サーキュラーエコノミーは、成長を再定義し、世界経済にレジリエンスをもたらすものとして、コロナ禍の世界でこれまで以上に必要とされている。そして、世界経済がサーキュラーエコノミーに移行していくためには、政策と金融が大きな鍵を握る。

本記事では、フィンランド、ヘルシンキにて開催されたウェブフォーラム「WCEFOnline(World Circular Economy Forum Online)」(世界循環経済フォーラムオンライン)のプログラムの一つ「Enabling the circular economy: the role of policy and finance(サーキュラーエコノミー実現における政策と金融の役割)」のレポートを通して、世界の金融セクターと政策立案者らが投資機会を捉え、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させるさせるために私たちが果たす役割と必要となるアクションを考える。

まず、このセッションはイギリスのエレン・マッカーサー財団創業者、デイム・エレン・マッカーサー氏の基調講演から始まった。

金融セクターはサーキュラーエコノミーへのキードライバー

エレン・マッカーサー財団創業者、デイム・エレン・マッカーサー氏(Image from WCEFonline, hosted by Sitra)

「サーキュラーエコノミーは、世界が直面する数々の課題を根本から解決する仕組みであり、実現のための目標です。サーキュラーエコノミーに移行するためには世界のマテリアルフローを物理的に変えていく必要があります。そして、関わるすべての人が『成功』という目標に合意しなければ成し遂げられるものではありません。

新型コロナ危機という未曾有の出来事のなかで、サーキュラーエコノミーへの取り組みを進めていた人たちにはネガティブな影響が最小限で済み、逆に大きく追い風になっています。

サプライチェーンは『成長』から切り離される必要があるのです。

サーキュラーイノベーションの担い手となるサプライチェーンの設計に関わる人々は、これまでつくってきた製品を新たな再製造方法でつくる仕組みの確立を急いでいます。これは、成長と脆弱なサプライチェーンとを切り離すことを意味します。この危機下では、長いサプライチェーンは脆弱性を露呈することとなり、サプライチェーンを短い循環型のものに書き換えています。

コロナショックからの復興のため、各国が巨額の経済復興予算を組んでいることは非常に追い風です。特にどの分野で支援が必要なのかを議論する上で、政府と企業間の対話が生まれています。この対話が、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させるでしょう。

サーキュラーエコノミーへの移行は世界的危機の多くを根本から解決するのに不可欠であり、金融セクターは、私たちがどのように製品を使ったりサービスにアクセスしたりし、どのようにビジネスが機能するか、どのように経済が動くかについての鍵を握っています」

続いて会場では、2020年9月にエレン・マッカーサー財団が公表したレポート「Financing the circular economy」を紹介。(Circular Economy Hubによる解説記事はこちら

このレポートによると、過去18ヵ月の間に、サーキュラーエコノミーに関連する債券・持分金融商品は急増している。さらに、2020年中頃までには、ブラックロック、クレディ・スイス、ゴールドマン・サックスなどの融資機関の提供する10ものサーキュラーエコノミー特化型、もしくは部分的に取り扱うパブリック・エクイティ・ファンドが現れた。これは、2017年には1件もなかったものだ。

近年のサーキュラーエコノミーに関わる金融セクターの急成長を継続的なものとし、サーキュラーエコノミーを拡大するためには、サーキュラービジネスを金融セクター全体で後押ししていかなければならない。すでに完璧なサーキュラーエコノミービジネスに投資するだけでなく、すべての分野の企業がサーキュラーエコノミーに移行していけるよう、奨励・サポートしていく必要がある。

サーキュラーエコノミーがもたらすイノベーション

続いて、欧州投資銀行(EIB)イノベーションファイナンスを統括するShiva Dustdar氏は、サーキュラーエコノミーのもたらすイノベーションについて次のように述べた。

欧州投資銀行 イノベーションファイナンス統括責任者 Shiva Dustdar氏(Image from WCEFonline, hosted by Sitra)

「EIBにとって、サーキュラーエコノミーというキーワードが大きなものになったのは2014年からのことです。それまで、もちろんエネルギー効率や廃棄物管理といった分野は注目されていましたが、イノベーションという観点も持ち合わせるサーキュラーエコノミーという概念との出合いは大きなマインドシフトをもたらしました。

サーキュラーエコノミーとは、技術的イノベーション、プロセス・イノベーション、ビジネスモデル・イノベーションを伴うシステムデザインそのものなのです。

EIBは5つのミッションを掲げていますが、そのうちの4つはサーキュラーエコノミーについてのものです。サーキュラーエコノミーはクリーンな都市や海、気候適応、食と土壌などすべてを仕組みから変えていくからです。

公共部門がサーキュラーエコノミーのビジネスに対するリスクを共有することで、今後民間部門からの投資を加速させることができるでしょう」

新型コロナ危機は、サーキュラーエコノミーを現実のものにするための大きな転機になる

続くパネルディスカッションでは、チリ環境大臣のCarolina Schmidt氏が、チリ国内のサーキュラーエコノミーへの取り組みと世界がサーキュラーエコノミー実現のため見据えるべき点について話した。

チリ環境大臣 Carolina Schmidt氏(Image from WCEFonline, hosted by Sitra)

「チリでは、ごみのない、もっとインクルーシブで持続可能な開発を実現したいという目標があります。それにはサーキュラーエコノミーが鍵となります。このため、産官学含むすべてのセクターからの参加を促し、長期的な活動の指針とするためのサーキュラーエコノミー実現のためのロードマップを策定しています。

私たちがどのように生産し、消費する方法を根本から変えていくことにつながるサーキュラーエコノミーという目標を、誰の目に見ても明らかな目標として設定しました。2040年までにサーキュラーエコノミー完成に向け大きく前進するための目標で、効率偏重型の経済を目指すための目標だけではありません。そこに暮らす人々にとって『良い』ものでなければならないためです。2040年に向けた目標を達成することができたなら、18万人分もの雇用が創出され、現在の14%のリサイクル率から65%に向上し、循環することとなります。

新型コロナのパンデミックは、この目標に対して大きな壁となっています。リサイクルのバリューチェーンは分断し、多くの雇用、特にインフォーマルセクターにおける雇用が失われています。そのため、バリューチェーンを迅速に設計し直し、新たな雇用を確保しなければなりません。さらに、衛生面を優先するためとはいえ、医療用手袋やマスク、その他の使い捨てプラスチックが大量のプラスチックごみとなって溢れました。数か月前には食事の宅配用容器を生分解可能なプラスチック素材に変えることを促す政策を打ち出しました。新型コロナの大流行は、人々の暮らしに大きく影響を及ぼしていますが、同時に、より少ない炭素資源で成り立つ仕組み、サーキュラーエコノミーへの移行を加速させる機会となっています。復興予算はサステナブルなプロジェクトやサーキュラーエコノミーのプロジェクトのプロトタイピングにも投入されています。

少ない資源から価値を生み出すことができるサーキュラーエコノミーの仕組みは、経済的にも住民たちにも恩恵をもたらすものです。この事実を民間部門に広く周知することで、2025年までにはチリ国内のすべてのプラスチック包装容器は再利用・リサイクル・堆肥化可能なものにすることに合意するに至りました。こうしてプラスチック容器の製造と利用についての法律を成立させることができました。民間部門がサーキュラーエコノミーへの移行に向けてリーダーシップを発揮することは、非常に大きな推進力をもたらします。

現在私たちが立ち向かっているのは新型コロナの大流行という環境危機ですが、今後起こりうる、より大きな環境危機に備える必要があります。特にプラスチック分野がそうですが、それには、世界じゅうの国々が共通の目標に合意することが必要不可欠です。環境汚染や環境破壊には国境がありません」

仕組みの上流から変えていくことにインセンティブをつけた政策が求められている

インターIKEAグループ・サステナビリティを統括するLena Pripp-Kovac氏は、多国籍企業・民間企業として政策立案者に期待することを次のように話した。

インターIKEAグループ サステナビリティ統括  Lena Pripp-Kovac氏(Image from WCEFonline, hosted by Sitra)

IKEAは現在、完全なサーキュラービジネスに変革しようとしています。プロダクトデザイン、サプライチェーン、物流、顧客にどのように接するのか、それらすべてを循環するものに変える計画を進めています。サーキュラービジネスにコミットすることで、自分たちのビジネスの本質を見つめ、全く異なる未来を見据えることができます。

2030年までに完全に循環するビジネスに移行する計画ですが、一社だけで達成することはできません。サーキュラーではない経済のなかで、サーキュラービジネスを完結することはできないからです。政策と政策立案者は、社会に対してその方向性を示すことができます。サーキュラー化するビジネスを加速させ、スケールさせ、サーキュラーエコノミーへの移行を現実のものにするといった重要な役割を担っています。

私たちは、政策そのものの捉え方を変えていく必要があります。廃棄物管理という(リニア型の仕組みの)下流で起きていることを政策でなんとかする、という考え方を根本から変え、農業・建築・雇用などのあり方を根本から問い直す必要があります。仕組みの上流から変えていくことにインセンティブをつけ、スケールするよう導くことが政策立案者たちに求められています。

多国籍企業として、サーキュラーエコノミーを達成するためには、世界じゅうでサーキュラーエコノミーについての共通の認識を持ち、共通の目標を見据えることが重要であると考えています。同時に、ローカルレベルでインフラなどを素早く変えていくためには、政策によるインセンティブが有効だと言えるでしょう」

政策間の矛盾を是正していくことが必要不可欠

経済協力開発機構・環境経済統合課統括のShardul Agrawala氏は、政策立案者たちは政策間の矛盾を是正する必要性があることを鋭く指摘した。

経済協力開発機構・環境経済統合課統括 Shardul Agrawala氏

世界レベルの政策、ローカルレベルの政策、そして同じくらいに国境を橋渡しするための政策も重要です。そして、その上で最も重要となるのが『政策間の矛盾是正』です。

もちろん新しい政策が重要な場面もあるでしょう。しかし、すでに発効している政策それぞれに生じている矛盾を是正していくことの重要性はもっと広く理解されるべきです。

1つ目の大きな矛盾は、一次資源と二次資源の利用における優先順位が政策によって異なってしまっている、という点です。サーキュラーエコノミーを実現するためには、二次資源の利用をより経済的に魅力的にしていく必要があり、同時に一次資源の採掘と利用のために当てられている助成金・補助金を削減することが求められます。

例を挙げると、金属の採掘に対して多くの国が何千億円もの資金を提供していますが、これは、多くの場合国の掲げる環境目標と矛盾しています。この政策における矛盾を是正することがより大きな推進力を持つことは誰の目に見ても明らかでしょう。

2つ目の大きな矛盾は、製造における税制にあります。例えば、EUでは(一次)資源の利用と汚染に対する税率は1%以下で、環境全般に関わるものでも6%以下です。逆に、労働に対する税率は51%にも上ります。

サーキュラーエコノミーへと移行すると、経済活動の多くは、(製品を使い続け、資源を再生するために)より多くの労働を要すると同時に、少ない(一次)資源を要するものとなります。

つまり、目標とするところと真逆の税制となっている現状について根幹から変える必要性を認識し、行動に移していく必要があります。

税制が存在する理由や考慮すべき要素は多岐に渡ることは事実です。しかし、目指す先にあるものと、その手段が矛盾していること自体が、その効果を大きく削いでしまうことにつながります。政策やロードマップ、戦略を超えて、 求める変化を起こすためのインセンティブの方向性を揃え、行動していく必要があるのです。

また、これまで私たちはサーキュラーエコノミーを国家や地域のこととして捉え、取り組んできましたが、経済間のこととしてはあまり認識されてこなかった歴史があります。しかし、ループを閉じるためには国と国との間での取り組みが欠かせません。

資源が国境をまたぐ時、環境水準に見合った方法でやり取りが行われることが重要です。現在の課題は、何が廃棄物で、何が資源か、世界的に認識が統一されていないことにあります。中古品は扱い方や捉え方によっては廃棄物であり、同時にまだ使える製品でも二次資源でもあります。これらに共通認識と水準を設け、必要な規制を敷いていくことは、再製造を拡大していくにあたり大切なパズルのピースとなります。

また、最後に言及したい点があります。現在、経済復興予算がサーキュラーエコノミーと脱炭素のために使われるべきだ、という点については多くの人が同意し、注目してきました。確かにこれは重要ですが、お金そのものだけが重要なのではありません。政策設計も同じくらい重要なのです。災害時によく起こることとして、資金の投入は迅速に行われるものの、政策の設計について吟味し再設計を行うことは後回しにされる、ということが懸念点として挙げられます。

環境にプラスになる活動に対して投資がなされるよう、そしてリニア型の活動に対して投資がなされないよう、私たちは政策を設計することで促していかなければならないのです。

編集後記

サーキュラーエコノミーへの移行には、金融と政策による推進力が必要不可欠だ。サーキュラービジネスに対してどのように有用な投資を呼び込み、政策によって正しい方向へと導いていくこと、そして正しくない方向へは後戻りしないような枠組みをつくることが、サーキュラーエコノミーへの迅速な移行を可能にする。サーキュラーエコノミー実現に向けて多くの人、モノ、お金が動き出した今こそ、環境と社会へのプラスの影響を最大化し、最も有効で迅速に移行するための環境整備が求められている。

「世界循環経済フォーラム2020」これまでのレポート

【世界循環経済フォーラムレポート#1】 世界各国の企業トップから学ぶ、コロナ禍における新しいビジネスの形
【世界循環経済フォーラムレポート#2】北米のサーキュラーエコノミー。地域ごとの文脈でサーキュラーエコノミーを再考し進めることが重要

【参照サイト】The Finnish Innovation Fund Sitra
【参照サイト】The World Circular Economy Forum Online (WCEFonline)