地球上で2番目に面積が大きく、2番目に人口の多い大陸、アフリカ大陸。面積は地球表面の6%、陸地全体の20%を占める。2022年の人口は約14億人、世界人口の約17%を占め、2050年には30%に達するとの予測(国連「世界人口予測2022」より)もある。人口が増加する地域として、また人口全体に占める若者の割合が高いこともアフリカの特徴である。

リチウム・黒鉛・コバルト・ニッケル・銅・レアアースなどのアフリカが有する豊富な天然資源は、将来的に巨大なアフリカ経済圏を形成する推進力になるとされる。

気候危機の観点では、世界の炭素排出量に占めるアフリカの割合は低いにも関わらず、先進国を中心とした経済活動に起因する気候変動が、アフリカの経済や生活に大きな負担を与えているという不均衡な現状がある。COP27でも交渉の議題に上がったところだが、資金や投資は大幅に不足しており、適応策の開発、災害リスクの特定や評価、アフリカ大陸内の各地域や国を越えた協力と調整の強化が喫緊に求められる状態にある。(アフリカ開発銀行グループ「アフリカ経済見通し2022」より)

そんななか、アフリカにおいてもサーキュラーエコノミーの取り組みが進められている。2022年はWorld Circular Economy Forum(世界循環経済フォーラム)がルワンダのキガリで開催されることも含め、アフリカのサーキュラーエコノミー移行への注目が集まっている。先進国とは違う、上記のような状況にあるアフリカがサーキュラーエコノミーへ移行する意義は、脆弱性緩和とイノベーションの観点から非常に大きい。サーキュラーエコノミーを推進する団体も活発に活動しており、African Circular Business Allianceもその一つに数えられる。

African Circular Business Alliance (ACBA)とは

African Circular Business Alliance (ACBA)は、アフリカ大陸における、持続可能かつ収益性が高く、成長可能な循環型の市場構築を目指す非営利の団体である。技術支援や循環型ビジネスの成長戦略、脱炭素化に向けた道筋、環境保全を目指すアフリカの人々のための資金へのアクセスなどを提供することを目的とし、アフリカでのビジネスコミュニティを活性化するために主に調査などの活動を行う。ACBAは支援団体として、企業がグリーンなマーケットとその変化するダイナミクスを正しく理解し循環型ビジネスを行っていくために、サポートしている。

アフリカにおいて、気候変動対策、収益性の高いサーキュラーエコノミー、ビジネスの成長を加速を支援することを同社のミッションとし、アフリカで循環型市場を構築する主要な組織になることをビジョンとして掲げる。

編集部では今回、最高経営責任者(CEO)のMiguel Peters氏に、ACBA設立の背景や活動内容、目標などについてお話を伺った。以下はMiguel Peters 氏のコメント。

最高経営責任者(CEO)のMiguel Peters氏

ACBA設立の背景

アフリカは、気候変動の悪影響を最も受けている大陸です。残念なことに、少数のトップのグローバルビジネスリーダーや政府によって提供された解決策の多くは、完全には対処していません。

この大陸では、既に干ばつや洪水の増加など、さまざまな気候変動の影響に直面しています。今後さらに深刻な人道的危機と食料生産の減少、沿岸地帯とデルタの洪水と浸水、生態系の変化や生物多様性の喪失などの損害を受けることが予想されます。ACBAは、気候危機に関連する社会問題に取り組み、私たちが望むアフリカを構築することを目的として設立されました。

ACBAの目的と活動内容

私たちは、アフリカ全土で強力な循環型市場とエコシステムのプレゼンスを確立することを目指しています。

ACBAは、パートナーのビジネスが成功するための適切な情報・ツール・リソースおよびエコシステムを活用し、ビジネスコミュニティ・リーダーおよび一般市民を支援しているところです。持続可能なサーキュラーエコノミー・市場を構築し、アフリカにおける気候危機の負の影響に対処し、それらを緩和することが目的です。活動の結果、下記のようなインパクトをもたらすことを目指しているのです。

  • 持続可能なビジネスの成長と中小企業および大企業へのプラスの影響
  • グリーン関連雇用の大規模な創出
  • リニア型経済における人的資本と原材料の搾取の終焉
  • 経済社会の成長とエンパワーメントなどに向けた、適切なビジネス上の意思決定を行うための信頼できる情報 (R&D に基づく)。

これらを達成するために私たちが支援する活動内容を下記に挙げます。

  • 政策・技術支援・規制の擁護を提供する
  • 資金調達機会へのアクセスを促進する
  • ビジネスの脱炭素化への道筋を立てる
  • 循環型市場へのアクセスを促進する
  • スキル開発のためのパートナーシップを確立する
  • ネットワーキングと情報を共有する
  • 研究開発
  • 出版物を通じて専門知識を共有する

特に下記6点の社会課題の解決を、私たちの注力分野としています。

  • 気候変動
  • 持続不可能な開発
  • エネルギー不足
  • 食料不足と廃棄
  • 失業
  • プラスチック廃棄物・汚染

なかでも、アフリカ大陸の都市部と農村部双方における最も重要な産業であるエネルギー部門と食品部門から課題解決に着手し、アフリカの5つの地域 (西アフリカ、東アフリカ、北アフリカ、中部アフリカ、南部アフリカ) において、一度にひとつずつ下記のようなサービスを提供することを目指しています。

  • サーキュラー エコノミーの原則の下での、アフリカにおける製品の市場適合性に関する確固たる調査結果
  • ビジネスの成長のための技術支援またはエコシステムの支援
  • ビジネス規模拡大のための資金調達機会へのアクセス
  • 生産または顧客使用後の廃棄物についての、適切な利用に関する知識

対象国としては、ナイジェリア・南アフリカ・アンゴラ・ボツワナ・タンザニア・ケニア・ルワンダ・モロッコ・エジプトなどから始めていきます。これらの国は下記のような特徴を持っているため、優先的に焦点を当てる選択をしました。

  • 優れたビジネス市場がある
  • ビジネスのしやすさを促進する政府の有利な政策がある
  • 安定した経済と社会政治環境がある
  • 国内外への投資に魅力がある
  • 若者の人口が多く、労働人口が多い
  • セキュリティ面で優れている
  • 経済が急速に成長している
  • サーキュラーエコノミーと気候変動に関する強い意識を持っている

現在はアフリカ大陸内で活動していますが、将来に向けて世界の他の地域との協業やパートナーシップを模索しています。

ACBAが大切にするのは、事実に基づいたアプローチ

私たちをとりまく社会では、サーキュラーエコノミーや気候危機などの重要な課題に関する個人的な意見や証明されていない理論に起因する誤った情報が、具体的な証拠や調査結果なしに広く盲目的に拡散されるという事態が起こっています。私たちは、研究開発を通じて事実に基づくアプローチを採用しており、以下のようなものがそれに該当します。

  • 適切なデータを収集するためのプロセスを設定する
  • データの品質が有効であり、私たちが取り組んでいるセクター、コミュニティ、国、地域、または背景に基づいていることを確認する
  • 洞察を引き出すために、判断を伴わない分析を行う
  • 考えられる決定の長所と短所を共同で検討し、推量ではなく分析結果によってサポートされる (ビジネス上の) 決定を選択する

研究開発は、ACBAがアフリカと世界のサーキュラーエコノミーやその市場の複雑さをより理解し改善するための重要な要素です。研究開発は基本的に科学に対する神話や間違った認識を打破し、信頼できる本物の知識を生み出すことにつながります。市場の複雑さを偏りなく観察し、事実に基づく意思決定を可能にすると同時に、ビジネスの魅力を向上させることを目指しています。

日本に期待すること

日本は、社会経済の発展と成長を促進する技術に関する高度な知識とイノベーションで知られています。 サーキュラーエコノミーやサステナビリティという分野において、日本とアフリカのIT企業が結び付くことは、両地域に大きなチャンスを生み出すと信じています。具体的には、クリーンエネルギー、食品・農業技術、リサイクル、持続可能な輸送、建築・建設、電気通信の企業などに注目しています。

私たちは、日本や日本の企業がサーキュラーエコノミーへの移行を推進する上で、国内または国際的に重要な役割を果たすことができると確信しています。

【公式URL】African Circular Business Alliance
【参考】アフリカ開発銀行グループ「アフリカ経済見通し2022」
【参考】Africa’s Circular Economy Projects
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