WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は1月23日、世界経済フォーラム、ヨーロッパ技術気候KIC機構、イギリスのSYSEMIQ、政府・産業・その他のパートナー連合と共同で「サーキュラー・カー・イニシアチブ」を発足した。自動車製造産業全体で化石燃料の利用からの完全な脱却を目指す。

自動車業界のバリューチェーンにおける官民それぞれのステークホルダーからなるコンソーシアムで、製造工程の二酸化炭素排出を排除し気温上昇を1.5度以内に留めることにコミットする。車、パーツやその他の構成要素のリサイクル性を高めることが第一の目標だ。

現在自動車業界は世界全体の二酸化炭素排出量の約20%を負ってており、排出量がこのまま変わらなければ、自動車業界単体で2020年までに世界の気温を0.8度上昇させてしまうことになる。自動車産業は非常に多くの自然資源を消費しており、全世界の中で80%のゴム消費量、25%のアルミニウム消費量、15%のスチール消費量を占め、環境にかける負荷は膨大だ。

高まり続ける環境負荷を受けて、規制当局や活動家、企業らは電気や水素などクリーンな自動車燃料利用への移行を進めており、これにより車両利用時の二酸化炭素排出を完全に排除できる可能性がある。しかし、電気自動車は利用時の二酸化炭素排出量を下げるものの、生産時の二酸化炭素排出量を大きく増加させてしまう。「サーキュラーカー」や100%リサイクル可能な自動車とは、この生産時の二酸化炭素排出をも排除することを意味する。温室効果ガスを削減し、他の資源をより効率的に活用するのだ。

また、自動車業界においてサーキュラーエコノミーを実現するためには、様々な革新的なテクノロジーが重要な鍵を握る。IoTにより自動車素材やパーツをライフサイクルを通してトラックすることができるようになり、3Dプリンティングなどの技術により、素材の使用量を削減したり、より効率的に利用できるようになる。

また、MaaS(Mobility as a Service:移動のサービス化)の浸透によりUberやLyftのように車の所有の概念を大きく変えるサービスも登場してきている。サーキュラーカーは、企業にとっても廃棄するまで車両の素材の価値を最大限に維持し高める経済的メリットを提供する。これまで大きく化石燃料に頼ってきた自動車業界のサーキュラー化は、環境負荷や気候変動を止めるための重要な一歩であるとともに、業界としての生き残りをかけた大切な局面となりそうだ。

【参考記事】The Circular Car Initiative: a multi-stakeholder effort to completely decarbonize the automotive manufacturing sector