酵素を使ったリサイクル技術を提供するフランスのスタートアップCarbios社は4月8日、新たな酵素でペットボトル(PET)を短時間で分解し、リサイクル可能な状態にできる技術を開発したとする論文を、科学雑誌「ネイチャー」で発表した。同社は5年後の商用化を目指して、ペプシやロレアルを含む大手メーカーと協働して、実用化に向けた開発を加速させる。
PET1トンの90%を10時間以内に分解
ネイチャー誌に掲載した論文によると、同社は2012年から堆肥から発見された10万種類もの微生物の調査を開始。そこで発見された酵素をPETの分解経路の研究データを基に変異させた結果、PETを短時間で分解し、さらにリサイクルを可能にする酵素を新たに開発したとしている。
同社が開発した酵素は72℃で安定的に活性化し、PETを急速に分解することができる。このため、1トンのPETの90%が10時間以内に分解し、分解後の物質から飲料に使用可能な高品質のPETを再生産することに成功した。
同社は、この酵素を大規模に生産する契約をバイオテクノロジーのNovozymes社と結んだことを明らかにしている。同社によると、この酵素の生産コストは新しいPETの生産コストのわずか約4%だとしている。
今回の新たな酵素の開発について、専門家らは大きな前進だと評価している。同社の副最高経営責任者のMartin Stephan氏は「わが社がこの技術を商用化する初の企業となるだろう」とした上で、2024年か25年には商用化する考えを示した。
【参考記事】Scientists create mutant enzyme that recycles plastic bottles in hours
木村 麻紀
環境と健康を重視したライフスタイルを指すLOHAS(ロハス)について、ジャーナリストとしては初めて日本の媒体で本格的に取り上げて以来、地球環境の持続可能性を重視したビジネスやライフスタイルを分野横断的に取材し続けている。サーキュラーエコノミー(CE)における関心領域は、CE×社会包摂的まちづくり、CE×教育など。SDGs.tv公認ラーニングコーチ。
プロフィール詳細はこちら:http://www.makikimura.com/profile/