欧州委は2020年3月11日、EU全域でサーキュラーエコノミーを加速させるための新計画「New Circular Economy Action Plan(新循環型経済行動計画)」を公表した。

欧州委員会は2015年に循環型経済行動計画を公表し、54の具体的行動を策定、持続可能な経済の構築に一歩踏み込んだ。これらは全て実施中または実施済みとなっており、2012年から2018年には400万人のサーキュラーエコノミーに関する雇用を創出した。

今回の新計画は従来のサーキュラーエコノミー政策をさらに推進する目的で策定されたものだ。今回の発表に先立ち、2019年12月11日にはEUの新たな経済・環境・社会政策である「欧州グリーンディール」が発表されており、同行動計画は欧州グリーンディールの重要な柱に位置付けられる。

行動計画のポイントは次の通りだ。

持続可能な製品の立法イニシアチブ(Sustainable Product Legislative Initiative)

欧州委は、持続可能な製品やサービスを標準化させ、製品の設計段階から廃棄が出ないようにすることを求めたい考えだ。製品の環境負荷の最大80%は設計段階で決定づけられる。長期間の使用・再利用・修理・リサイクルが容易な設計や短期間での劣化防止などの義務付け、非販売製品の廃棄を禁止する法案を提出する予定としている。2005年に発効したエコデザイン指令では対象をエネルギー関連製品に限っていたが、これを他製品に拡大・強化する形で対応する。

消費者の権利の強化

消費者に対して「修理する権利(Right to Repair (RtR))」を認め、修理や部品、耐久性に関する情報へのアクセスを確保することで、製品を長期間使えるようにする。

重点分野(電子機器とICT・バッテリーと車・包装・プラスチック・テキスタイル・建築・食)の取り組みの加速

資源消費の度合いとサーキュラーエコノミーへの転換余地が大きい上記7分野の取り組みを加速させる。それぞれ詳しく見ていこう。

電子機器とICT

「循環電子機器イニシアティブ(Circular Electronics Initiative )」を提唱。耐久性の向上、アップグレード期間の長期化・修理・メンテナンス・再利用・リサイクル可能にすることで製品の寿命を延ばす。より具体的な施策として、スマートフォンなどの充電機器の共通化を義務付けることでケーブルなどの廃棄削減を図ることが挙げられている。また、スマートフォンやタブレットの回収を義務付け、有害物質の製品への利用を制限することも検討している。

バッテリーと車

バッテリーや車のリサイクル材(リサイクルされた原材料)の利用や回収率・リサイクル率・原材料の回復率の向上を促す。また、非充電式電池の段階的な廃止を目指す。

包装

すべての商品の包装において、再利用かリサイクルができるようにする。過剰な包装や包装に伴う廃棄の抑制、包装に使う原材料の数の抑制を求める。また、ペットボトル削減のため、公共の場における飲用可能な給水所を設置する指令である「飲料水指令(Drinking Water Directive)」の動向を監視・支援する。

プラスチック

2018年1月に「循環型経済における欧州プラスチック戦略(EU Strategy for Plastics in the Circular Economy)」が採択され、すでに実行段階にあるが、今後20年間でプラスチック消費が倍増すると予想されているため、さらなる方策が必要だとしている。リサイクル材の使用義務化や廃棄削減に向けた強制的な措置を提案する予定である。また、マイクロプラスチックの利用制限や標準化、認証化などにも取り組む。

繊維

繊維産業は、全産業のうち4番目に多く原材料を使う産業であり、5番目に多く温室効果ガスを排出する産業である。ところが、リサイクル率はわずか1%にとどまっているのが現状だ。欧州委は、「欧州繊維戦略 (EU Strategy for Textiles)」を策定し、再利用の拡大を含めた持続可能かつ循環型市場を拡大させたい考えだ。同時に、EU域内において、2025年までに高度なレベルで繊維廃棄物を分別回収できる仕組みを作る。

建築

「持続可能な構築環境戦略(Strategy for a Sustainable Built Environment)」を策定。ある一定のリサイクル建材の利用の義務付け、建造物のデジタル台帳の開発、土壌被覆の抑制策などを実施し、建築物のライフサイクルの循環を図る。

欧州グリーンディールで公表した「農場から食卓(From Farm to Fork)戦略(2020年春に提案予定。食のサプライチェーン全体において気候変動対策を加速させる戦略)」に従い、食品廃棄物削減目標を策定する予定。その他、食品産業における再利用可能な包装や食器・カトラリーの法制化に向けた調査の開始、農業・工業における水資源の再利用化などを主導する。

廃棄物の削減

充電機器・包装・車・電子機器の有害物質に関する法律を改正し、廃棄物削減に取り組む。なお、すでに要求事項として採択されている拡大生産者責任(生産者が廃棄も含めた全てのライフサイクルに責任を持つ考え方でEPR(Extended Producer Responsibility)と呼ばれる)については、インセンティブの導入やリサイクル情報を共有するシステムを通じて、実行を確実なものとする。さらに、リサイクル材の使用を義務付けるなど高品質な二次原材料の市場創出に取り組む。また、EU域外から第三国へ廃棄物が輸出されないように規制を導入するとしている。

同行動計画では、国際社会におけるサーキュラーエコノミーへの転換を支援すると明確に謳っている。具体的には西バルカン諸国やアフリカのサポートを図ると表明。欧州型サーキュラーエコノミーを世界のスタンダードにしようとする意図を明確に示した形だ。

これを受けて欧州委は、法律や指令の整備に取り掛かり、欧州議会とEU加盟国に提案・承認を経て実行段階に移る。また、同行動計画は各国の法律や規制を制定する上での上位文書となるため、欧州におけるサーキュラーエコノミーの転換が加速することは必至だ。

文書内には「規制」「義務付け」「指令の強化」という言葉が並ぶ。しかし、ティメルマンス欧州委上級副委員長が、「2050年にカーボンニュートラルを実現させ、自然環境を守り、競争力を高めるために完全なサーキュラーエコノミーへの転換が要求されている」と述べた通り、行動計画の目的はサステナブルな社会を実現させるとともに、環境負荷と経済成長のデカップリング(分離)を図ることであり、そのための支援強化策も取り揃えている。

実際にサーキュラーエコノミーへの転換を図ることで、2030年までにEUのGDPを0.5%増加させ、70万人の雇用の創出につながるという調査もある。今後、サーキュラー型イノベーションの創出の加速が期待される。Circular Economy Hubでも引き続き欧州の動向を注視していく。

【参考】Circular Economy Action Plan
【参考レポート】Impacts of circular economy policies on the labour market