ダイキン工業株式会社はこのほど、冷媒循環のデジタルプラットフォーム構築に向け、システム開発の実証実験を開始した。

同実証実験では、日本アイ・ビー・エム株式会社のブロックチェーン技術を活用し、冷媒の製造から回収・再生・破壊までの循環サイクル全体の情報を管理できるデジタルプラットフォームの構築を目指す。これにより、使用される冷媒の量・来歴・品質の透明性の担保と再生冷媒の市場流通促進に取り組み、冷媒漏えい防止と排出抑制における数量管理の仕組みを創造したい考えだ。

ダイキン工業株式会社が同実証実施に至った背景は、地球温暖化抑制を目的とするHFC(※)冷媒の生産と消費量の削減に向けた世界的推進と、冷媒管理や廃棄時の冷媒の漏えい防止と回収義務の日本国内における強化などである。加えて、HFC冷媒の生産と消費量の削減に伴い、既存空調機器の保守と維持に必要な冷媒の供給不足も想定され、回収冷媒の再生量を増やすことが求められていると同社は認識している。回収冷媒の再生量を増やすことは、冷媒の安定供給と資源循環移行に寄与できるとしている。冷媒の回収・再生率向上には、ステークホルダーが協力して各組織が保有する情報をつないで一元管理するシステムが必須であるとダイキン工業株式会社は考えている。

実証実験は、すでに設置されている空調機器の入替と維持において回収される冷媒を再生する取り組みから開始する予定だ。以下のステークホルダーと共同で再生冷媒を試験的に流通させ、開発したデジタルプラットフォーム上で管理する。ステークホルダーは、北九州市環境局・住友不動産株式会社・株式会社竹中工務店・阿部化学株式会社・アオホンケミカルジャパン株式会社・株式会社環境総研・株式会社クリエイトだ。各組織の役割は以下のとおり。

冷媒の再資源化促進

  • 北九州市環境局:自治体におけるサーキュラーエコノミー検討の立場で協力する。冷媒の保管情報・回収・再生冷媒の利用案件を提供
  • 住友不動産株式会社:空調機器所有者としての立場で協力する。冷媒の保管情報・回収・再生冷媒の利用案件を提供
  • 株式会社竹中工務店:空調設備の設計・施工の立場で、空調機器の撤去・廃棄案件での実作業・業務工程の検証において協力する。冷媒の保管情報と冷媒回収の実証案件を提供
  • 阿部化学株式会社・アオホンケミカルジャパン株式会社・株式会社環境総研・株式会社クリエイト:冷媒の再生メーカーの立場で協力する。空調機器撤去時の冷媒回収から再生まで、およびダイキン工業株式会社への再生冷媒の輸送工程の検証・品質検査データを提供

デジタルプラットフォーム開発

  • 日本アイ・ビー・エム株式会社:デジタルプラットフォームのシステム開発支援

ダイキン工業株式会社は同プラットフォーム開発と並行して、回収・再生工程の可視化に向け、業務管理ソフトをベンチャー企業と共同開発している。同ソフトは、これまでダイキン工業株式会社が提供してきた冷媒漏えい検知機能搭載の空調機器や、フロン排出抑制法の点検・維持サービスなどとの連携により、冷媒充填時や機器の使用期間中に情報を管理できるようになるとしている。これにより、国内の「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」におけるステークホルダーの法的義務にかかる工数とコスト面の負荷を軽減できるとしている。

今後、ダイキン工業株式会社は同プラットフォームをオープンプラットフォームとして公開し、冷媒の漏えい防止・回収・再生率の向上と生産および消費量の段階的削減に貢献していきたい考えだ。

温室効果の大きい冷媒ガスのHFCの生産・消費量削減および漏えい防止や回収・再生率の向上に向けて、多くのステークホルダーと共に展開するダイキン工業株式会社のデジタルプラットフォーム実証実験の今後の展開が注目される。

HFC:冷媒ガスである代替フロンで、オゾン層を破壊しないが大きな温室効果がある

【プレスリリース】冷媒循環のデジタルプラットフォームの実証実験を開始
【参照サイト】フロン排出抑制法の概要
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*冒頭の画像の出典:ダイキン工業株式会社