シンクタンクのCEPS(欧州政策研究センター、本拠ベルギー)はこのほど、EUにおける廃木材の循環性向上についての論文を発表した。

論文名は「IMPROVING WASTE WOOD CIRCULARITY IN THE EU: CLASSIFICATION FRAMEWORKS AND POLICY OPTIONS(EUにおける廃木材の循環性向上:分類枠組みと政策オプション)」だ。EUが資金提供するWood2Woodプロジェクトの一環として、既存の廃木材処理方法に関する机上調査と専門家の見解をもとに作成された。

Wood2Woodプロジェクトの実施期間は2024年1月から2027年12月まで。プロジェクトの目的は、廃木材を持続可能な資源として活用し、EUの木材製品に対する需要の高まりに対応しながら、森林破壊・生物多様性喪失・原木伐採に関連する排出に対処することだ。

論文は、循環経済を推進し、特に建設廃材と自治体の家具廃材の利用における課題を支援政策を通じて克服する機会を探る。論文の概要は、下記のとおり。

木材は再生可能資源として重要であることから、廃木材の効率的な利用はEUのビジョン「気候中立で持続可能かつ競争力のある経済」に沿っている。加盟国間において、廃木材への取り組みにばらつきがある。効率的な廃木材処理技術と廃木材市場の欠如、および調和のとれた廃木材規制枠組みの欠如など、廃木材利用に関する技術・市場・政策上の課題も多い。こうした課題に対処するべく、EUにおける廃木材利用改善について以下2点を提言する。

1つ目は、加盟国の既存の廃木材分類制度を活用し廃棄物ヒエラルキーを反映させて、化学的品質基準に基づく統一された廃木材分類制度を整備することだ。

2つ目は、EUレベルで廃木材の価値化を支援する政策オプションを検討すること。廃木材利用に関する技術・市場・政策上の課題を克服するべく、政策オプションには以下を含めることを推奨する。

  • 情報不足に対処しEU全域で廃木材の流通を促進するべく、報告・文書化・ラベル表示の義務を拡大する
  • 廃棄物ヒエラルキーを適切に反映させるべく、材料回収目標を既存の再生可能エネルギー目標と一致させるよう目標を精緻化する
  • 高品質の木材リサイクルを支援するべく、全部門で木材分別回収義務を拡大する
  • 廃木材の利用準備段階の回収・リバースロジスティクス・選別・除染・処理などを奨励するべく、拡大生産者責任(EPR)を強化する
  • 廃木材の埋立禁止など、限定的な禁止措置を導入する
  • 部門間での廃木材の処理・使用方法に関するガイダンスと基準を策定する
  • 材料回収のインセンティブを確立し、廃木材利用に関する研究開発を支援する
  • ライフサイクル全体のトレーサビリティと情報の入手可能性を向上させるべく、条件付き市場アクセスやデジタル製品パスポートなどのエコデザインツールを通じてライフサイクルの視点を強化する

EUでは、廃木材を含む建設廃材は全廃棄物量の約4割を占める。現在、廃木材の建設業界における循環や木質バイオマスへの利用など、循環性向上に向けたさまざまな取り組みが進められている。

【参照記事】Improving waste wood circularity in the EU: classification frameworks and policy options
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