ユニ・チャーム株式会社と廃棄物処理大手の株式会社富士クリーンは12月9日、使用済み紙おむつのリサイクルにおいて、水使用量を従来比で約50分の1に削減する新技術「ドライ洗浄法」の開発に着手したと発表した。

両社は香川県綾川町にある富士クリーンの事業所内に実証施設を設け、2026年から技術開発を開始する。2029年には本格的な再資源化プラントを稼働させ、近隣自治体と連携した回収・リサイクル事業の開始を目指す。

水資源の制約を克服する「ドライ洗浄」

今回開発に着手する「ドライ洗浄法」は、衣類のドライクリーニング技術を応用したものだ。

従来、紙おむつのリサイクルでは、排泄物や汚れを落とすために大量の水を使用する「水流洗浄」が一般的だった。ユニ・チャームが鹿児島県志布志市などで実用化している既存のプロセス(オゾン処理と水洗浄の組み合わせ)も、高品質なパルプを回収できる一方で、洗浄水の確保や排水処理設備の設置が必須となり、導入できる地域が限られるという課題があった。

新技術では、繰り返し使用可能な溶剤を用いて洗浄、殺菌、漂白を行う。これにより、水の使用量を約98%削減(50分の1)することが可能になるという。水資源が乏しい地域や、大規模な排水処理インフラの整備が難しい地域でもリサイクルプラントの設置が容易になるため、国内外での水平リサイクル普及に向けた転換点となる可能性がある。

自治体と廃棄物処理業界へのインパクト

この技術開発は、特に自治体の廃棄物行政と民間の廃棄物処理業界に新たな選択肢をもたらす。

環境省によると一般廃棄物に占める紙おむつの割合は重量ベースで約4.3〜4.8%(使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン)と言われるが、水分を多く含むため焼却炉の燃焼効率を低下させる要因となっている。リサイクルが進めば、自治体にとっては焼却コストの削減とCO2排出量の削減につながる。環境省では、「第五次循環型社会推進基本計画」及び「循環経済への移行加速化パッケージ」において、2030 年までに使用済み紙おむつの再生利用の実施・検討を行った自治体の総数を150とすることを目指す。同社では、紙パンツ(紙おむつ)のリサイクルに取り組む自治体数を20自治体へ拡大することを目標に掲げており、その実現には、より効率的な再資源化技術の確立が求められていた。

「ドライ洗浄法」が確立されれば、立地制約が大幅に緩和される。富士クリーンが持つ産業廃棄物処理のノウハウと組み合わせることで、効率的な回収・処理スキームが構築されれば、リサイクルの強力な基盤となる。

今後の展開スケジュール

今後、新技術の開発と実装は以下のスケジュールで進められる予定となっている。

  • 2026年: 富士クリーン敷地内の実験棟にて技術開発を開始
  • 2028年: 本格的な再資源化プラントの建設
  • 2029年: プラント稼働開始、近隣自治体との連携による回収開始

ユニ・チャームは、2035年までに紙おむつリサイクルに取り組む自治体を20カ所まで拡大する目標を掲げている。今回の技術開発は、日本国内での実装にとどまらず、水不足が深刻な海外市場への展開も見据えた戦略的な動きだ。

【プレスリリース】ユニ・チャーム、使用済み紙パンツ(紙おむつ)リサイクル 新技術「ドライ洗浄法」の開発に着手 ~香川県(株式会社富士クリーン)と連携し、水使用量を約50分の1※1に削減~