現在EUでは、域内におけるEV用リチウムイオン電池リサイクル能力を拡大する取り組みが活発化している。EU・加盟国政府・民間セクターからの投資が集結し、現在複数の電池リサイクルプロジェクトが進行中だ。

その背景には、EUによる電池生産計画がある。同計画は、EUが掲げるグリーンディール政策下の輸送セクターにおける電化(EV化)および再生エネルギーの推進に伴うリチウムイオン電池需要の大幅な上昇予測に端を発する。これまでEUは、電池の供給を域外へ依存していたが、電池需要の大幅な上昇を前に、供給の安定化と自律を図るため動き出したのである。

加えて電池は、現在EU政策の中核をなす循環型経済行動計画のもとで優先的に循環性が推進される製品の一つでもある。2017年から始まったEUの電池生産計画では、電池のバリューチェーン全体に焦点が当てられ、原材料、電池セル・部品、再利用・リサイクルなどが段階的に進められている。先行するセル生産計画が順調に進展しているなか、現在進行するのが電池リサイクル能力の拡大計画である。ここでは、EUで推進されるリチウムイオンリサイクルに関する動向をレポートする。

EUにおける電池リサイクルの現状

電池生産計画以前の欧州における電池リサイクル能力は全般的に低く、なかでもリチウムイオン電池については、わずか5%以下と見積もられていた(2020年の資料)。リチウムイオン電池の数が限られていること、処理技術が複雑なこと、経済性の確保が難しいことなどから、リサイクル業者にとってインセンティブが低く、投資誘致が難しい状況であった。だが、EU政策・規制の牽引により、EV普及→EV用電池の需要上昇→電池原料の確保の必要性→リサイクルによる原料確保というマッピングが形成され、リサイクル事業への参入・投資に対するインセンティブが大幅に向上した。また、域内の電池セルメーカーが増加することで、将来的にEV電池が使用済みとなる前にリサイクル能力を拡大するインセンティブも生まれている。

このような背景から、欧州市場では電池リサイクルにおける大きな事業機会が拡大しており、金属処理、化学、電力から自動車メーカーまで、多様なセクターからの市場参入が見られる。もし現在までに電池リサイクル市場に新規参入している企業プロジェクトが全て成功し、処理施設が予定通り商業規模で稼働すれば、将来的には欧州域内で15万トン(年間)の処理が可能となる見込みだ。では、次に参入企業について見ていく。

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