オランダのサーキュラーエコノミー推進団体 Circle Economyと世界経済フォーラムの官民連携プラットフォーム PACE(循環経済加速化プラットフォーム)は、同団体に加盟するグローバル耐久財企業各社におけるサーキュラーエコノミーの実践について、デザイン、調達、販売・マーケティングの視点から分析したレポート「CIRCULAR INSIGHTS on Design, Procurement and Sales & Marketing By the Capital Equipment Coalition」を公表した。サーキュラーエコノミーで今もっとも論じられているこれらの3つのテーマに焦点を当てながら、企業がマインドを変えるとともに、ビジネスモデルをサーキュラーエコノミーの原則に合わせる考え方と事例を紹介している。

耐久財企業がサーキュラーエコノミーに取り組むべき理由

2018年1月、スイス・世界経済フォーラムの際にフィリップスCEO フランス・ファン・ホーテンの呼びかけに応じて、耐久財大手9社によるサーキュラーエコノミー推進組織 Capital Equipment Coalition (CEC、耐久財連合)が発足。本レポートには、CECを構成する9社のサーキュラーエコノミー推進の現状についても掲載されている。

耐久財はデータサーバーから医療用スキャナー・発電所・船舶に至るまで実に多様なハードウェアで、私たちの様々な社会的ニーズを満たす領域を担っている。一方で、こうした耐久財は年間74億トンもの天然資源を使用している。このため、耐久財のストックを最大限活用するとともに、サーキュラーエコノミーの戦略に沿って環境負荷を最小化し、資源の希少性を認識し、市場でのレジリエンスを高めることで、業界のサステナビリティを推進しなければならない。

CEとデザイン

企業文化や事業の文脈に合ったデザインフレームワークを

デザインは調達よりも前の工程であり、サーキュラーエコノミーに移行するために重要となる。当たり前に聞こえるが、デザインしたものを消費者が使うという観点を忘れてはならない。CEC内でデザインについて共通テーマとなっているのは、原材料・製品がもつ環境負荷度・包装である。 

CEC内で共通のテーマがある一方で、サプライチェーンにまつわる様々な課題に対して戦略性かつ一貫性を持って対応するために、あらゆる組織が始めるべきことは、各組織のニーズに合ったデザインフレームワークを創り出し、適用することだ。このフレームワークは、各企業の文化や事業の文脈に合うものでもあるべきで、実現するには一定のカスタマイズ化を行う必要が出てくるだろう。

フレームワークが決まった後、研修やコミュニケーションを通じて、デザイン原則を厳格かつ一貫性を持って組織全体に適用できるようになるだろう。

企業事例

シスコ:サーキュラーデザイン原則を導入

同社は、サーキュラーデザインを推進するために、すべての新製品の資源利用の削減と製品の長寿命化に向けた修理とリユースと進めるサーキュラーデザイン原則を2019年に導入。2025年までにすべての新製品に同原則を適用することを目指している。

この「サーキュラーデザイン原則」は下記5つの原則を重視している。

  1. 原材料の選定
  2. 標準化とモジュール化
  3. サステナブルな容器包装
  4. エネルギー
  5. 解体・修理・再使用のためのデザイン

フィリップス:製品設計者向けにサーキュラーデザイン研修を実施

同社は、グローバルに展開する約500人の製品設計者向けに、独自開発したサーキュラーデザイン研修を2019年下期に実施した。主な目的は、サーキュラーデザインへの意識を高めて共通言語化することと、事業ユニットごとのサーキュラーデザイン基準の作成に着手するという2点だ。受講した設計者は今後、各事業のサーキュラーデザイン基準を作成、品質管理システムに適用していく。

KPN:通信機器に「サーキュラーパスポート」を添付

同社は2025年までに全事業のサーキュラーエコノミー化を目指している。その中で、TV受信機やモデム、リモコンなど、同社の代表的かつ資源利用量の多い通信機器製品に対して、サーキュラーエコノミー化への取り組み状況を可視化した「サーキュラーパスポート」を添付している。

「サーキュラーパスポート」には、以下の内容が明記されている。

  • サーキュラーデザインに関わる取り組みとともに、資源使用量の削減に向けた改善点も列挙。
  • 使用された原材料が「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)」はじめ、サーキュラーエコノミーの原則に沿ったものであるかという点や、バージン資源の使用をどの程度抑えたかという点も記載。
  • 使用終了後のリサイクル可能性を、デザイン上と実現性の双方から示す。

CEと調達

サーキュラーエコノミーを機能させるための調達とは?

サーキュラーエコノミーを実現するカギとなるのは調達だ。デザインの意図を実現し、施策を実行に移す。われわれが必要とするタイミングや場所で、われわれが望むものをどのようにして手にするかということだ。

Circular Procurement Guideというサーキュラー調達ガイドがGreen Deal Circulair Inkopenより公開されているのでご参照いただきたいが、サーキュラー調達という考え方は出始めたばかりで、まだまだ発展途上だ。耐久財における調達の役割は、現代の製造業を形づくる幅広いテーマやトレンドの文脈の中で位置付けられる必要がある。

今日のマーケットでは、規模が以前にも増して重要視されるようになっている。なぜなら、調達は資産そのものというよりも、資産によってもたらされる機能や成果と関連づけられるべきだからだ。サプライヤーとの取引の相互作用という観点よりも、ビジネス機会を共有する方向に明確に向かっている。経営におけるベストプラクティスも、部署や企業の垣根すらも超えて、全体性を持ったアプローチが目立ってきた。

成熟した調達機能の中にサーキュラーエコノミーの原則を植え付け、必要とされる思考とスキルを専門家が身につけるために今必要となるのは、イノベーションとサプライチェーンにおける協働を進めるための研修とビジョン、戦略、そしてKPIだ。これらを確認するために、内部コミュニケーションが必須となる。

企業事例

ASML:製造工程のサーキュラー化を主要サプライヤーとともに推進

ASMLはこれまで数年間にわたる取り組みで、10社以上の主要サプライヤーとともに製造工程のサーキュラー化計画を策定することに成功した。これにより、原材料調達を改善することができ、環境負荷の低減につながり、製品の信頼性を深め、シェア型のビジネスモデル構築への道筋をつくることができた。

2019年にはこれをさらに進めて、主要な製造現場における再利用に向けた新たなモジュール化に取り組んでいる。また、共に推進するサプライヤーをさらに増やしていく方針だ。

ダーメン・シップヤーズ:船舶改修プログラム

創業以来5000隻の船舶を製造してきた同社は、これまでにも修繕パッケージや維持管理の研修プログラムなどを提供してきたが、機能面で限界を迎えた船舶の価値は結局のところ低下してしまう。

そこで同社は、機能面で使用限度を迎えた船舶の改修プログラムを策定し、廃船や新造船よりも廃棄量を抑え適切にリサイクルできる機会をつくることを目指している。同プログラムによって、これまでに5隻の船舶が改修されて「第二の航海」に出ている。

エネル:サーキュラー調達戦略

同社は、以下3つのステップに沿って、サーキュラー調達戦略を実施している。

  1. 環境製品宣言(EMD)を通した製品ライフサイクルから環境KPIを設けている。
  2. 廃棄物の利用用途を検討するサプライヤーへの支援など、サーキュラーエコノミーに移行するサプライヤーに報いる体系を整備。
  3. サーキュラーエコノミーに沿った製品のライフサイクルや購買方法をサプライヤーとともに見直すプロジェクトを開始。エネルエックスが2019年に、EV充電インフラにおける部品の再利用を進めるプロジェクトをサプライヤーとともに始めている。

CEと販売・マーケティング

サーキュラーエコノミーにおける販売・マーケティングの役割とは?

サーキュラーエコノミーは、それそのものを売るわけではない。このため、資本財のような競争の激しい産業では、販売・マーケティングチームは極めて重要かつ価値のあるものとなる。

サーキュラリティに関して会話を進め、どのような提案をも適切に位置づけるためには、サステナビリティ、またはライフサイクルにおける戦略の成熟した見通しがまずもって重要だ。また、エンゲージメントをどの段階で強化できるかを知ることが、目標に対しての進捗を把握し加速させることにつながる。

そのプロセスは、市場への参入や拡大、さらには物語を語ることで意識や意欲を高める前に、正しい質問を発することから始まる。透明性からテクノロジーに至るまで、複雑な事象を過度に単純化せず、意思決定者のためのメッセージを常に明確にする方法を見つけることが課題となろう。

メッセージを明確にする方法として、製品・サービスのストーリーを伝えることは重要だ。しかし、上手に伝えなければならない。そのストーリーが複雑な場合、必ずしもシンプルにする必要はないが、顧客に分かりやすく訴求することが重要となる。そういった意味では、販売方法は従来の方法とはなんら変わりない。正しいタイミングで正しい方法で正しいストーリでもって、正しい顧客に販売するということだ。

企業事例

レリー:フランチャイズ方式での機械改修システムを構築

農業機械大手のレリーは、再製造された機械を使用する顧客を支援している。同社の機械は俊敏かつ持続可能で、再投資が必要になった時にのみ新品を購入できるようになっている。同社は再利用された部品で作られたロボットづくりを目指すことで、サーキュラーエコノミー化に貢献するとしている。

今後は、フランチャイズ方式の機械の改修システムをTaurus認証として立ち上げ、2020年中に取引プラットフォームを構築するとしている。改修システムを成功させることは、再生産プロセスを作り上げる上でカギとなるだけでなく、顧客志向のプログラムは同時に新たな市場を作るのだ。

デル:CSRリーダーがサーキュラーエコノミーを推進

デル・テクノロジーズでは、顧客やステークホルダーとともにサステナビリティ推進プログラムを前進させようとしている。そこで、部署をまたいでサステナビリティに関心を持ち同僚や顧客とともに推進に取り組むメンバーを、「CSRリーダーズアンドアンバサダーズ」とするプログラムを行っている。同プログラムでは、ウェビナーやニュースレター、研修、コーチングを通じて参加メンバーを支援している。

ファンダーランデ:サーキュラーエコノミー測定ツールを大学と共同開発

サーキュラーエコノミー推進に向けては、リニア型経済システムで採用していた評価軸とは異なり、インパクト評価が課題となる。また、顧客の変化をサーキュラーエコノミーに対応する営業に取り込むことは、非常に困難であることもわかってきた。

そこで同社はアイントホーフェン工科大学と共同で、製品のサーキュラリティやサステナビリティ、資本財のビジネスモデルデザインを測定する一連のツールを開発することにした。これは同時に、同社の販売チームが顧客に対して正しい会話をすることを可能にするツールでもある。

学術機関との連携は移行期に当たっては重要で、同社の意思決定にとって新たな視点や戦略をもたらすだろうとしている。

サーキュラー時代のデザイン、調達、販売・マーケティング

サーキュラーエコノミーを機能させるカギとなるデザイン、調達、販売・マーケティング。いずれを推進する上でも、協働とコミュニケーションが重要であるが、各社によって取り組み方法は様々であったことがわかる。また、その取り組みも試行錯誤で行われている反面、成功事例も出てきているようだ。柔軟性をもって、サーキュラー時代にあった方法を採用していく必要がある。今後は、どのようにサーキュラリティを製品ライフサイクルに組み込み、顧客に訴求することがポイントなのか。各社の取り組みや進捗状況を紹介しながら追求していく。

【レポートURL】CIRCULAR INSIGHTS on Design, Procurement and Sales & Marketing By the Capital Equipment Coalition(2020.1)
*各社の取り組みの概要一覧(2019年実績と2020年計画)は、26ページ以降に掲載あり。
【参照サイト】Circular Procurement Guide
【参照サイト】Green Deal Circulair Inkopen