環境省が進める2023年度「自動車リサイクルにおける再生材利用拡大に向けた産官学連携推進事業」の一つとして、「ELV(使用済み自動車)自動精緻解体を起点とした水平サイクルを実現する動静脈一体プロセスの技術実証」が採択された。

サーキュラーエコノミーの観点から、自動車産業では、再生材の利用拡大を通じて新たな天然資源の投入量を削減することが必要とされている。しかし現在は、ELVを破砕し材料ごとに選別して再生材を作り出す手法が用いられることが多い。高純度の再生材に向けた材料を選別することが難しいため、水平サイクル率が低いのだ。

動静脈の連携も十分ではなく、高品質が求められる自動車部品の材料として再生材を用いる取り組みがあまり進められてこなかった。またその一方で、ELVの解体・破砕を担う業界では、深刻な労働力不足への対応や、安全・安心で快適な労働環境の整備などが課題となっていた。こうした課題の解決とともに、再生材の質と量の確保にも繋がるELVの新たな処理手法への転換が必要となっているのだ。

今回の技術実証では、ELVの解体・破砕事業者、解体システム提供者、素材メーカー、自動車部品メーカー、研究機関などの参画法人が連携。新たなELVの処理手法である「自動精緻解体プロセス」を起点に、動静脈一体となったプロセスの技術実証を通じて、動静脈一体のエコシステムを社会実装するうえでの課題の抽出を行う。実証期間は2024年3月上旬から2025年1月末までの予定。

技術実証に参画するのは、学校法人早稲田大学、株式会社デンソー、リバー株式会社、DIC株式会社、株式会社UACJ、金城産業株式会社、九州メタル産業株式会社、住友化学株式会社、大同特殊鋼株式会社、東レ株式会社、豊田合成株式会社、トヨタ紡織株式会社、株式会社野村総合研究所、古河電気工業株式会社、株式会社マテック、三井化学株式会社など。

自動車部品の再生材利用の拡大を目指すとともに、動静脈一体となった自動車産業のサーキュラーエコノミー実現を目指す。

【プレスリリース】自動車リサイクルにおける再生材利用拡大を目指し、自動車部品解体プロセス等の技術実証を開始
【参照記事】令和5年度自動車リサイクルにおける再生材利用拡大に向けた産官学連携推進事業の公募について
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