2025年11月26日、パシフィコ横浜ノースで開催されたアジア・スマートシティ会議2025(Asia Smart City Conference / 以下、ASCC)において、トークセッション「GREEN×EXPO 2027で発信する循環型社会」が開催された。
「環境と共生する未来のグリーン社会」のあり方を市民と共に考え、世界に発信することを目指す2027年国際園芸博覧会(通称:GREEN×EXPO 2027)は、同年11月4日に開幕500日前という節目を迎えている。本セッションではGREEN×EXPO協会および参加予定企業の登壇者を迎え、GREEN×EXPO 2027を舞台に、循環型社会をどのように社会へ、そして世界へ発信していくのかについて議論が交わされた。
社会課題を“自分ごと”へ──学ぶとともに、ワクワクする会場に
冒頭、GREEN×EXPO協会でサステナビリティ推進部長を務める見宮美早(けんみや・みさ)氏から、GREEN×EXPO 2027の概要と現状について説明が行われた。同博覧会は、花や園芸をテーマとしながらも、プラネタリー・バウンダリーを超えつつある現代社会の状況を踏まえ、気候変動や生物多様性、資源循環といった地球規模の課題を射程に入れた取り組みとして構想されているという。
会場では、「自然の力」をテーマにしたパビリオンが設けられるほか、日本政府のエキシビションでは、和泉川という水源を活かした日本庭園とともに、屋内展示として生物多様性や気候変動などの課題解決の可能性を提示する内容が計画されている。また、現在は、2025年10月に閉幕した大阪・関西万博からの流れを受け継ぎながら、広報活動にも力を入れているとのことだ。
単に展示を見るだけで終わらせるのではなく、来場者が自身の暮らしと結びつけて考えるきっかけを生み出すことを重視している点も強調された。「学ぶとともに、ワクワクする会場にしたい」という設計思想が、GREEN×EXPO 2027全体の前提として示された。
土のなかのように「見えないものを見る力」を得る機会を目指して
本セッションで、参加企業の一社である石坂産業株式会社 代表取締役の石坂典子氏から、循環型社会を象徴する存在として取り上げたのが「土」の価値だ。
埼玉県三芳町で産業廃棄物の再資源化や環境教育活動に取り組む石坂産業の石坂氏は、「皆様にぜひ見てほしい」と語り、一枚の絵をスライドで掲げた。

「今日、改めてお伝えしたいのは『土のなかの話』です。植物の根の部分は、人間でいえば脳にあたります。その根が、土にあるさまざまな栄養分や菌糸など、エコロジカルなシステムとつながることで、美しい草花が咲くのです。私たちは、地球上の奇跡的なバランスのなかで生きています。大地の価値そのものが、私たちの未来に大きな影響を与えていくのです。このGREEN×EXPO 2027を、見えないものを見る力を一緒に考える機会にしていただきたいと思います」
石坂氏は、同社の資源循環の現場を例に挙げながら、循環の本質について語った。
「私たちは、通常であれば埋め立てられてしまうような廃棄物を都市部から運び、ミリ単位で分別しています。そこには、実は“生きている”土が多く含まれており、微生物も存在しています。そうした土を埋め立て、ないものとしてしまう。経済活動のなかで、私たちは一体何を生み出してきたのか。その問いに向き合いながら、循環型社会のなかで資源を循環させていきたいと思うのです」
循環型社会とは、単にリサイクル率を高めることではなく、「何を価値あるものとして扱うのか」という社会の前提を問い直す取り組みでもある。石坂氏はその点を強調し、GREEN×EXPO 2027は、こうした“見えない循環”を来場者が実感できる場として大きな意味を持つと語った。

EXPO会場を通じて「想い」と「資源」をつなぐ
続いて、GREEN×EXPOの会場におけるグリーン社会の発信方法や、その具体的な内容についての紹介が行われた。見宮氏は、石坂氏が挙げた「見えないもの」の一つとして、「参加する人や組織の想い」を挙げ、会場ではそれらをどのように表現し、次へとつないでいくかが重要だと述べた。
GREEN×EXPO 2027にはすでに複数の企業が参加を予定しており、会場内で展開されるビレッジエキシビションの構想も、徐々に具体化してきているという。
「グリーンの力と産業活動がつながることを伝え、その想いをつなげていく場になれば」と、見宮氏は語る。大企業に限らず、370を超える組織が花・緑出展という形で参加するほか、里山の風景や市民活動を紹介する「里山ビレッジ」、食をテーマにした「農と食のビレッジ」など、多様なコンテンツが企画されていることも紹介された。

参加企業の一社である鹿島建設株式会社 環境本部次長の野口浩氏は、鹿島建設としてGREEN×EXPO2027で出展する約60メートルの木造タワー「KAJIMA TREE」について紹介した。
会場のランドマークとなる予定の「KAJIMA TREE」には、大阪・関西万博の大屋根リングで使用された木材が再利用されている。先端技術によって木材に新たな価値が与えられ、GREEN×EXPO 2027の象徴として生まれ変わる計画だ。

「GREEN×EXPO 2027のメインテーマは『幸せを創る明日の風景』です。未来の都市づくりに向けた新たな風景のシンボルとして、KAJIMA TREEを提案しました。環境技術やまちづくりのフロントランナーとして、グリーンサーキュラー建築を具現化したいと考えています。ここでしか見られない風景を提示し、来場者に感動を与えることで、行動変容のきっかけになればと思っています」

同社は、脱炭素・資源循環・自然再興の三要素が相乗効果を発揮する「鹿島環境ビジョン2050plus」を2024年に策定し、取り組みを進めている。
野口氏はその一例として、建設現場から発生する廃プラスチックを細かく破砕・再資源化し、それを原料として現場で使用するバリケードを製造する取り組みを紹介した。この循環は、資材の有効活用にとどまらず、現場で働く人の意識にも変化をもたらしているという。
「自分たちが分別して出したものが、形を変えて現場に戻ってくる。そう分かると、分別の精度も自然と上がります」と述べ、循環は、仕組みと同時に“納得感”が大切であると説いた。
これを受け、石坂氏は、石坂産業がかつて廃棄物の不法投棄が行われていた里山を、約20年かけて生物多様性のある里山へと再生してきた事例を紹介した。約18万平方メートルに及ぶ同社の敷地のうち、約9割を占める里山は、体感型の環境教育フィールドとして一般にも公開されている。その取り組みは注目を集め、国内外から多くの視察者が訪れているそうだ。
「(EXPOの会場となる)瀬谷というフィールドで、市民がどのように継続的に里山と関わっていけるのかを提案できないかと考えています。里山とつながる私たちの日々の暮らしとは何なのか。人と人とをつないでいく体験ができる環境を提供できたらと思っています」
また、同社は大阪・関西万博に出展こそしていないものの、「KAJIMA TREE」の資材リユースにつながった「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」のアイデア提供を行ったという。
「GREEN×EXPO 2027が、廃棄物から生み出されたリ・マテリアル素材で会場を彩るような機会になればと思っています。資源循環の象徴として、リサイクル素材が使われたEXPO会場が、何らかの形で日本を代表する存在になればうれしいですね」

意識変容からイノベーションを起こす“みんなのEXPO”を目指して
セッションの終盤では、「来場者とどのような関わりを築いていきたいか」という問いが投げかけられた。
野口氏は、「KAJIMA TREE」について、あえてデジタル社会から距離を置き、五感を通じて風や光といった現地の環境を感じられる場にしてほしいと語った。木がどのように育ち、製品へと姿を変えていくのかを、市内の小学生にも体験してもらえるような取り組みも視野に入れているという。
石坂氏は、「日本には多くの里山がありますが、いま改めて“里山の価値とは何か”が問い直されているように感じます」と述べた。鹿島建設と同様に、子どもたちにとっての体験の場となることを重視し、持続可能な社会づくりに必要な視点やアイデアを応援するプレゼンテーション大会「Green Blue Education Forum」を、環境省と共催で開催すると紹介。セッション会場で聴講していた学生にも参加を呼びかけた。
見宮氏は、「社会を変えるイノベーションは、必ずしも最新技術から生まれるものではなく、人々の意識の変容から始まる」と指摘した。課題解決に向け、グリーンについて学び、楽しむ機会としてのGREEN×EXPO 2027を会期に向けて盛り上げていくとともに、EXPOは「みんなでつくるもの」であるとして、市民の参画を促した。
登壇者たちは、循環を「体験」として社会に根づかせていく重要性を改めて共有し、セッションを締めくくった。何年先も人と自然が共生する、私たちの幸せのあり方を考える契機となることを願って。新しい循環を生み出す未来を体感できるGREEN×EXPO 2027の開幕に向けて、今後の期待が静かに、しかし確かに高まっている。
【参照サイト】アジア・スマートシティ会議2025 | ASCC
【参照サイト】GREEN EXPO 2027
【参照サイト】万博サーキュラーマーケット ミャク市!





