パナソニック エナジー株式会社は3月31日、住友金属鉱山株式会社と連携し、リチウムイオン電池の正極材原料であるニッケルのクローズドループリサイクルを開始したことを発表した。これは、パナソニックの国内工場で発生する電池廃材からニッケルを回収し、住友金属鉱山の製錬技術を用いて再資源化し、再び同社のリチウムイオン電池の正極材として活用する取り組みである。
クローズドループリサイクルは、使用済み製品を同一製品の原料として再利用する手法で、パナソニック エナジーの車載電池事業においては初の導入となる。電気自動車の普及により2030年頃から使用済み電池の廃棄量が増加すると見込まれるなか、リチウム、コバルト、ニッケルといった希少金属の再利用体制の整備が重要性を増している。
住友金属鉱山は2017年から、使用済みリチウムイオン電池と電池廃材から銅やニッケルを回収・再資源化している。今回の協業では、パナソニック エナジーの住之江工場の廃材を、住友金属鉱山の東予工場・ニッケル工場で硫酸ニッケルとして回収し、それを用いて正極材を製造する。2026年以降には、リチウムやコバルトのリサイクルにも取り組む計画がある。
パナソニック エナジーは、正極材におけるリサイクル材比率を2027年までに20%に引き上げる目標を掲げ、米国Redwood Materials Inc.との協業に加え、国内でのリサイクル体制を拡充していく方針だ。また、本取り組みは都市鉱山の活用を通じ、天然資源の採掘に比べてCO₂排出量を抑える効果があるとされ、2030年度までにカーボンフットプリントを2021年度比で半減するという同社の目標達成にも寄与する狙い。
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