アパレルの再販ビジネスがメインストリーム化するにつれ、台頭する二次販売市場で多額の利益を上げる再販業者に対して倫理観を問う声がネット上で加熱している。
この流れに戸惑いを覚えるのはあなたひとりではないだろう。
※この記事は、2021年9月27日、オンラインメディアGreenBiz上に掲載されたLauren Phipps氏による記事を許諾を得て筆者が翻訳しています。
再販はファストファッションより良いのではないだろうか?製品寿命を延ばすことは新たな製品を製造するよりも良いのでは?企業は再利用や再販売のために投資し、その市場はこの先5年で8兆712億円に到達すると見られていたのではなかっただろうか?
その通りだ。
しかし、オンライン上での議論も無視すべきでない。再販におけるアクセス・人種・力関係を浮き彫りにしているからである。
何が問題なのか。
Z世代は中古品がおしゃれだと思っている。この世代の消費者は、Etsyから162億円で買収されたDepopなどの急成長を下支えしている。YoutubeやTikTokではvloggerらが中古品販売店で買い物をする様子を伝える動画が人気で、一本の動画が数百万回も視聴されることもあるほど。こういったソーシャルメディアを通じた発信を行う人や中古品に詳しいのは、上流〜中流階級の白人女性がほとんどだ。
このような再販市場にビジネスチャンスを見出し、Goodwillやその他寄付団体らの運営する店から大量に安い服を購入し、価格を上乗せした上でDepopやメルカリ、Poshmarkなどで再販することで多額の収益を上げるのは個人起業家だ。
再販は現在高級化(ジェントリフィケーション)の道をまっすぐに突き進んでいる。結果、中古品の価格を押し上げ、これまで地元の中古品販売店で物を購入してきた低所得者層が追い出されるという現象が起きているのだ。
これを倫理的でないという人もいる。これが自由市場資本主義だという人もいる。
なぜ問題なのか
ピア・トゥ・ピアの再販プラットフォームは取引ごとの手数料で成り立っており、その存続は個々人の出店者らにかかっていると言える。プラットフォームが想定しているのは、個人が自分が着なくなった服を捨てずに出店して他の利用者に譲ることかもしれないが、実際にプラットフォームの急成長を支えているのは商業的に取引を行う個人の事業家ら他ならない。
これはUberにまつわる現在の議論とよく似ている。Uberが表向きに想定しているのは、自家用車を使って週末に小遣い稼ぎをするドライバーだが、実際にはUberで客を乗せるためにレンタカーを借りたフルタイム運転手が乗客を拾うという実態がある。また、これらのライドシェアリングアプリは、プラットフォーム上での人種差別を指摘されたり、サービスによるカーボンフットプリントが問題視されたりしている。さらにギグエコノミーにおける従業員と契約者の線引きについては激しい議論が繰り広げられていることも無視できない。
新しいビジネスモデルが社会・環境にもたらすメリットは短期間で複雑化しやすいため、個人の事業者に依存する企業や意図せずとも発生させてしまっている社会・環境負荷に対する責任に向き合う必要がある。
考えるべきこと
アパレルにおけるアクセスと影響力に関する緊張関係は何も今始まったことではない。特権ある消費者によるファッションの流用についてはこれまでも徹底的に議論されてきた歴史があり、現在急拡大する再販は高級化路線を進んでいる事実を踏まえて精査されるべきである。
しかし、Goodwillに寄付された古着もそのほとんどが埋め立てられたり、グローバル・サウスの市場に流れこみ負の影響を引き起こしたりしている事実もあり、アパレル業界による環境への影響を減らすことができているのかと言われれば難しいものがある。
新たなビジネスモデルを考えるとき、再販のもつ社会・経済的な影響を認識することは重要だ。ただ、システム・チェンジはシステム思考が欠かせないことも忘れずにいよう。症状に「絆創膏を貼る」という対処療法を施すだけでは、廃棄と汚染というファッション産業の大きな課題を根本から治癒することはできないのだから。再販もまた、解決策の一部でなければならないはずだ。
【翻訳元記事】Is the gentrification of resale upon us?