オランダ・アムステルダムに本拠を置くサーキュラエコノミー推進機関のCircle Economyは1月21日、ダボス会議にて最新の「Circularity Gap Report(サーキュラリティ・ギャップ・レポート)」を公表した。
同調査結果によると、世界経済のサーキュラリティ(循環性)は8.6%に留まり、最初のレポートを出した2018年当時の9.1%から後退していることが明らかになった。人類の資源消費量が今年初めて年間1000億トンを超えるなか、資源の再利用は思うように進んでいない現状が浮き彫りになった。Circle Economyは、サーキュラリティが低迷している原因として、世界経済が依然として「採掘・製造・廃棄」をベースとするリニアエコノミーから抜け出せない点を指摘している。
今回、Circle Ecomomyは全ての国が途上国であるとしたうえで、サーキュラリティ・ギャップの解消に向けて世界の国々を経済・社会・環境の3つの視点から「BUILD(建設期)」「GROW(成長期)「SHIFT(転換期)」の3つのカテゴリに分類し、それぞれが取るべき対策についてまとめている。
「BUILD」は、第一次産業を主な収入源とする国々で、アフリカ諸国などが含まれる。他国々と比べて人口一人あたりの資源採掘量は少ないが、資源の再利用も少なく、教育機会や健康などの面で人間らしく生きるための最低限のニーズも満たしていない場合が多い。公共サービス、病院、交通などの基礎的なインフラを立ち上げている段階にあるため、サーキュラー性の高いデザインを用い、戦略的に社会の基礎から組み立てていくことがサーキュラリティ向上に直結する。SHIFTの国々のような負荷や廃棄を生み出すインフラを避け、再利用可能資源からなる建材を優先的に採用することも効果的だとしている。
「GROW」は、製造のハブとして多くの資源を採掘・輸入し、加工して輸出している国々で、中国、ブラジルなどが含まれる。資源消費型の経済成長と第二次産業の拡大が見られ、生活水準の向上と人口増加と共に成長が続くことが見込まれる。これらの国で採掘される大量の資源の約半分は建設資材で、その多くは「SHIFT」の国に輸出され、大量消費を維持するために使われる。消費型の経済成長を脱却しサーキュラリティを向上するためには、新たなインフラ・建造物・消費者向け商品の耐久性を向上させ、使えなくなったら再利用できるデザインにすることが重要となる。廃棄管理の分野で教育・人材育成に投資することで工業・消費それぞれの環境負荷削減を実現できるとしている。
そして「SHIFT」は、一国あたりの資源消費はBUILDの10倍に上り、大量の廃棄物を出している国々で、オランダや日本も含まれる。第三次産業が主にGDPを支えるが、化石燃料を多く採掘・使用しているのもこの国々だ。自国内での大量消費にとどまらず、資源採掘・製造を行い、消費を支えるBUILDやGROWの国々の環境や社会にも多大な負荷をかけている。全世界の採掘や製造に伴う環境負荷を自らの責任と捉え、サステイナブルな税制へと見直し、物質消費からの脱却を目指すことでサーキュラリティ向上を図ることができる。人口は比較的少なく高齢化しているが、特に若年層においてサステイナビリティや気候変動への強い関心が見られ、彼らの世界での活躍が社会的変革を牽引していくとしている。
資源消費が拡大するなか、サーキュラーギャップの解消は世界規模でひっ迫した課題といえる。世界経済がリニアエコノミーから脱却し、サーキュラーエコノミーへの移行を実現するためには、各国がそれぞれの立場で環境や社会に対して責任を持ち、早急に対策を進めることが求められている。
【参考記事】OUR WORLD IS NOW ONLY 8.6% CIRCULAR
【参照レポート】THE CIRCULARITY GAP REPORT 2020