グローバルセメント・コンクリート協会(以下、GCCA)は9月1日、2050年までにカーボンニュートラル(気候中立)を達成するという目標を発表した。同声明「2050 Climate Ambition」では、コンクリートの長期的なサステナビリティに関する世界的見地が示されており、建設業界の大きなマイルストーンとなる。

世界のGDPの13%を占める建設業界は、コロナ禍における経済復興に重要な役割を果たす。同業界の主要分野の一つであるセメント・コンクリート産業は、1990年以来セメント原料1トンあたりのCO2排出量を19%削減し、代替燃料の使用を9倍に増加させるなど、これまでも気候変動対策を講じてきた。

声明の概要は以下の通りだ。

  • 直接エネルギーで排出されるCO2を削減してゼロにし、他産業由来の廃棄物の共同処理を最大化する。
  • 再生可能エネルギー源によって、間接エネルギー排出を削減する。
  • 新技術と大規模なカーボンキャプチャー(炭素隔離貯留技術)の導入により、プロセスにおけるCO2排出量を削減する。
  • セメントのクリンカ(セメントの原料を焼いた後に冷却してできる水硬性をもった塊)比率とコンクリートにおけるセメント使用量を減らし、コンクリートをより効率的に使用する。
  • 建設および解体廃棄物からコンクリートを再処理して、コンクリート製造に使用する再生骨材を製造する。
  • 大気中からCO2を吸収して貯蔵するコンクリートの性能を向上させ、利用する。

現在GCCAのメンバー企業は詳細な活動とマイルストーンを設定するべく、2050年に向けた具体的なロードマップを開発しており、2021年後半の公開を予定している。

GCCAの最高経営責任者であるダイナ・マクロード氏は、「私たちが将来世代にわたる課題に直面し経済回復に努めるなかで、コンクリートは持続可能な社会構築に重要なものとなる。われわれは、この業界をパリ協定などのグローバルな目標に対応させるために本声明を発表した。道のりは厳しいものになるかもしれないが、業界のサプライチェーン全体やパートナーと協力して、目標達成のために全力で取り組んでいく」と述べた。

GCCAは世界のセメント・コンクリート産業の大手40社からなる組織で、2018年に発足した。建設業界の課題を解決するべく技術革新を行い、持続可能な建設に貢献することを目的としている。

日本の一般社団法人セメント協会も2020年3月、2050年までに温室効果ガス排出量を80%削減する目標を設定している。社会経済に大きな影響を与える建設業界のセメント・コンクリート産業が脱炭素に向かって加速し始めたことは、循環型経済移行への大きなステップとなるだろう。

【プレスリリース】Concrete – the world’s most widely used material – targets carbon neutral future
【参考】GCCA Climate Ambition Statement
【参照サイト】脱炭素社会を目指すセメント産業の長期ビジョン