経済産業省に事務局を置くサーキュラーエコノミーに関する産官学パートナーシップは22日、立ち上げイベント・第1回総会を開催した。同パートナーシップの名称は、事務局が挙げた名称候補について会員に対する調査を実施した結果、「サーキュラーパートナーズ」に決定。会員数(12月20日時点)は307者(企業:231社、業界団体:17団体、自治体:13自治体、大学・研究機関:16機関、関係機関・関係団体:30機関)。サーキュラーエコノミー実現に向けて、関係主体の連携を促進する。
サーキュラーパートナーズにおける主な検討事項は下記のとおり。
・ビジョン・ロードマップ
2030年・2050年を見据えた日本全体のサーキュラーエコノミー実現に向けたビジョンや中長期ロードマップの策定。各製品・各素材別のビジョンや中長期ロードマップ策定も目指す
・サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォーム
2025年を目途にサーキュラーエコノミーを促進させるデータ流通の仕組み「サーキュラーエコノミー情報流通プラットフォーム」を立ち上げることを目指す
・地域循環モデル
自治体におけるサーキュラーエコノミーの取り組みを加速し、各地域の経済圏における特徴に応じた「地域循環モデル(循環経済産業の立地や広域的な資源ネットワークの構築等)」を目指す
・その他
標準化、マーケティング、プロモーション、国際連携、技術検討等
岸田首相は同日の立ち上げイベントにビデオメッセージを寄せ、「日本の強みであるリサイクル技術などを活用した地域の創意工夫が重要だ。言わば新しい地産地消として、世界に発信できる経済モデルとなりうる可能性を秘めている」と述べ、来夏に取りまとめる循環型社会形成推進基本計画において、サーキュラーエコノミー政策を中長期的に重要な柱として位置付けることを改めて表明した。
サーキュラーパートナーズ、3つの着目点
サーキュラーパートナーズには、見方によりさまざまな観点があるが、筆者は次の3点に着目する。
1. サーキュラーエコノミーが生み出す新たな価値を共同で創出できるか
大量生産・消費・廃棄からの脱却に向け、関係主体が連携してサーキュラーエコノミーによって資源に新たな価値を付与できるかが問われる。これには「成長志向型の資源自律経済戦略」でも示されているとおり、サービス化やセカンダリー利用、資源と情報の一体化措置等を組み合わせることが重要だ。リニアエコノミーならびにリサイクルを中心とした経済からサーキュラーエコノミーへ移行するため、3Rからさらに多様な「R」の活用と意識的なビジネスモデル変革等により、循環価値なるものを共同で創出できるか、経済産業省が主導するパートナーシップの意味合いは大きい。
2. 各主体が先を見通せるロードマップと評価軸
確固たるビジョンや実効性あるロードマップの策定と、これらの上位概念と一貫性をもたせた各種政策や支援策を策定するためのパートナーシップとなるかが問われる。EUではサーキュラーエコノミーアクションプランのもと、これと整合したハード・ソフトを組み合わせた政策や支援策をスピーディーに講じている。日本でも2020年5月公表の「循環経済ビジョン2020」や2023年3月策定の「成長志向型の資源自律経済戦略」が大きな方向性を定めている。今後、確固たるビジョンと予見性の高いロードマップを示すことで、各主体が現状はコストではあるが将来へ投資と認識できる状況を生み出し、再生材市場等の各種循環市場を一気に創出することにつながる。同様に、これらを評価するための循環度・循環性(サーキュラリティ)をどう担保するのか。持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)のCircularity Transition Indicatorsや開発中のISO59020等海外で進められている評価軸との兌換性も担保しつつ、掘り下げていく必要がある。
3. 新しい地域の社会経済モデル創出
岸田首相も「新しい地産地消」と表現しているとおり、地域資源を持続的に活用することやループを小さくするサーキュラーエコノミーと地域課題解決との親和性は高い。サーキュラーエコノミーは地域の諸問題の解決に向けて、さまざまあるツールの一つとして有効に機能しうる。これらは特に欧州等でさかんなサーキュラーシティ政策を見ても明らかである。サーキュラーパートナーズではそのための地域循環モデルを検討事項の一つとして位置づけているが、廃棄物管理・リサイクルの掘り下げにとどまらない、経済のあり方自体の探索を含めた新しい地域の社会経済創出の視点を持つことが求められている。