変換される合成ガス(COと水素の混合ガス)を原料として合成燃料を製造するFT反応技術の開発を20年以上にわたり進めており、独自の触媒とマイクロチャネル反応器の設計により、従来のFT反応技術と比べて6~10倍の高い生産性を確立している。
今回の連携では、積水化学が独自に開発した高反応収率(90%以上)を実現するCO₂→CO変換技術「ケミカルルーピング反応」と、Velocysが保有する高いCO転化率(90~95%)を実現するFT反応技術(合成ガス→合成燃料)を組み合わせた、新しいe-SAF製造技術の構築を目指す。将来的には、CO₂を原料とする高効率なe-SAF製造技術を確立し、航空業界の脱炭素化および持続可能な社会の実現に貢献する方針だ。
【プレスリリース】積水化学とVelocysがCO₂由来合成燃料(e-SAF)の製造技術構築に向けた戦略的提携を開始
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