株式会社乃村工藝社は、JR東海グループの東京ステーション開発株式会社による、東海道新幹線700系車両(以下、700系新幹線)のアルミニウムを建材化し、東京駅八重洲北口コンコースおよび専門店街「東京ギフトパレット」の内装材としてアップサイクルするプロジェクトに参画した。

700系新幹線の高品質を維持し混合物を含めない再生アルミニウムとして商業空間の装飾に使用することは、1964年の新幹線運用開始以来初めての取り組みで、一般社団法人日本アルミニウム協会の開発賞を受賞した。乃村工藝社は、建材化の開発段階から携わり、内装工事における制作・施工プロデュースおよびプロジェクトマネジメントを担当した。

再生アルミニウムは、東京ギフトパレットの桜の花びらをイメージした柱・天井やのれんをイメージしたファサード、商品ケースの骨組み材などに使用され、ターミナル駅にふさわしい装飾が施された。従来の脱酸材への再生利用から、700系新幹線ならではの高品質と上質感を活かし、人びとの想いをつなぐ付加価値の高い空間装飾に生まれ変わった。

桜の花びらをイメージした柱・天井

のれんをイメージしたファサード

商品ケースの骨組み材にも再生アルミニウムを使用

東京ギフトパレットの運営者である東京ステーション開発が今回使用したのは、2019年3月に東海道新幹線から引退した700系新幹線で、建築基準法にも適合した高品質なアルミニウム合金で製造され、環境に配慮した塗料を使用するなど汚染物質が含まれていない車両だ。日本では、アルミニウムの廃棄物の大半は不純物が多いまま鋳物やダイカストなどに再利用されており、700系も何重にも施された塗装や防音材などの付着物の除去が難しいため、リサイクル後は主に鉄を熔解する際に必要な脱酸材として利用されてきた。

工業製品において、不純物が少なく高品質なアルミニウムの再生利用は前例がないため、非常に難度が高いプロジェクトだったが、今回東京ステーション開発を中心とした国内企業による経験と技術により、新たな付着物除去方法を研究、確立した。700系新幹線のアルミニウムは、品質を保ったまま付着物が除去された建材として活用することが可能になった。

乃村工藝社は建材化・装飾化における制作上のアドバイスも行い、アップサイクルのプロジェクトにおいても高品質・安全性を担保しつつ、デザインの具現化に導いた。東京ステーション開発が目指す環境保全や建築費削減による事業性の向上だけでなく、東京駅における日本のものづくり文化の発信にも注力している。今後も乃村工藝社は、社会課題を解決する技術と品質の向上に取り組み、顧客の企業価値向上と持続可能な社会に貢献できる空間づくりに挑戦していくと述べている。

【プレスリリース】乃村工藝社、東海道新幹線700系車体アルミニウムのアップサイクルによる空間装飾に参画