神社の改築などで出た残材を「蘇材」として有効活用する「神社復興プロジェクト」が、2024年3月にスタートした。ユニークな取り組みを開始したのは、60年以上に渡って神社仏閣彫刻に携わってきた有限会社豊田彫刻工房(埼玉県寄居町)。サーキュラーエコノミープロジェクトを通し、神社の支援と、子どもたちに神社や神棚についての知識を届けることを目的としている。
豊田彫刻工房は、1959年の日光東照宮の修理を契機に創業。全国各地で数多くの神社仏閣建築に携わってきた。業務内容は、社寺仏閣の彫刻、木彫看板・額の製作、RC社寺建築の化粧材製作、PC製鳥居・紋章製作、山車・既存彫刻の補修、修理など多岐にわたる。伝統技術を継承・普及させるため、市民や小学生を対象にした彫刻セミナーも開催している。
同社が神社復興プロジェクトを開始した背景には、全国各地の神社の危機的な状況がある。同社によると、国内の神社の総数は8万社を超え、5.5万のコンビニ店数を大きく上回っている(2024年3月時点)。しかし、この10年でおよそ300社も減っており、氏子や一般参拝者の減少による「神社離れ」も加速。都市部・過疎地を問わず、存続が危ぶまれる神社も少なくないという。
本プロジェクトでは、神社で使われなくなった残材を削って新品同様(蘇材)にしたうえで保管。顧客の要望に応じて、繁栄祈願の彫刻作品に仕上げる。制作した彫刻物は、神社で祈祷した後、企業などの神棚に奉納される。プロジェクトで得られた収益の一部で、「神社はなぜ日本各地に?」「神社とは?」「神棚の意義とは?」などをトピックにしたデジタル教材を制作。子どもたちに無料配布する。
「新しい材料へ対応しながら、伝統建築の趣を変えることなく、文化を踏襲し、施主の求める製品を実現すべく日々努力している」という同社。同プロジェクトの基幹を「サーキュラー(循環型)」として、「残材利用で環境負荷軽減」「神社への寄進でご利益頂戴」「教材制作で文化継承」という3つの価値創造を掲げている。
プロジェクトには幾つかのコースが用意されている。「神社お任せコース」は、お任せのかたちで神社から出された蘇材を使って制作、松坂市の本居宣長ノ宮で祈祷を行い、奉納する。「叶神社コース」は、横須賀市の叶神社大鳥居からの蘇材を使い、同神社で祈祷を行う。その他、特別コースもあるという。
多くの人たちに神社・神棚への親しみを持ってもらい、地域の神社を訪れる機会を増やし、神社離れに歯止めをかけることを目指す本プロジェクト。株式会社グローバルイノベーションズが企画立案・運営などで協力する。
【プレスリリース】「子供たちに神社・神棚の存在意義を伝えたい!」 神社仏閣彫刻の豊田彫刻工房による「神社復興プロジェクト」が始動。神社改築時に出た木材を、新たな形で蘇らせた「蘇材」で、神棚の彫刻物をお届け!
【参照記事】神社復興プロジェクト
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(※画像の出典:有限会社豊田彫刻工房)