アップルは2021年の年次株主総会で、「将来、すべての製品と容器包装に100%再生可能なリサイクル材を使用する」ことを発表した。

同社は世界的企業運営において、現在すでにカーボンニュートラルを達成しており、2030年までにサプライチェーンと全製品を100%カーボンニュートラルにすることを2020年7月に公表している。今回示した目標をはじめ、同社が実施している主な環境への取り組みは以下のとおりだ。

設計

  • 低炭素設計:製品に使用する素材とエネルギーを見直し、最も炭素排出量が多い部品に集中して取り組んでいる。2008年以後、同社製品による平均エネルギー消費量を73%削減した(同社発表より)

調達

  • 素材分析:素材が環境・社会・世界的供給に与える影響を分析し、現在、リサイクル材または再生可能な素材への転換が有効であると同社が考える14の素材に優先的に取り組んでいる。14の素材とは、アルミニウム・コバルト・銅・ガラス・金・リチウム・紙・プラスチック・希土類元素・鋼鉄・タンタル・スズ・タングステン・亜鉛である。優先素材の分析は、100%再生可能なリサイクル材の調達を実現するまで継続するとしている
  • 容器包装の改良:プラスチックの排除・再生材の増加・容器包装全体の削減に取り組んでいる。現在、容器包装の大半を繊維から製造しており、小売店での全レジ袋を主に再生素材を使用した100%繊維からつくったものに移行した
  • 紙の供給:紙の循環サプライチェーンを確立したとしている。2017年以降、紙と容器包装の木材繊維はすべてリサイクルまたは責任ある供給源から調達しており、バージン繊維が必要な場合は、責任を持って管理された森林から木材を調達している。世界の責任ある紙の供給を維持するために、環境保全と経済発展を目指すNPO団体の米The Conservation Fundおよび世界自然保護基金(WWF)と提携して、作業林管理の保護・改善を行っている

回収

  • 素材再生研究所:米テキサス州にある同社の素材再生研究所は、再生方法の最適化・分解方法の改善・次世代の再生技術の研究開発推進に重点を置いている
  • ロボット:独自開発した分解ロボットDaisyは、部品を取り除いて分類し、多くの素材を高い品質で回収できる。もう一つのロボットDaveは、分解された部品やスクラップに含まれる希土類元素・鋼・タングステンを効率よく回収している
  • 下取り:使い終わったデバイスを下取りに出すと、新デバイスを割引価格で購入したり、下取り額分を商品券で受け取れる。下取り条件を満たさない場合は、同社が無料でリサイクルする。iPhoneの下取りで回収されたアルミニウムは、MacBook Airの100%再生アルミニウムのボディに使われ、iPhoneの電池から回収したコバルトは、新しい電池の製造に使用される

製造

  • 再生可能電力:すべてのサプライヤーが2030年までに再生可能電力で製造することを目標としている。3月31日にはサプライヤー110社以上が再生可能エネルギー100%に切り替えたことを発表している
  • 政策:クリーンエネルギーは、サプライヤーだけでなく、電力網全体と国にとっても有益であると同社はみており、炭素税の導入や、サプライヤーとコミュニティに費用対効果の高い再生可能電力市場を構築する政府の政策を積極的に支援している
  • 廃棄物ゼロプログラム:2015年、サプライヤーを対象とした廃棄物ゼロプログラムを開始した。これは削減・再利用・リサイクルを通して、埋め立て処理される廃棄物をゼロにするようにサプライヤーを現場で支援するプログラムで、廃棄物を100%転用することを目標としている。同社は、廃棄物が最も多い最終組み立て施設に焦点を絞り、2018年にiPhone・iPad・Mac・Apple Watch・AirPods・HomePodのすべての最終組み立て施設が廃棄物ゼロ認定を取得し、2019年にはプログラムを拡充してApple TVの最終組み立て施設も追加した

事業活動

  • 再生可能電力:44カ国に拠点を構える同社の店舗・オフィス・データセンターは、100%再生可能エネルギーで電力供給されている。再生可能電力への転換と、環境への取り組みが評価され、国連グローバル気候アクション・アワード2019を受賞した
  • 企業としての排出量:2020年4月1日現在、同社は13万2,000人以上の従業員の通勤と出張による排出量を埋め合わせており、企業全体のフットプリントはカーボンニュートラルであることが公式に認められている

炭素除去

  • 森林・湿地帯・草原の保護と回復を支援:世界中の森林・湿地帯・草原の保護と回復を支援して、大気中から過剰な炭素を永続的に除去することを目的として、生物多様性保護を目指すNPO団体の米Conservation Internationalと連携して基金を設立した。コロンビアのマングローブの回復と保護、ケニアのサバンナ回復などへの取り組みを行っている

今後も同社は、素晴らしい製品を創り出すことと、世界をさらに良いものとして次世代へ残すことを目指して取り組んでいく意向だ。

【参照レポート】Apple Inc. Notice of 2021 Annual Meeting of Shareholders and Proxy Statement
【参照サイト】A planet-size plan.
【参照サイト】地球規模の計画です。
【プレスリリース】Apple、2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束