YKK株式会社(以下、YKK)は10月13日、2050年までに「気候中立」(温室効果ガス排出ゼロ)を達成するための「YKKサステナビリティビジョン2050」を策定した。

「YKKサステナビリティビジョン2050」は、同社が2019年に策定した「YKKグループ環境ビジョン2050」と10項目のSDGsの達成に向けて、以下の5つのテーマで構成されている。

テーマ1:気候ー温室効果ガス排出の削減、再生可能エネルギーの採用増

気候変動を抑制すべく、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求するパリ協定の目的を支持し、ファスニング事業における温室効果ガスの削減に取り組む。

  • 自社およびサプライチェーンにおけるCO2をはじめとした温室効果ガスの排出量を削減する
    2030年までにScope1と2で50%削減(2018年比)、2030年までにScope3で30%削減(2018年比)
  • 2050年に向け、温室効果ガス排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す
  • 製造方法と設備の改良、オペレーションと各工程の効率化を追求し、エネルギー使用量を削減する
  • 2019年以降、石炭使用設備の新設を廃止し、2030年までに全ての石炭使用設備を廃止する
  • ファスニング事業拠点に再生可能エネルギー発電施設を可能な限り設置する
  • Scope2の排出削減のために、可能な限り外部から再生可能エネルギーを購入する
  • Scope3の排出削減のために、2030年までにファスニング商品の繊維材料を100%持続可能な素材(リサイクル材、自然由来材料など)に変更する

※Scope1は自社の直接排出量、Scope2は電力など自社で消費したエネルギー起源の間接排出量、Scope3はサプライチェーンなど、その他の間接排出量を示す。

テーマ2:資源ー持続可能な資源の採用増

ファスニング事業で製造される商品や使用される梱包材の材料における環境負荷を低減し、持続可能な素材へと移行することで、商品のライフサイクルを通じて発生する廃棄物を削減、石油由来材料の使用を削減、および循環型社会の実現への貢献を目指す。これらの目標を達成するため、以下を実施する。

  • 2030年までに、ファスニング商品の繊維材料を100%持続可能素材(リサイクル材、自然由来材料など)に変更する
  • 2030年までに、ファスニング事業で使用される全てのビニール・プラスチック製梱包材を持続可能な素材や回収・再利用など持続可能な形態に変更する
  • 全ての製造拠点において埋め立て、あるいは焼却される廃棄物の排出量を削減する
  • 2030年までに、廃棄物の再資源化率を90%まで向上させる

テーマ3:水ー水の利用量の削減と排水管理の強化

深刻な水資源の枯渇・劣化問題に対し、ファスニング事業において取水量の削減や排水の環境負荷低減などに取り組む。

  • 水資源問題が懸念される地域の製造拠点において、水使用の効率化・再利用などの取り組みを通じて、取水量を削減する
  • 政府の規制および、ZDHC(有害化学物質排出ゼロ)などの業界基準を基に制定した自社基準に従い、全ての製造拠点において排水管理を徹底する

テーマ4:化学物質ー化学物質の管理と削減

将来世代にわたり豊かな生活を残すため、ファスニング事業に関わる化学物質による環境への影響・負荷を最小限にとどめる。

  • ZDHCのMRSL(製造時制限物質リスト)などの業界基準を基に制定した自社基準(YKK RSL)に従い、商品製造における入口から出口までの化学物質使用を管理し、化学物質の使用削減をさらに進める
  • Standard 100 by OEKO-TEXのような業界基準を順守し、商品における規制物質の使用を廃止する
  • 有害化学物質を削減し排除するような新しい製造方法を開発する

テーマ5:人権ー人権の尊重と、公正で安全な労働環境の維持

全ての人間の尊厳と権利を尊重するという世界共通の理念を重要視し、多様で持続可能な社会に貢献する。

  • 多様性を認めた包括的な人権の尊重と労働環境の整備の徹底により、一人ひとりが個性を活かして働ける安心安全な職場環境をサプライチェーン全体で形成し、健康で幸せに満ちた生活を支援する
  • YKK精神「善の巡環」とISO26000に基づいたYGCC(YKK Global Criteria of Compliance)監査を全YKKグループの製造拠点を中心に実施し、第三者機関による定期的な監査も実施することで、透明性を維持しつつ持続可能な活動へのさらなる改善を行う

また、1994年に「YKKグループ環境宣言」を制定したYKKグループは、事業活動のすべての領域で以下をはじめとする環境活動に取り組んでいる。

  • 1994年、「NATULON」:再生PETを主材料としたファスナー(ファスナー10,000本につき約3,600本のペットボトルをリサイクルできる)
  • 2016年、無水染色技術「ECO-DYE」:染色工程(準備工程、洗浄工程、分離・回収工程)において水をほとんど使用せずに、商品の品質、外見ともに従来と同レベルの染色技術を開発
  • 2019年、「GreenRise」:主材料を化石燃料由来から植物由来ポリエステルに置き換えて、化石燃料使用量の削減・製品サイクル上のCO2排出量を減少したファスナー
  • 2020年、「NATULON Ocean Sourced」:海洋プラスチックごみを主材料としたファスナー

同ビジョン発表に際して、YKK代表取締役社長の大谷裕明氏はコメントを発表している。「YKKは、本業を通じた持続可能な社会の構築を常に追求し続けております。こうした企業活動のすべての根幹にあるのがYKK創業者 吉田忠雄の企業精神「善の巡環」です。『他人の利益を図らずして自らの繁栄はない』という思想は社会や関連業界とともに栄え続けようとするYKKグループの企業精神を鮮明に表しており、サステナビリティに通ずる考え方であると捉えています。YKKは「善の巡環」のもと、事業・商品を通じてサステナビリティの本質に向き合い、ソーシャルグッドな企業であり続けるためにチャレンジを続けてまいります」と、同社は「YKKサステナビリティビジョン2050」を10月12、13日にGlobal Fashion Agenda(※)が主催してオンラインで催されたコペンハーゲン ファッションサミットのYKK特設ページに掲載した。

(※)Global Fashion Agendaはコペンハーゲンに本拠を置くNGOで、ファッションの持続可能性に関する業界のコラボレーションと官民協力のためのリーダーシップフォーラムである。

【プレスリリース】2020年10月13日 気候変動、材料資源、水資源、化学物質管理、人権に取り組む持続可能性目標「YKKサステナビリティビジョン2050」を策定~2050年までに「気候中立」を実現~
【参照サイト】Global Fashion Agenda