タイ・バンコクにてこのほど開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議において、アジア太平洋地域の持続可能な成長に関する「バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標(以下、バンコク目標)」が承認された。
アジア太平洋地域における力強く、均衡ある、安全で、持続可能かつ包摂的な成長を目指すバンコク目標の概要は、以下である。
気候変動や環境の課題に包括的に取り組むべく、以下を実施する
- SDGsおよびパリ協定の目標達成に向けたAPECメンバーの取り組みを支持する
- 気候や環境の課題における政策やベストプラクティスの発展や共有において協力し、能力構築・意識向上のプログラムを推進する
- クリーンで低炭素なエネルギーへの移行を進め、エネルギー安全保障を促進する
- 環境配慮型の政策の奨励・農業生物多様性の保全・農業バイオテクノロジーやデジタル化などを通じて、持続可能で包摂的な食料システムと農業慣行を促進し、食料安全保障を達成し、フードロスと食料廃棄を低減する
- カーボンプライシングや国際炭素クレジット市場などの持続可能性や気候行動への投資や金融を支持し、タクソノミーをはじめとするグリーンかつクリーンな世界経済に向けた資金の流れを支持する選択肢を検討する
持続可能で包摂的な貿易・投資を促進するべく、以下を実施する
- 環境物品・サービス貿易の円滑化に取り組む
- サステナブルツーリズム・製造業・農業・輸送・物流・グリーンな低炭素デジタルおよび技術分野の発展を通じて、責任ある企業行動とESG産業慣行に関する具体的なイニシアチブを促進する
- 男女平等・女性の経済統合・包摂性・エンパワーメントを促進する
- サステナビリティ活動における能力構築などを通じて、零細・中小企業の役割を強化する
環境保全・天然資源の持続可能な利用と管理を促進して生物多様性喪失を止めるべく、以下を実施する
- 沿岸・海洋資源・エコシステムの保全と持続可能な利用、および持続可能な漁業と養殖業を促進する
- 海洋ごみとプラスチック汚染を防止し、削減するための取り組みを継続する
- 森林生態系の劣化を止め、持続的に管理可能で合法的に採取された林産物の貿易と消費を促進するための取り組みを強化する
- 環境と天然資源を維持・保全・管理・保護する取り組みを改善する
資源効率性の向上とゼロウェイスト達成に向けて持続可能に廃棄物を管理するべく、以下を実施する
- 循環型事業モデル・政策・ベストプラクティス・持続可能な生産と消費形態の共有などを促進し、循環型経済アプローチを推進するために協力する
これらの取り組みを達成するには、すべての人の生活の質を改善し、青年の役割を促進して、男女平等、零細・中小企業、女性、先住民や障害者、遠隔地や農村地域の人々などの経済的包摂とエンパワーメントを推進する連携した包摂的アプローチが必要であるとしている。
APEC委員会と関連サブ・フォーラは、上記の課題を各戦略と活動計画に統合し、必要に応じてフォーラ間の協力を促す意向だ。上級実務者は、バンコク目標を監視し進捗を評価する。持続可能性向上に向けた取り組みの包摂的な促進は、APECの安全かつ持続可能で包摂的な未来への成長を支持するとしている。
今回のバンコク目標承認に先立つ2022年9月、APECに参加する21の国と地域の閣僚およびハイレベルの代表者は、第28回APEC中小企業大臣会合の結果をまとめた声明を発表した。同会合の議題は、「バイオ・循環型・グリーン経済モデルと影響力の大きいエコシステムによるAPECの零細・中小企業の包摂的回復」であった。同声明は、参加地域のスタートアップや零細・中小企業が直面する問題を整理し、ソリューションを提示した。
「バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標」承認により、アジア太平洋地域の持続可能な成長に向けて各国が連携し、取り組みを加速させていくことが期待される。
【参照サイト】バイオ・循環型・グリーン経済に関するバンコク目標
【参照サイト】APEC(アジア太平洋経済協力、Asia Pacific Economic Cooperation)
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*冒頭の画像の出典:APEC