栄養・健康・サステナブルな暮らしの分野で事業展開する蘭総合化学のRoyal DSM(以下、DSM)はこのほど、ルクセンブルクに本拠を置くリサイクル技術開発Clariterとの提携を発表した。両社は、DSMの超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維「Dyneema(以下、ダイニーマ)」を使用した製品の次世代型ケミカルリサイクルソリューションを共同で追求していく。

この取り組みの第一段階として、ポーランドにあるClariterのパイロットプラントにおいて、ダイニーマを原材料としたロープ・ネット・防弾素材などのサンプル製品の再資源化を成功させた。DSMは、これによりダイニーマのリサイクル性が実証され、サステナブルな世界を目指す蘭化学繊維製造のDSM Protective Materials(以下、DSMプロテクティブマテリアルズ)のコミットメントが明確に示されたとしている。

DSMプロテクティブマテリアルズは、DSMが掲げるサステナビリティ目標の達成に向けて、生物由来ダイニーマの製品化に続き、ダイニーマ由来の使用済み製品の再利用とリサイクルソリューションを積極的に推進している。技術的なリサイクルソリューションを推進するために、DSMプロテクティブマテリアルズとClariterは提携し、Clariterのケミカルリサイクルプロセスにおいてダイニーマを原材料として利用することを目的として、実験を行った。同実験では、ポーランドにあるClariterのパイロットプラントにおいて、ダイニーマを原材料としたサンプル製品が使用された。その結果、Clariterが特許を取得した3段階から成る同プロセスを通じて、ダイニーマ由来の最終製品を高付加価値かつ産業用グレードのオイル・ワックス・溶剤などに変えることが技術的に可能であるという結果が得られた。さらに、それらは最終製品や消費者向け製品を製造する材料として利用できる。

今後、DSMプロテクティブマテリアルズとClariterは、よりサステナブルな世界を目指し、ケミカルリサイクルソリューションに向けた取り組みを推進していく。具体的には、実験室規模での試験の成功を基本に、Clariterは2021年に南アフリカの施設で商業規模の試験を実施する予定だ。近い将来、欧州に建設する大規模プラントにおける、ダイニーマ由来原材料の利用を目指している。また、DSMは全製品のライフサイクルにおいて、ダイニーマによる環境負荷を低減する可能性を引き続き模索していく意向だ。

南アフリカ・イーストロンドンにあるClariterの産業用プラント(出典:DSM株式会社)

Clariterの最高執行責任者であるPetra Koselka氏は、「次世代の循環ソリューションの可能性を広げていくには、DSMが兼ね備えている勇気・先見性・粘り強さが欠かせません。物流の課題として挙げられる、何トンにも及ぶロープ・ネット・防弾素材の回収は非常に困難な仕事ですが、経済合理性のある手段が見いだせれば次の目標にも手が届きます。当社が『エキサイティングエキゾチック』と称してきたものに関する研究開発をDSMとともに実施でき、嬉しく思っています。当社は将来的に、欧州に建設予定の大規模プラントでダイニーマを原材料として利用することを目指しています」と述べている。

DSMプロテクティブマテリアルズの社長であるRoeland Polet氏は、「生物由来のダイニーマの製品化に続く今回の成果は、循環型経済を目指す当社において重要な一歩です。リサイクル性は、当社・お客様・社会全体にとってカギであり、その実現にはバリューチェーン全体にわたる取り組みが必須です。実現を目指し、引き続きClariterとの提携を強固にしつつ、すべての人々の生活を豊かにするという当社の使命を果たすべく、科学に裏付けられた当社の知見や知識を活かしていきます」と語っている。

【プレスリリース】DSM、Clariterと提携しDyneema®(ダイニーマ®)をベースとした最終製品のケミカルリサイクルソリューションを追求
【プレスリリース】DSM and Clariter partner to pursue chemical recycling solution for Dyneema®-based end-products
【参照サイト】DSMが、バイオベースのDyneema®(ダイニーマ®)生産のため、SABIC およびUPM バイオ燃料とのパートナーシップを発表