宇宙関連スタートアップの米ストーク・スペースは10月5日、シリーズB(資金調達ラウンド)で1億ドル(約149億円)の資金を調達したと発表した。調達した資金を元手に、完全リユース型ロケット「ノヴァ(Nova、#1)」の開発を進める。
最新の投資ラウンドは米ベンチャーズキャピタルIndustrious Venturesが主導した。あわせて、同社の顧問であり化学大手リンデの会長を務めるスティーブ・エンジェル氏が、ストークの取締役に加わった。
その他、ミシガン大学、ビル・ゲイツ氏が立ち上げたブレークスルー・エナジー、トヨタのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるトヨタベンチャーズなどの投資家も参加した。
ストークは全ロケットをリユースし、24時間以内に再び打ち上げ可能な2段式ロケットの開発を進めている。これまで、ペイロード(人工衛星などの搭載物)を打ち上げるためのロケットは2段目が使い捨てられてきたが、同社は1段目のロケット(推力を補助するロケット)のみならず、2段目のリユースも可能な完全リユース型ロケットの開発を試みている。
1段目のロケットと違い、2段目のロケットは宇宙空間に到着後、地球帰還時には大気圏に再突入することになり、その際に高熱にさらされる。
そこで、ストークが開発を進めるロケットは、1段目に液化天然ガス(LNG)と液体酸素(LOX)を採用した7基のエンジンを、2段目には大気圏に再突入する際の熱にロケットが耐えられる耐熱シールドと、低温の液体水素(LH2)と液体酸素(LOX)を通すことで冷却する仕組みを備える。
9月17日には、2段目のプロトタイプ機「Hopper2」による垂直離着陸型宇宙往還機(VTVL)の試験飛行に成功。Hopper2は約30フィート(約9メートル)まで飛行した後、15秒後に無事着陸した。
ストークは、今回の投資ラウンドで調達した資金を第1段・第2段目のロケットエンジンの開発や、フロリダ州ケープカナベラル発射施設14での新設に充てる予定である。
発射施設14は、1962年に米国航空宇宙局(NASA)のマーキュリー計画の一環として、ジョン・グレン宇宙飛行士が操縦したマーキュリー・アトラス6号機の打ち上げ場所として知られている。グレン氏は米国人として初めて地球を周回した人物だ。ストークは、軌道飛行のために米宇宙軍(USSF)から発射施設14の使用を認められている。
近年、宇宙ステーションでの取り組みだけでなく、民間企業による通信放送や人工衛星など人類に役立つ宇宙開発活動が活発化している。こうしたなか、リユース型ロケットは、非常に高額なロケットを1度しか使わない使いきりに代わる環境配慮型のコンセプトと言える。よりサステナブルな宇宙開発に向け、ストークによる完全リユース型ロケットの開発が進捗することに期待したい。
(#1)ノヴァ…新星。古い星の残骸が組み合わさって新しい星が誕生する天文現象を意味する。
【参照記事】Stoke Space Announces $100 Million in New Investment
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*冒頭の画像の出典:ストーク・スペース
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する金融投資メディア「HEDGE GUIDE」の「宇宙企業ストーク・スペース、149億円調達。再使用型ロケット開発推進」の転載記事です(一部表現を改変しています)。