プラスチックの循環型経済を目指す世界経済フォーラムのイニシアチブGlobal Plastic Action Partnership(以下、GPAP)はこのほど、ベトナム政府と新しいパートナーシップ「Viet Nam National Plastic Action Partnership(以下、NPAP)」を締結した。NPAPは、陸や海洋に流入するプラスチックごみの大幅削減と、都市や沿岸の観光地、海洋保護区からの使い捨てプラスチック排除について、ベトナムを支援することを目的とする。

専門家らは「現状のまま」では、プラスチック汚染危機の根本原因に対処するための大胆かつ体系的な行動を取らない限り、ベトナムの水域へのプラスチックごみの流入は2021年から2030年の間に106%増加すると予想している。大胆かつ体系的な行動には、材料の再設計、持続可能な生産と消費、および廃棄物管理能力の強化が含まれる。

ベトナム政府は2019年12月、プラスチック汚染危機に対処するため、期限付きの目標を設定した。同目標には、海洋プラスチックごみを2025年までに半減させ、2030年までに75%削減して、沿岸の観光地や海洋保護区から使い捨てプラスチックと非生分解性プラスチック袋を排除することが含まれる。同国国会は2020年11月、海洋プラスチックごみによる汚染を防止するため、プラスチックごみの発生抑制・再利用・リサイクル・適正処理などの内容を含む環境保護法改正案を可決した。同改正案は、組織と個人が使い捨てのプラスチック製品と非生分解性プラスチック袋の使用を制限し、削減および分別して、ごみを処分する責任を規定している。

NPAPは、同目標に向けてベトナムですでに活動しているプラスチック行動イニシアチブのコミュニティの進展加速を目的とする。また、プラスチックごみおよび汚染への取り組みと、プラスチックの持続可能な循環型経済モデルへの移行に向けた共通のアプローチに沿って調整するべく、官民・市民社会のステークホルダーをまとめて、結びつける役割も果たす。

NPAPの成果として、ベトナムの主要な専門家らが支持する国家行動ロードマップの開発と導入がある。同ロードマップは、深刻化するプラスチック汚染と海洋プラスチックごみの危機を止めるために、同国が実行するべき具体的なシステム変更の施策を提示するもので、今後数カ月以内に発表される予定だ。

ベトナムの天然資源環境相のチャン・ホン・ハー氏は、「NPAPがベトナムのプラスチックごみ管理の戦略・計画・構想を支援し、プラスチック汚染に対処するための有意義なイニシアチブを促進して、ベトナムとASEANの循環型経済の発展を推進することをわれわれは楽しみにしています。当プログラムが、規制当局・経済界・二国および多国間の国際パートナーの協力基盤を築き、プラスチック汚染問題に効果的に取り組み、プラスチックの循環型経済の発展を通じて持続可能な生産と消費を促進することを願っています。これにより、ベトナムはプラスチック汚染問題解決に向けた世界的な取り組みに貢献するでしょう」と述べている。

GPAPの理事で世界経済フォーラム実行委員会のメンバーであるクリスティン・ヒューズ氏は、「ベトナムは、インドネシアやガーナと並んで、プラスチックに関する行動を加速させる独自のマルチステークホルダー共同モデルを早期に導入した国の一つになりました。このパートナーシップからの教訓と成功が、アジア太平洋地域の他国のイニシアチブに情報を提供して行動を促進させることを期待しています」と語っている。

ベトナムのNPAPは、スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会でGPAPとベトナム政府が概念化し、ベトナムの民間企業および市民社会組織の支援によって実現した。NPAPの締結により、プラスチックの循環型社会への移行がどのように進んでいくのか注目していきたい。

【参照サイト】Viet Nam and the World Economic Forum Launch Partnership to Tackle Plastic Pollution and Marine Plastic Debris
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