株式会社サトーと株式会社エンビプロ・ホールディングスは12月4日、使用済みリチウムイオン電池(LIB)のリサイクル過程をデジタル化する実証実験(PoC)の成功を発表した。この取り組みは、LIBの回収から再資源化までのトレーサビリティを確立し、輸送中の温度変化やリサイクル過程の情報をデジタルデータとして収集・可視化するものである。
LIBは、リチウムやニッケル、コバルトといったレアメタルを含むため、再資源化は資源不足解消の鍵となる。また、使用済みLIBの廃棄量増加に伴い、輸送中や処理過程での火災事故が増加している。こうした課題を背景に、両社は回収から再資源化までの処理履歴を確認するためのデータ取得について、実効性と実用性を検証した。
今回のPoCでは、RFID温度ロガータグ「LogBiz-Thermo」を使用し、LIB輸送中の温度や衝撃データを記録。さらに、エンビプロのグループ会社である株式会社VOLTAが手掛ける再資源化工程において、LIBをブラックマスに加工する過程をデジタル化した。このデータはクラウドに蓄積され、エンビプロのトレーサビリティ管理システム「TraceView」を通じて可視化される。
PoCを通して、輸送時の温度データ取得、トレーサビリティの確立、効率的なリサイクルプロセスの検証が行われた。また、個体識別のID管理や社会実装に向けたルール策定、物流・商流の整備といった新たな課題も明らかになった。今後、両社はこれらの知見を基に社会実装を進め、バッテリーパスポートへのデータ連携やLIBのライフサイクル全体の情報一元管理を目指す。
サトーは東京都港区に本社を置き、バーコードやRFIDなどの自動認識技術を活用したソリューションを提供する企業である。また、エンビプロは静岡県富士宮市を拠点とし、リサイクル資源の生産や物流、環境コンサルティングを展開する企業グループであり、特にLIBリサイクル事業に注力している。
【プレスリリース】サトーグループは、あらゆるモノやヒトに情報をひも付け、その動きを可視化することで、現場ごとに最適な課題解決の仕組みを提供する「自動認識ソリューション」の会社です。
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