原材料の生産、製品の製造、さらには製品の販売から廃棄にわたるサプライチェーン全体において、廃棄物の量が多く、また水を汚染するなどの要因から、環境汚染産業という不名誉な表現をされることの多いアパレル産業において、循環性向上を目指すプロジェクト「サーキュラーコットンファクトリー(以下、CCF)」が始動した。
CCFは、次の小島ファッションマーケティングの調査結果を引用。日本では年間約28.5 億枚の衣服が作られ、そのうち約 14.8 億枚は売れ残り、新品のまま破棄される。また、工場で衣服をつくる過程でも繊維廃材が発生しているにも関わらず、繊維廃棄物を繊維に再生するリサイクル率は 17.5%だという。この現状を懸念し、同プロジェクトでは、これらの廃棄繊維を、リサイクル率の高い「紙」に変えることに着目した。
同プロジェクトを推進する一般社団法人サーキュラーコットンファクトリー 代表理事である株式会社アバンティ代表取締役会長の渡邊智恵子氏は、1990 年より日本におけるオーガニックコットンの啓蒙活動に取り組んできた中で、26年ほど前から繊維の廃棄物を木材パルプと混ぜて紙に替える試みを始め、社内で使用するカタログ・便箋・封筒などをつくってきたという。この試みの中で、上質な紙をつくることに成功した実績と、また日本が持つ紙の文化を世界に発信していきたいという思いから、本プロジェクトを立ち上げ、賛同パートナーを募っている。
CCFの運営には渡邊氏のほか、グラフィックデザイナーの福島治氏、hap株式会社の代表取締役社長で世界初の快適多機能性素材「カバロス(COVEROSS®️)」を開発した鈴木素氏、45R-J株式会社代表取締役の中島正樹氏の3人が理事として参画している。
また、繊維から再生されたサーキュラーコットンペーパーの活用を広める「100 project」を発足し、パートナー会員から収集したサーキュラーコットンペーパーを使った事例が100件集まり次第、同ペーパーを使用した書籍「洋服で未来(紙)をつくる100 project」の発行を目指すことも発表された。
9月9日に開催された同プロジェクトの記者発表会には、紙を使用する立場からのゲストが招かれ、廃棄物からの再生紙に対して下記のように期待を述べている。
日本郵政株式会社 取締役兼代表執行役社長 増田寬也氏
「グループ全体で約40万人の社員を抱え、職業柄紙を使う機会が非常に多く、廃棄物の減少に努めなければいけない一方で、はがきや手紙などの紙で思いを伝える文化は今後も継承していきたい。また、2022年の年賀状から、はがきに利用される紙をFSC認証の素材に切り替えるなど、環境負荷の低減と紙文化の継承をはかっていきたい」
株式会社榮太樓總本鋪 取締役副社長 細田将己氏
「和菓子屋では、商品を紙の箱に入れ、そこに贈答用の熨斗紙をかけ、さらにはその商品を紙袋にいれてお客様にお渡しするなど、多くの紙を使用する。それらを上質な再生紙に替えていくことで、廃棄物の削減に協力したい」