日本製鉄株式会社はこのほど、北海道 ・宮城県・三重県の6つの漁業協同組合と協業して、同社が開発した「ビバリー®ユニット(鉄鋼スラグと廃木材チップを発酵させた腐植土を原料とした鉄分施肥材)」の新たな設置試験を開始した。

鉄鋼スラグは鉄の製造時の副産物で、海藻が必要とする鉄分を含んでいる。この鉄分を海水に溶かすのが間伐材を原料とする腐植土で、ビバリー®ユニットは森から海に供給される鉄分を人工的に生成する循環型の鉄鋼スラグ製品である。

豊かな海を取り戻すことを目的として、同社は2004年から全国の沿岸38カ所にビバリー®ユニットを提供し、海藻藻場の造成に取り組んできた。これまでに、多くの「ビバリー®ユニット」適用海域で藻場が再生・回復し、漁獲高が向上したことが報告されているとしている。

同藻場造成事業において、国土交通省認可の技術研究組合であるジャパンブルーエコノミー技術研究組合が運営する「Jブルークレジット®」は、2018~2022年に吸収・固定化されたCO2量(ブルーカーボン※)として49.5トンを認証し、クレジットを発行した。

こうしたことを受け、さらなる藻場の再生・回復、および生物多様性保全と地球温暖化防止に貢献するべく、同試験の開始に至った。

日本における藻場の現状について、同社は以下の見解を示した。かつて日本の沿岸海域では、コンブなどの海藻が生い茂る藻場が広がっていたが、過去数十年間、海の砂漠化「磯焼け」が全国で進み藻場が大幅に減少した。磯焼けは、鉄分などの栄養塩の不足も原因の一つとされている。加えて、ブルーカーボン効果が近年明らかにされてきており、藻場の回復・造成が新たな地球温暖化防止対策として大きな潜在効果を持っていることが注目されている。

日本製鉄株式会社は、今回設置する海域における藻場造成の効果を2023年5月に確認する予定。ビバリー®ユニット設置前後の海水中の鉄分濃度の変化と海藻の成長についても、継続的に状況を調査して基礎データを集積し、実海域でブルーカーボンの効果を検証していく意向だ。

※ ブルーカーボン:海洋生態系によるCO2の吸収・固定

【プレスリリース】鉄鋼スラグを活用した藻場再生「海の森プロジェクト」、新たに6カ所で試験開始CO2の吸収・固定が期待されるブルーカーボン効果も検証
【関連記事】海洋保全が気候変動対策に貢献。フランス国立科学研究センターらの報告
【関連記事】欧州委、EUにおける持続可能なブルーエコノミーの新アプローチを提案
【関連記事】丸紅と日本クルベジ協会、バイオ炭の農地施用によるJ-クレジットを共同販売
【関連記事】【アーカイブ動画購入可能】サーキュラーエコノミーで環境再生をどう実現する?~森と里山の実践に学ぶ~
*冒頭の画像の出典:日本製鉄株式会社