自然や生物多様性の損失に歯止めをかけ、環境にとってポジティブ(プラスの状態)を目指す「ネイチャーポジティブ(自然再興)」。世界的に、建築・土木・不動産関連の企業からも重要課題として認識され始めている。

企業として、ネイチャーポジティブに取り組む方法は多様だ。自社の事業だけでなく、サプライチェーン全体を通した取り組みへの期待も高まる。建築であれば敷地選定から、計画・建設・建材製造・材料調達、建物の運用、解体まで、さまざまな場面で自然環境に依存し、自然に影響を与えている。どのように優先順位をつけ、取り組むべきかーー。

そんな悩みに応えるべく、グローバル企業の連合「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」は2023年下旬、ネイチャーポジティブに取り組む企業向けの手引書「ネイチャーポジティブな建築環境(Built Environment)への指針」を公表した。本記事では指針の概要を紹介する。

この手引書は「建築」「都市インフラ」「交通インフラ」「港湾施設」および「建築・土木にかかわる製造・加工業」に関連する企業を対象とする。なおWBCSDは、このほか農業・林業・エネルギー業界に向けた業界別手引書を、全業界向けのものと併せて公開している。

WBCSDが勧める行動は3ステップに大別される。①評価する・②行動する・③開示するだ。順を追って解説する。

ステップ1:評価するー事業の自然に対する「重要性」を特定

具体的な目標と行動を定める前に、事業と自然の関わりを明らかにする。ステップ1では、事業内容を整理し、企業活動の自然への影響と依存を特定したうえで、付随するリスクと機会に基づき重要性を評価する。

1-1. 自社の事業を特定する

最初のステップとして自社の事業領域を洗い出し、バリューチェーンにおける立ち位置を明確にする。WBCSDは、建築・土木に関わるバリューチェーンを4ステージに分けている。1) 材料採取・製造、2) 設計・施工、3) 運営・管理、4) 解体・廃棄。複数のステージに事業領域がわたる企業も少なくないだろう。

図:手引書が対象とする建築・土木の分野と、バリューチェーンの4ステージ(「ROADMAP TO NATURE POSITIVE Foundations for the built environment system」(WBCSD、2023))

1-2. 影響と依存を評価する

次に、自社の事業とバリューチェーンによる自然への「影響」と「依存」を、科学的根拠やデータに基づき、評価する。

自然への「影響」とは、たとえば以下だ。

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