企業と政府によるコロナ危機からの復興計画と長期的なサーキュラーエコノミー計画実現のために重要な鍵となるのは、どのようなスキルだろうかーーー。

※この記事は、オランダのサーキュラーエコノミー推進機関 Circle Economyが12月7日に同社ブログに掲載した記事を、執筆者のEsther Goodwin Brown氏、Lena Bäunker氏、Laxmi Adrianna Haigh氏による許諾を得て、筆者が翻訳しています。

世界じゅうの企業や政府がポストコロナからのより良い復興の道を模索する中、人材とスキルという2点から長期的な変化を起こすために動かなければ、これらの取り組みは短期的な活動で終わってしまうリスクをCircle Economyは危惧する。グリーンリカバリー計画は、それを実現するだけのスキルが不足していれば何の意味があるだろうか?より良い復興の実現の術と失業緩和策として進められるサーキュラーエコノミーへの移行だが、これまでのリニアエコノミーで重要視されてきたものとは異なる組み合わせのスキルが求められる。サーキュラーエコノミーへの移行を現実のものとするためには、企業・政府ともに長期を見据えた思考を凝らし、将来必要となるスキルを培うことを復興策の一部としなければならない。

小売業界で拡大するスキル・ギャップ

消費行動の変容と、ソーシャルディスタンシングの徹底やロックダウンなどの政府による感染防止措置によって引き起こされる新たな課題に対して、小売業者は対応を余儀なくされている。1.5メートル(隔離)社会に適応するために店舗のデジタル化を加速し、デジタル端末やタッチレス決済、セルフレジなどを使った決済が増加。

デジタル化が加速する一方で、小売業界では人材の現状のスキルと、新しい仕組みに移行するために新たに必要となるスキルの間でスキル・ギャップが顕在化している。特に、多くの工程が自動化される中で、対人スキルやテクノロジースキルを持つ人材が著しく不足している。

収益の安定化を図るため、多くの小売業者は、必要とされる新たなスキルをより良く理解するための研究・分析のために投資を始めた。しかし、課題は、これらの研究・分析によって解明されつつあるのは、今日の世界規模の環境破壊や社会の混乱につながった、従来のリニア型の成長を促すためのスキルだという点だ。小売や他の産業が、もしも本当により良い復興を目指すのであれば、短期的利益を確保するためのスキルではなく、長期的に持続可能な未来を実現するためのスキルを見据えるべきだ。

マインドセットのシフトのために必要なのは、サービス経済において労働者のモチベーションを高めるためにはどのようなマネジメントやリーダーシップスキルが必要となるのか、すべての人に資源の本質的な価値を理解してもらうにはどのようにしたらいいのかを問うことだ。Circle Economyがノルウェーで行った研究によると、これらに必要となるスキルは、小売業界においてすでに接客業の中で発揮されており、これをサービスモデルに適用することができるはずだという。

最重要スキルはデジタル・応用可能スキル

新型コロナウイルスのパンデミックは労働市場に亀裂をもたらし、異なる方法でビジネスを行う必要性に迫られている。新たな方法でビジネスを営むためには、新たなスキルがいる。小売業界でも、それ以外の業界でも、より良い復興を遂げ、サーキュラーエコノミーへの計画を遂行するために、デジタル・応用可能スキルはビジネスモデルを越えて必要となる。

まず第一に、デジタルスキルの必要性はテクノロジーの進化と広がる自動化とともに拡大する。Circle EconomyがZero Waste Scotlandとともに発表した最新の調査結果によると、スコットランドがサーキュラーエコノミーの目標を達成するためには職場のデジタル化が急務だという。特に建築業界において、デジタルスキルとソリューションはコミュニケーションとコラボレーション、資源効率を向上するために必要不可欠だ。

第二に、企業や国は応用可能スキルに投資する必要がある。これらは産業やビジネスモデルが進化しても適応するためのスキルだ。例えば、カスタマーサービス、クリティカルシンキング、課題解決やリスク査定スキルなどがこれにあたる。サーキュラーエコノミーの業界・職務横断的な性質から、移行するためにはすべての国・企業にとって応用可能スキルは必須条件となる。労働市場において応用可能スキルを持つ人材が増え、様々な業務やバリューチェーンにまたがって横展開されれば、レジリエンスを高めることにもつながる。もしも応用可能スキルを持った人材開発への支援が不足すれば、労働市場の適応スピードが遅れ、スケールを伴ったサーキュラーエコノミーへの移行に歯止めをかけてしまうことになる。

スキル再習得のための機会を提供すべきは今

第三に、10代から30代を少し超えた年代に対して、今後産業が必要とするスキル需要に応える人材育成を行っていくことが求められる。これにより、人員配置・スキル習得に下支えされたサーキュラーエコノミーへのスムーズな移行のための機会を最大化できるはずだ。

エネルギー産業だけをみても、北海における石油・天然ガスの施設のうち、少なくとも60%は2030年までに閉鎖されることが決まっている。結果、インフラからは100万トン近くの資源が利用できることになる。これにより、閉鎖・エネルギーの再利用・代替エネルギーなどの様々なスキルの再配置の選択肢を把握するための大きな可能性が拓けることとなる。ヨーロッパで閉鎖・廃炉を専門に行うCessCon Decomは、石油・天然ガス産業から人材を採用し、再利用・リサイクルの分野で活躍できるよう支援を行う。先を見通した計画と適格な支援によって、多くの産業でリニア型の活躍をしている人材・スキルの多くは、サーキュラーエコノミーの活動を担うものに生まれ変わることを可能にさせる。

さらには、現在活躍している人材はすでに業務の工程・資源・自身のスキルについて深く理解しており、サーキュラーエコノミー移行のためにこれらを再定義し、機会を見出すのに最適な人々であることは疑いようがない。産業に特化した再教育・スキルアップ・スキルと職のマッチングプログラムを行っていくためには、企業・政府ともに現在これらの業界で働く人々を巻き込み、ヒアリングをしながらサーキュラーエコノミーへと進めていく必要がある。

人材を中心に思考すれば、短期的視野から脱却し未来のスキルが見える

多くの復興計画や長期的サステナビリティ計画は、実現を支えるスキルについての視野が欠けている。欧州委員会が2020年に公表した「Circular Economy Action Plan(循環型経済行動計画)」を例にとっても、スキルの応用性についての視野が不十分である。モジュラー・ラーニングなど、労働市場のレジリエンスを担保するためのいくつかの重要な要素について言及しているものの、サーキュラーエコノミーへの移行を実現するための必要要素としての視点が欠けているのだ。Circle Economyの政策解説のなかで「この循環型経済行動計画においては、これらの要素は重要視されず、よって機会損失につながる恐れがある」と述べている。欧州新スキル・アジェンダに紐づくこれらの共同声明やネットワークは、レジリエンスとサーキュラーエコノミー実現の両面から、業界を超えた応用可能スキル育成の必要性を強く認識する必要がある。

政府や企業が想定するグリーンエコノミー・サーキュラーエコノミーへの移行は、人材とスキルにかかっている。しかし、サーキュラーエコノミー実現のために必要なデジタルスキルと応用可能スキルは一夜にして労働市場に現れるものではない。復興とサーキュラーエコノミーを実現し、持続可能性を現実のものにし、すべての人材・企業・政府にとって安全な移行を実現するためには、長期的な視野を持ち、スキルと研修を復興の重要な要素として捉えることが必要だ。

This translation has been prepared by an unofficial third-party translator outside of Circle Economy. While considerable efforts have been made to provide an accurate translation, details may be inconsistent with the original text.

【本文】https://www.circle-economy.com/blogs/to-build-back-better-we-need-foresight-and-a-focus-on-future-skills
【参考記事】Closing the skills gap in retail with people analytics
【参考】The Circularity Gap Report Noway
【参考】What has the covid-19 pandemic unearthed about the labour market and the circular economy?
【参考】THE FUTURE OF WORK: BASELINE EMPLOYMENT ANALYSIS AND SKILLS PATHWAYS FOR THE CIRCULAR ECONOMY IN SCOTLAND
【参照レポート】Impacts of circular economy policies on the labour market
【参照レポート】OIL AND GAS DECOMMISSIONING SECTOR PLAN
【参考】CessCon Decom
【関連記事】欧州委員会が新たな「Circular Economy Action Plan(循環型経済行動計画)」を公表
【参考記事】Resilience: The missing link in the new Circular Economy Action Plan