UKリサーチ・イノベーション(UKRI※)はこのほど、政府からの2,250万ポンド(約31億円)の投資を元に、学際的サーキュラーエコノミーセンター5つを新設することを発表した。

5つのセンターは繊維・建設・化学・金属産業において、より少ない原材料を使用し、廃棄物を再利用することで、環境保全に貢献し、英国経済の繁栄を促進することを目指す。新設される5つのセンターは以下のとおりだ。

学際的繊維サーキュラリティセンター

ロイヤル・カレッジ・オブ・アートが主導し、原材料の輸入に頼らず、家庭ごみや作物残さ、および使用済み繊維を使って新しい繊維を開発し、廃棄物管理と農業から繊維の生産・設計まで、英国を拠点とする新しいサプライチェーン構築を目指す

鉱物由来の建設資材の学際的サーキュラーエコノミーセンター(ICEC-MCM)

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンが主導し、鉱物資源のより効率的な使用および回収システムを開発する。同システムにより、英国の建設用鉱物の抽出量は1日あたり50万トン以上削減され、鉱業廃棄物は毎年1億5,400万トン削減されることが予測される

循環型化学経済学際センター

ラフバラー大学が主導し、英国の320億ポンド(約4兆4,700億円)の化学産業における化石燃料への依存を減らすことを目的として、使用済み製品と排出されたCO2からオレフィンを回収して再利用する方法を開発・実装する。オレフィンは合成繊維やプラスチック、および洗剤など多くの有機化学品の原材料として使用されている。同センターは新しい革新的技術だけでなく、業界や消費者、および利害関係者と協力して業界の環境負荷を減らし、生産性を向上させる業界全体のソリューションを開発する

テクノロジーメタルの学際的サーキュラーエコノミーセンター

エクセター大学が主導し、コバルトやレアアース、およびリチウムなどの鉱物の循環型経済を構築する方法を探る。電気自動車や風力タービンなどに不可欠なこれらの金属について、採取段階から安全で環境に配慮した循環を可能にする新しいサイクルを開発する

循環型金属学際センター

ブルネル大学ロンドンが主導し、英国を2050年までに金属を完全に循環させる最初の国にすることを目指す。現在、世界のエネルギー需要の15%とCO2排出量の12%は、7つの主要金属の採取によることから、この目標を達成すると環境負荷を大きく削減できる。現在、英国はほぼすべての金属を輸入しているが、同センターは航空宇宙や自動車、および電子機器などの分野で使用する金属のリサイクル方法を検討する。これにより、今後10年間で英国経済に1,000億ポンド(約13兆9,000億円)以上の貢献が見込まれるとともに、科学技術の進歩を促し、循環型経済への移行に必要な環境的・社会的・経済的理解を生み出す

クワシィ・クワーテンエネルギー大臣は、「英国は、産業の課題に対するグリーンソリューションを構築するうえで、世界をさらに牽引していきたいと考えています。このようなプロジェクトは、製造業者をグリーン産業革命の最前線に置く優れた例で、私たちはコロナ禍での経験をもとに、より環境に配慮した大きな一歩を踏み出し、2050年までにネットゼロエミッションを達成します」と述べている。

レベッカ・パウ環境大臣は、「廃棄物と資源の循環型経済の構築は、英国政府の環境に対する革新的なアジェンダの中心であり、私たちはより多くの資源を削減・再利用・リサイクルするために、さらに迅速に取り組むことを約束します。これらの新しい研究センターは、よりクリーンで持続可能な廃棄物の分野を創出するうえで重要な役割を果たし、環境をより良く保護して、次世代により良い状態を残すことに貢献します」と語っている。

※)UKRIはビジネス・エネルギー・産業戦略省が後援する、2018年に発足した研究イノベーションを行う政府外公共機関である。

【参照サイト】Circular economy centres to drive UK to a sustainable future