7月1日からのレジ袋有料化により、プラスチックに対する関心が高まっている。プラスチックに対しては、さまざまなアプローチがある。ただ循環させればよいというわけではなく、処理の優先順位を意識して適正に処理されなければならない。「発生抑制」や「再利用」がまず優先されるが、現在のシステムでは、上記の取り組みがなかなか難しい製品がある。その一つが「ごみ袋」である。ごみ袋は、ごみを入れて、環境に漏出させずにごみ処理施設まで運ぶという役割を果たすが、利用する時間は短い。

ごみ袋については、生物資源に移行する目的で、バイオマスプラスチックを活用する流れが出てきている。2019年に策定された「プラスチック資源循環戦略」において、2030年までに年間バイオマスプラスチック使用目標量を197万トンとし、その重点戦略として可燃ごみ指定袋へのバイオプラスチック使用が掲げられている。

すでに、京都府京都市・東京都三鷹市・新潟県上越市・福岡県北九州市などがバイオマスプラスチックを使用した指定ごみ袋を採用している。これにより、原料となる植物が光合成の過程で吸収する二酸化炭素と、焼却時に排出される二酸化炭素を相殺することになる。環境省も、令和2年〜3年度にバイオマス普及関連事業に2,000万円の予算を投入した。バイオマスプラスチック自体に多くの議論はあるが、ごみ袋へのバイオマスプラスチック活用の流れは加速していくだろう。

一方で再生プラスチックを活用するという動きもある。これはプラスチックを循環させることで、新たなプラスチックの利用を低減させ、循環利用とCO2排出削減をねらうものだ。今回取材をした株式会社サティスファクトリーがリリースした99%再生材のごみ袋「FUROSHIKI」は、この流れを組んで登場した。FUROSHIKIとは一体どのようなごみ袋なのか、同社にお話を伺った。

株式会社サティスファクトリー 広報ご担当者

99%再生材ごみ袋「FUROSHIKI」とは?

廃棄物管理サービスと環境コンサルティング事業を主軸とした事業を展開する株式会社サティスファクトリーは2020年6月17日、プラスチック資源の国内循環を実現する99%再生材ごみ袋「FUROSHIKI」の供給開始を発表した。

同社が強みとする廃棄物管理サービスから生まれた製品で、概要は次の通りである。物流倉庫などで荷物を固定されるために使われたストレッチフィルム等を同社グループ企業が回収し、それを提携工場でマテリアルリサイクルによってペレットにする。その後、ごみ袋に生まれ変わらせるというシンプルな仕組みだ。これにより、ごみ袋の99%は再生材で賄われるという。

FUROSHIKIの仕組み

同社発表によると、2020年8月の1ヶ月で物流会社や運送会社、食品メーカー、通販会社、卸売市場など76社から103トンの廃プラスチックを回収した。45ℓのごみ袋に換算すると、605万枚に相当し、新品プラスチックを使用した場合と比較してCO2排出量ででは約302万トンの削減という計算になる。

同社は、同プロジェクトを「廃プラを活用したごみ袋で、国内の資源循環を意図したもの」と位置づける。


FUROSHIKI (営業時には木箱に入れ、風呂敷に包む)

このストレッチフィルム(下写真)は、「食品用ラップフィルム」の業務用のようなもので、物流倉庫などの場面で利用される。荷物の荷崩れ防止や商品破損防止などの役目を果たす。低密度ポリエチレン(LLDPE)がその主な原料だ。

ストレッチフィルム 写真

何度か再利用することも可能だが、食品用ラップフィルムを何回も使おうとするときの感覚と同じように、シワを伸ばしたり形をもとに戻したりするのに時間がかかる。超過密スケジュールで動く現場では、そのような時間を確保しづらい状況だ。そのため、これまで輸出または廃棄されてきたという。質の良いまま廃棄されるストレッチフィルムは、何よりも構成する素材もシンプルで、リサイクルに適しているそうだ。

「中国や東南アジアが廃プラ輸入規制をかけたのは記憶に新しいのですが、日本のプラスチックの処理を巡る状況は厳しくなるばかりです。国内で循環できる仕組みを作れないかと、まず注目したのがストレッチフィルムです。これらはリサイクルに適したものであるにも関わらず一度きりの使用で廃棄しているため、とてももったないと考えていました。処理費用もかかるので、お客様からの処理方法についてお問い合わせも多く、私たちも国内で循環させたいということで、第一弾として『FUROSHIKI』そして一連のスキームを立ち上げました。まずは首都圏から始めて今後拡大していく予定です」と同社は説明する。

FUROSHIKIを説明する動画

同社は、このプロジェクトのために自社でパッカー車を購入。人員も配置するほどの力の入れようだ。ただ、すでに同社の既存のネットワークがあるので、大きな投資は必要ない。

ストレッチフィルムをパッカー車で回収する様子

ストレッチフィルム排出事業者にとっての価値

ストレッチフィルムを排出する事業者は、湾岸沿いの大手物流倉庫やその倉庫を利用しているメーカー、ECサイト事業者が多くを占める。これらの事業者から、処理費用が発生し環境負荷も与えることから、ストレッチフィルムを有効活用できないかという相談を受けていたそうだ。

契約している排出事業者は、所定の場所に使用済みストレッチフィルムを保管するだけだという。サティスファクトリーグループの回収担当者が週1・2回、貯めたストレッチフィルムをパッカー車で回収をする。排出事業者にとっては環境負荷を低減し、廃棄コストの削減にもつながることから好評を得ているようだ。

ごみ袋利用事業者側にとっての価値

1つ目は、通常のごみ袋と比較して費用が同等であること。同社は、「国内で流通しているすべてのごみ袋を調査しましたが、平均価格では大差はありません」という。

2つ目は大規模な設備投資の必要がないこと。「SDGsやESGのうち、環境への取り組みには、大規模な投資やプロジェクトの参画など大きなことを考えがちではありますが、ごみ袋という身近な製品から始めることができるのが特徴です。当然、FUROSHIKIに大きな投資は全く必要ありません」と話す。

最後に、再生材ごみ袋を使うことで、利用事業者は資源循環やCO2排出削減に取り組んでいることをPRできる。CO2排出削減に関しては、具体的な数値も出せるため、ステークホルダーに説得力をもって伝えられるという。同社調べによると、新品資源を使用するごみ袋使用時と比較して、1箱に45ℓが500枚入っているFUROSHIKIを活用することで、約30kgのCO2排出の削減が可能だという。

地上資源の活用

FUROSHIKIは、プラスチックの国内循環の必要性という課題に対して、目に見える製品として登場した。同社広報担当者は、「プラスチックは便利なもので、さまざまなものを安全に運べます。しかし、今すでに生産されているプラスチックを安易に捨てることはできなくなるでしょう。便利なものをよいこととして、大切に使い続けることが必要だと感じています」と話す。「すでに生産されたプラスチック」すなわち、これ以上の地下資源の採掘を行わず地上資源で賄うことが大切だということだ。

本業を循環型に

サーキュラーエコノミーの実現に関連して、このプロジェクトだけではなく、環境コンサルティングや廃棄物管理サービスを通じて感じていることがあると言う。「最近は、事業に直接関係ない領域への社会貢献にお金を使うよりも、事業自体のあり方を変えていくことが求められていると感じる方が増えています。お客様の既存事業のうち、廃棄物に関わるものに対して支援し、新しいスキームを作って実行しているのがここ最近の私たちの動きです。」サーキュラーエコノミーは、漠然としたサステナビリティの概念をもう一歩具体化させるものとして機能していくだろう。

サーキュラーエコノミーの視点から

サーキュラーエコノミーの視点から、FUROSHIKIの特徴を2点挙げたい。1点目は、「循環型原材料の活用」。2点目は、「パートナーシップ」である。

循環型原材料の活用

ストレッチフィルムは本来、使用後にごみ袋として使われる設計はされていない。人的資源の欠如や排出事業者の生産性が下がることから、輸出や廃棄の方が効率的であるとされてきたものだ。しかし、同社も指摘したように、廃棄コストがかかることと、一度使ったら捨てられるという最も避けたい利用方法が採られてしまい、環境に負荷を与えていた。

サーキュラーエコノミーの文脈から見ると、自動化技術によるストレッチフィルムの再利用や、ストレッチフィルム自体を生物資源化(バイオ配合率を高める)することなどが戦略として採りうるだろう。

一方、FUROSHIKIは、現場として上記の戦略がなかなか採用しづらいことに目が向けられた仕組みだ。もともと捨てていたものを焼却や埋め立てするループを断ち切り、すでに地上に存在する原料を活用する方法を採用する。その後、循環型原材料として活用することにより、新たな石油資源を利用する必要性をなくし、CO2排出削減に寄与する。さらに、ほとんどのケースで、1回のみ利用されるごみ袋に高品質なものは要求されていないため、ストレッチフィルムの次の利用用途として適しているといえる。今後はストレッチフィルム自体の再生材配合率が高まっていくと、なお循環性が高まるだろう。

FUROSHIKIの事例は、これからサーキュラー型ビジネスを展開しようと考えている方にとって示唆を与えてくれるだろう。身の回りの事業から排出されるごみが何かに生まれ変わるかもしれない、という視点を持ってみると、新たな発想が生まれてくるかもしれない。

パートナーシップ

FUROSHIKIの仕組みには、サティスファクトリー・廃プラスチック排出事業者・FUROSHIKI利用事業者・リサイクル業者の4社の存在が欠かせない。全国3,500社を超える廃棄物処理関連のパートナー企業と連携し、日々廃棄物の排出事業者と課題解決に取り組む同社だからこそ成立した仕組みともいえるだろう。

自社でパッカー車を購入し、人員も確保し、ある程度は自前で揃えているが、すべては自社で賄えない。やはりパートナーとの連携が重要となる。その際に重要なのはウィンウィンであることだ。FUROSHIKIはインタビューでも触れられたように、上記全てのステークホルダーのニーズが合致した形でマッチングしている。そもそも、この製品は顧客からのニーズにより生まれた製品であるため、スタート段階からニーズを満たしている。

このように、異業種間のパートナーシップがサーキュラーエコノミー型事業を立ち上げるうえで鍵となる。

終わりに

FUROSHIKIのように、少しの工夫を加えるだけで再生や循環が可能な商品は私たちの身の回りにあるかもしれない。その意味で、今後サーキュラー型ビジネスを展開するうえで、参考になる取り組みだろう。

FUROSHIKIは、サティスファクトリーグループ企画ブランド「ETHICAL PRODUCTS」に属するオリジナル商品である。他のETHICAL PRODUCTSのラインナップに加えるべく、他の新しいサーキュラー型商品も目下企画中だそうだ。3,500社とのパートナー企業とのネットワークを持つサティスファクトリーがどんな一手を打ち出すか、今後に期待したい。

【参考】プラスチック資源循環戦略
【参考】バイオマスプラスチック利活用検討業務
【参照記事】プラスチック資源の国内循環を実現する99%本物の再生材ごみ袋「FUROSHIKI」を事業者向けに供給開始
【参照記事】廃プラ103tを76社より回収で前倒し目標達成、「FUROSHIKI」月産600万枚超へ
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