DOWAエコシステムは6月30日、使用済みリチウムイオン電池からニッケル・コバルト硫酸塩を回収する新たなプロセスを開発し、正極材メーカーへの直接販売に向けた実証試験を開始したと発表した。

同社はこれまで、自社の廃棄物処理設備で安全に処理した使用済みリチウムイオン電池から、正極材の原料となるブラックマスを回収する実績を国内有数の規模で積み上げてきた。回収したブラックマスに含まれるリチウムについては炭酸リチウムとして取り出し、正極材への活用が可能であることをすでに確認していた。

今回新たにブラックマスからニッケル・コバルト硫酸塩を回収するプロセスを開発したことで、リチウムイオン電池に含まれる主要レアメタル3種(リチウム・ニッケル・コバルト)すべての一貫回収が可能になった。新プロセスは、グループ会社のDOWAエレクトロニクスが持つ精製技術と自社のブラックマス回収技術を組み合わせることで確立した。現在特許を申請中だ。回収したニッケル・コバルト硫酸塩は、正極材メーカーへのサンプル供給と性能評価を進めている。

リチウムイオン電池はEVや電子機器、住宅用蓄電池など幅広い分野で普及が拡大しており、脱炭素化の進展に伴って使用済み電池の発生量増加が見込まれている。一方、正極材に不可欠なリチウム・コバルト・ニッケルといったレアメタルは埋蔵・産出が特定国に偏在しており、需要拡大に伴う国際的な獲得競争の激化が懸念されている。天然資源の採掘への依存を減らし、使用済み電池からの回収を確立することが業界共通の課題となっている。こうした状況を受けて、制度面での対応も加速している。

EUが2023年に発効させた欧州電池規則は、リサイクル事業者に対して原材料別の素材回収率目標を課しており、コバルト・ニッケル・銅は2027年末までに90%、2031年末までに95%、リチウムは2027年末までに50%、2031年末までに80%という高い水準が定められている。さらに2031年以降は、EV・産業用電池に対してコバルト16%、リチウム6%、ニッケル6%以上の再生材料含有が義務化される予定で、リサイクル由来素材の市場形成が本格的に始まる。

日本国内でも、2026年4月施行の改正資源有効利用促進法により、モバイルバッテリーやスマートフォン、加熱式たばこが新たに「指定再資源化製品」として法律上の位置づけを得て、メーカーによる回収・再資源化が求められる製品の範囲が広がった。こうした背景のもと、国内非鉄大手各社は精錬能力の整備を急いでいる。

各社もリサイクルの取り組みを進める。住友金属鉱山はリチウムイオン電池換算で年間約1万トンの処理能力を持つリサイクルプラントの建設を進めてきた。JX金属サーキュラーソリューションズも2025年に、90%以上のリチウム回収率を実現する新プロセスを開発し、2026年度下期の稼働開始を目標に敦賀の施設で設備の追加工事を進めている。三菱マテリアルもパイロットプラントでの実証を経て商用プラントの建設を検討している。ブラックマス回収を手がけるスタートアップや専門事業者の参入も相次いでおり、「電池to電池」のクローズドループを目指す動きが産業全体に広がっている。DOWAエコシステムの今回の取り組みも、こうした流れのなかに位置づけられる。

今後は実証プラントの運転安定性と品質の検証を進めながら、正極材メーカーへのサンプル提供を通じた評価を継続する。将来的な増産に向けてプロセスのスケールアップを図るとともに、国内にとどまらずグループの海外拠点への展開も検討する方針だ。

【参照記事】使用済みリチウムイオンバッテリーからのニッケル・コバルト硫酸塩の回収プロセスを開発
【参照記事】Sustainability rules for batteries and waste batteries
【参照記事】経済産業省 改正資源有効利用促進法等の施行について(報告)
【参照記事】住友金属鉱山 リチウムイオン二次電池リサイクルプラントの建設を決定
【参照記事】JX金属サーキュラーソリューションズ 廃車載リチウムイオン電池に含まれるリチウムの高回収率リサイクルプロセスを開発
【参照記事】三菱マテリアル リチウムイオン電池リサイクル技術の確立に向けたパイロットプラントの建設~ブラックマスからのレアメタル精製事業化への次のステップへ~
【参照記事】LIBからの重要鉱物リサイクルの開発状況について(三菱マテリアル株式会社)
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