佐川急便株式会社、ミズノ株式会社、帝人フロンティア株式会社の3社は6月9日、使用済みのユニフォームを回収し、再び新たなユニフォームへと再生させる完全循環型リサイクルのトライアル運用を開始したと発表した。

各社の知見と技術を結集した「資源循環スキーム」を構築し、物流業界では先進的となる繊維to繊維リサイクルの本格展開を目指す実証事業だ。

今回の取り組みは、佐川急便が使用するポロシャツユニフォームを対象とする。まず、ミズノがリサイクル効率を最大化するため、ボタンなどの副資材を含めてすべてポリエステル100%で構成されたユニフォームを新たに設計・製造する。

佐川急便の従業員が着用し、使用済みとなったユニフォームは、ミズノが回収する。ミズノは、環境大臣の認定を受けて製造事業者などが自社製品を広域的に回収・リサイクルできる「広域認定制度」の事業者であり、そのノウハウを活かして効率的な回収体制を構築する。

回収されたユニフォームは、ポリエステルリサイクルの分野で長年の実績を持つ帝人フロンティアに渡る。同社は、独自のケミカルリサイクル技術を用いて、使用済みユニフォームを化学的に分子レベルまで分解し、再び高品質なリサイクルポリエステル原料へと再資源化する。

この原料から作られた新しいユニフォームが再び佐川急便で利用されることで、廃棄物を出さずに資源が循環し続ける「クローズドループ」が完成する。

3社で取り組む循環型リサイクルのイメージ図(プレスリリースより)

この協業の背景には、繊維業界が直面する深刻な環境課題と、各社のこれまでのサステナビリティへの取り組みがある。環境省の調査によると、2022年に日本国内で廃棄された衣類の量は約48.5万トンに上る。こうした状況を受け、経済産業省を中心に繊維製品の再資源化に向けた仕組み作りが進められている。

国際的にも、欧州では2020年以降、アパレルの売れ残り商品の廃棄を禁止する法規制が導入されるなど、サーキュラーエコノミーへの移行が加速している。

佐川急便はこれまでも、ペットボトル再生ポリエステルを原料としたユニフォームの導入や、使用済みユニフォームの製鉄所でのリサイクル燃料化など、3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進してきた。今回の取り組みは、これをさらに一歩進め、より環境負荷の低い水平リサイクルを目指すものだ。

ミズノは、ワークウェア事業において長年培ってきた高機能な製品設計技術に加え、2008年から広域認定事業者として使用済みユニフォームの回収とマテリアルリサイクルを手がけてきた実績を持つ。今後は、今回の協業を通じてケミカルリサイクルによる再資源化を本格化させ、循環型社会の構築への貢献を深める。

帝人フロンティアは、1995年からリサイクルポリエステル繊維「ECOPET」を展開するなど、ケミカルリサイクル技術のパイオニアとして知られる。同社の技術は、品質を損なうことなく繰り返しリサイクルできるため、ユニフォームのような耐久性や機能性が求められる製品での完全循環型リサイクルを実現する上で不可欠な要素だ。

今回のトライアル運用は、この資源循環スキームの実効性や、再生されたユニフォームの品質、安全性を物流の現場で検証する実証フェーズと位置づけられている。佐川急便は着用試験を通じて着心地や機能性に関するフィードバックを行い、3社で連携してシステムの改善やリサイクル素材を用いた高機能素材の開発を進めていく。

【プレスリリース】物流業界では先進的な、完全循環型リサイクルによるユニフォームのトライアル運用を開始
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