DIC株式会社と株式会社エフピコはこのほど、食品トレーの原料であるポリスチレン(PS)について世界初(DIC株式会社調べ)の溶解分離リサイクル技術を用いた協業を開始した。
両社は、ケミカルリサイクル技術を用いてPSの原料であるスチレンモノマーに還元する完全循環型リサイクル実現に向け、2023年の社会実装を目指す。
食品トレーの水平リサイクルを目標とするエフピコグループは、スーパーマーケットなどに設置された約1万の回収拠点から使用済み食品トレーなどを回収・再利用している。食品トレーには用途に応じて白色と色柄付きの2種類があり、一般家庭から排出される使用済みの白色発泡食品トレーは食品トレーに水平リサイクルされている。一方で、色柄付き発泡食品トレーはリサイクルの際に再生ペレットが黒色になってしまうため使途が限られ、ハンガーなど別の日用雑貨品に再生利用されている。
同課題を解決するべく、DIC株式会社は色柄付き発泡食品トレーの新たな溶解分離リサイクル技術(Dic法:Deinking chemical process)を開発した。黒色の再生ペレットから着色成分を除去してPS生産工場に投入する同技術により、色柄付き発泡食品トレーも水平リサイクルが可能になる。
現在、DIC株式会社の四日市工場で同技術に関する工業的検証を進めており、2023年に色柄付き発泡食品トレーなどのポストコンシューマーリサイクル(※)を開始し、ケミカルリサイクル技術との併用を目指すとしている。
発泡ポリスチレンを含む使い捨て容器包装に関しては、EUで使い捨てプラスチック製品禁止指令が発効し、2021年7月からのEU市場への流入禁止が定められた。世界経済フォーラム(WEF)とエレン・マッカーサー財団は、2017年に刊行した報告書「The New Plastics Economy Catalysing action」において、欧州では発泡ポリスチレン製の容器包装は食品・飲料品の持ち帰り用に多く使用されており、食品・飲料品によってひどく汚れていること、ほとんど分別・リサイクルされていないことを指摘していた。一方、日本では発泡ポリスチレン製の食品トレーは他のプラスチックと簡単に識別でき単一素材であることから、回収・リサイクルが進んでいると国内8社が加盟する日本スチレン工業会は見解を示している。
サーキュラーエコノミー移行に向けては、容器包装の削減や環境配慮型の容器包装の設計と選択が第一に求められる。加えて、分別への取り組みが進んでいる日本において、こうした新しいリサイクル技術の開発・実装が、容器包装の水平リサイクルに寄与していくことが期待される。
※ ポストコンシューマーリサイクル:消費者が製品を使用した後に回収してリサイクルすること
【プレスリリース】DICとエフピコ、プラスチック製食品トレーの完全循環型リサイクルに向け世界初の溶解分離リサイクル技術を用いた協業を開始
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*冒頭の画像の出典:DIC株式会社