米国サーキュラーエコノミー専門の投資会社Closed Loop Partnersのサーキュラーエコノミーセンターは1月14日、使い捨て容器包装の需要を減らす、耐久性のある再利用可能な容器包装システムの今後の方向性を示す初めてのレポート「Bringing Reusable Packaging Systems to Life」を発表した。レポートでは、同社がNextGenコンソーシアムやIDEOとの協業により実施された、再利用可能なカップの試験運用により得られた考察をまとめている。
世界における廃棄物問題は転換点を迎えている。プラスチック廃棄物は年間1,100万トンが海に流出しているという試算があり、マイクロプラスチックがエベレストの山頂でも発見され、私たちが消費している食品にも含まれるようになった。消費者、規制当局、および擁護団体などからこの現状に対する変化が求められる中、再利用を可能にするソリューションが実現すれば、貴重な原材料の用途を拡大し寿命を延ばすことにつながり、原材料を消費して作られたものを廃棄するリニア型経済から循環型経済へと近づく。
「再利用はプラスチック廃棄物との戦いにおいて重要な手段であり、ブランドや小売業者は廃棄物を削減できる実現可能な方法をこれまで以上に模索しています。再利用可能な包装や容器はほんの始まりに過ぎません。材料を流通させ続けるのための詰め替えや再販、レンタルなどの方法は、あらゆる種類の製品構成と業界を生まれ変わらせることができます。再利用がもたらす未来は明るく、私たちはそれに向けて共に取り組む必要があります。」Closed Loop Partnersサーキュラーエコノミーセンターの業務執行取締役であるKate Daly 氏は述べている。
Closed Loop Partnersは、スターバックスやマクドナルドなどの創設パートナーとともにNextGenコンソーシアムを招集し、ホット用やアイス用、テイクアウト用などから始まった繊維製代替容器の設計と商品化、回収を進めることで、世界の使い捨て食品容器の廃棄物問題に取り組んできた。
NextGenコンソーシアムの尽力により、再利用可能なカップのテストやそのための資金提供が進んでおり、試験運用の範囲は拡大している。
この拡大のためには、多様な利害関係者が関与し、持続可能な原材料や適切な運用場所、適切な支払い方法を選択し、また健康と安全を守るための手順を最適化する必要がある。最終的に、企業も顧客もシームレスで便利な再利用を体験できる状態を目指す。
「カップは、マクドナルドでの顧客体験を象徴する一部であり、店舗における循環型システムを拡大していく重要な入り口です。無駄を減らし、大規模な変化に影響をもたらす有意義な協業や解決に引き続き取り組んでいきます」と、マクドナルドの北米のサプライチェーン最高責任者であるMarion Gross 氏は同社の方針を説明している。
また、IDEOのプロジェクトリーダーであるChris Krohn氏は、次のように述べている。「技術開発や規制当局による圧力、環境に優しい代替品を求める消費者の需要が高まっている今こそ、再利用可能な方法を設計・実装・拡張する絶好の機会だと考えています。 容器を再利用可能にする方法を試験運用し、すべての人に役立つシステムをより適切に設計していきます」
「パンデミックによって使い捨て容器の利用が増加しており、衛生的に再利用できる安全な容器が欠かせなくなりました。NextGenコンソーシアムによる再利用可能なカップの実証実験は、再利用を促進し、無駄を減らすために必要なデータと理解を提供するのに非常に重要です」と、世界自然保護基金(WWF)のプラスチック廃棄物およびビジネス部門の責任者であるErin Simon氏は述べる。
また、「従来の考え方を変え、消費者に再利用というオプションを提供することは、プラスチック汚染を根絶するための私たちの取り組みの一部です。NextGenコンソーシアムなどによって革新的なモデルがテストされている現場を見るのは非常に重要でエキサイティングです」と、Global Plastic Action PartnershipのディレクターであるKristin Hughes氏はこの取り組みに期待を寄せる。
Closed Loop Partnersは、他にも、再利用を可能にするさまざまなアプリケーションへの投資や調査を行っている。再利用可能な仕組みをさらに拡大するためには、継続的な実験・投資・協業が必要であり、同社は、企業や自治体、環境NGOなどバリューチェーン全体のさまざまな利害関係者と協力することによって、その潜在能力を最大限に発揮していくとしている。