スイスのセメント会社で世界大手のラファージュホルシムは9月21日、世界的な建材会社として初めて、科学的根拠に基づく目標設定イニシアチブ(Science Based Targets initiative、以下SBTi)の「Business Ambition for 1.5°C」誓約(2050年までにCO2排出実質ゼロにする誓約)に署名した。

SBTiは、2018年から2030年までにセメント原料1トンあたりのスコープ1(※3)とスコープ2(※4)のCO2排出量を21%削減する同社の目標を承認した。これにより、同社は同時期にスコープ1でCO2排出量をセメント原料1トンあたり17.5%、スコープ2で65%削減し、スコープ3(※5)の排出量を含め、バリューチェーン全体で取り組みを拡大する。そして、この包括的アプローチにより輸送と燃料関連の排出量を20%削減する。

ラファージュホルシムはSBTiと提携して、セメント業界で1.5°C目標を実現するためのロードマップを開発し、環境に配慮した建設を進めていくことを公表した。これにあたり、2030年までにラファージュホルシムは以下を行う。

  • ECOPact(※1)やSusteno(※2)などの低炭素およびカーボンニュートラル(気候中立)な最先端の製品の使用を促進する
  • 1億トンの廃棄物と副産物をエネルギーと原料にリサイクルする
  • 焼成カオリン粘土の使用を拡大し、新しいバインダーを使ったセメントを開発する
  • 生産時の廃棄物由来の燃料使用を倍増させ、37%にする
  • セメント原料1トンあたりのCO2排出量を475 kgにする
  • 同社初のCO2排出実質ゼロのセメント製造施設を運営する

ネットゼロ達成の過程でラファージュホルシムは、製品と工程において再生材料の使用を増やし、寿命後に材料を回収することで、循環型建設を加速する。同社は2019年の1年間で4800万トンの廃棄物をリサイクル。さらに、今後10年間にわたり、欧州と北米で20以上の二酸化炭素回収・有効利用・貯留 (CCUS)プロジェクトを実施するなど、高度な技術開発と導入を行い、ネットゼロ達成への次のステップに向けて準備していく構えだ。

ラファージュホルシムは昨年、欧州でのCO2排出量削減を目的として1億6000万スイスフラン(約182億円)を投資することを表明している。さらに、9月1日には同社も加盟するグローバルセメント・コンクリート協会が、2050年までにカーボンニュートラル(気候中立)を達成するという目標を発表している。

世界大手のセメント会社ラファージュホルシムが示したネットゼロへの決意。サプライヤーから顧客、廃棄までを含めたサプライチェーン全体としてネットゼロに取り組む姿勢は、これからの建設業界にインパクトを与えていくことだろう。

(※1)ラファージュホルシムが開発したグリーンコンクリートで、標準的なコンクリートと比較して、炭素排出量が30%から100%少ない。
(※2)解体された建物からの混合造粒物を添加剤として使用する、欧州初で唯一の省資源セメント。ラファージュホルシムが開発した。
(※3)事業者⾃らによる温室効果ガスの直接排出
(※4)他社から供給された電気、熱・蒸気の使⽤に伴う間接排出
(※5)スコープ1、スコープ2以外の間接排出

【プレスリリース】LafargeHolcim Signs Net Zero Pledge with Science-Based Targets
【プレスリリース】LafargeHolcim allocates CHF 160 million to reduce carbon footprint in Europe
【参照サイト】ECOPact – The Green Concrete
【参照サイト】Susteno, resource-saving cement