大成建設は9月26日、CO2排出量収支が実質マイナスとなるカーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を用いた建築物の外壁部材(カーテンウォール)で、国内初となる1時間耐火の国土交通大臣認定を取得したと発表した。これにより、高層ビルなどの建築プロジェクトにおいて、通常の建築確認申請だけでカーボンリサイクル・コンクリートを用いた外壁部材を建築物に適用することが可能となる。
コンクリートは、セメントの生産工程で多量のCO2が発生するため、その削減が課題だ。大成建設は、セメント使用量を抑制し、産業副産物である高炉スラグを有効活用した環境配慮コンクリート「T-eConcrete」シリーズを開発してきた。このシリーズには、セメント使用量をゼロにした「T-eConcrete/セメント・ゼロ型」や、炭酸カルシウムなどの混練によりCO2を固定し、CO2排出量収支のマイナスを実現した「T-eConcrete/Carbon-Recycle」など4タイプがあり、順次実用化している。しかし、セメントを使用しないタイプは、建築基準法が規定する指定建築材料に該当しないため、建築物の主要構造部(柱、梁、床、壁など)に適用する際には、部材の耐火性能を確認し、要求性能を満たした部材であることの個別認定をその都度、国土交通大臣が指定する評価機関から取得する必要があった。
そこで大成建設は、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の適用対象となる建築プロジェクトの拡大および設計期間の短縮を目的に、多くの高層建築で外壁に採用されているカーテンウォールに「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を用いて製造した供試体で加熱試験を実施した。その結果、カーテンウォールに要求される耐火性能を満たすことを実証し、国内で初めて1時間耐火の国土交通大臣認定を取得した。これにより、通常の建築確認申請のみで「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を用いたカーテンウォールを建築プロジェクトに適用可能となった。
「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を用いたカーテンウォールの特長は以下の通りだ。製造時にセメントを使用せず、工場等から排出されるCO2を利用したカーボンリサイクル製品である炭酸カルシウムを混練することにより、従来のカーテンウォールと比較して製造時のCO2排出量をトータルで最大120%削減することができ、CO2排出量のマイナス収支が可能となる。また、製造過程でポリプロピレン短繊維を混合することで、火災時に起きるコンクリートの爆裂を防止することができ、カーテンウォールに要求される耐火性能(遮熱性および遮炎性)を満たしている。さらに、カーテンウォールを製造するPC工場では、従来のセメントを材料に用いたカーテンウォールと同様の方法で製造が可能なため、既存設備を変更することなく、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」を用いたカーテンウォールを製造できる。耐火性能の国土大臣認定を取得したことにより、建築主事による都道府県等への通常の建築確認申請手続きで本カーテンウォールを個別の建築プロジェクトに適用することが可能となり、申請手続きが簡便化される。本工法の適用により建築物の生涯CO2排出量削減への寄与が期待できる。
大成建設は今後、セメントを使用せず建築物の構造部材に適用可能な環境配慮コンクリート「T-eConcrete/Carbon-Recycle」の普及展開を図り、建築物への実装を推進するとともに脱炭素社会の実現に貢献していく方針だ。なお、国土交通省の通知「国住参建第390号 令和7年4月18日 国土交通省住宅局:建築基準法第37条の規定に基づく大臣認定における低炭素型のコンクリートの取扱いについて(通知)」により、低炭素型のコンクリートを用いた部材の耐火性能が普通コンクリートを用いた部材との比較により、同等性が確保可能である場合には防火関連規定の適用が可能となった。将来的には、当該通知を活用し、低炭素型コンクリート部材の普及展開を積極的に進めていく。
【プレスリリース】国内初 カーボンリサイクル・コンクリート外壁部材の耐火大臣認定を取得
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