政府は、サーキュラーエコノミーを推進するための指針となる「循環経済への国家戦略」改定を進めている。環境省では6月10日、中央環境審議会循環型社会部会の55回目の会合が開かれ、第五次循環型社会形成推進基本計画(案)について検討を行った。今夏の改定を目指す。

循環型社会形成推進基本計画は、約5年ごとに見直しが行われている。同計画案は2023年5月、環境大臣から中央環境審議会に対して循環型社会形成推進基本計画の見直しについて諮問がなされ、同審議会循環型社会部会で審議が開始された。

第四次循環基本計画(2018年6月閣議決定)策定以降、食品ロスの削減を推進するため食品ロスの削減の推進に関する法が2019年10月に、プラスチック使用製品の設計から廃棄物の処理に至るまでのライフサイクル全体で資源循環の取組を促進するプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)が2022年4月に施行された。また中央環境審議会では、温室効果ガスの排出削減にも資する3R+Renewableを推進しサーキュラーエコノミーへの移行を加速するための「循環経済工程表」が取りまとめられた。

2023年には、経済産業省が資源制約・環境制約に対応して資源循環システムの自律化・強靱化と国際市場獲得を目指す「成長志向型の資源自律経済戦略」を公表。こうした取組により、資源生産性、入口側の循環利用率が向上し、最終処分量は減少したという。その一方で、近年は資源生産性・循環利用率ともに横ばい。循環経済への移行に向けて、より一層取り組みを強化する必要があるとしている。

第五次計画案は、2030年度までに取り組むべき施策を示す「循環経済への国家戦略」と位置づけられている。内容は(1)我が国の現状・課題と、解決に向けた道筋(循環経済先進国としての国家戦略)、(2)循環型社会形成に向けた取組の中長期的な方向性、(3)目指すべき循環型社会の将来像、(4)各主体の連携と役割、(5)国の取り組み、(6)循環型社会形成のための指標及び数値目標、(7)計画の効果的実施について。

計画案では、循環型社会の全体像を把握し向上を図るための物質フロー指標として、従来の循環基本計画に引き続き「資源生産性」「循環利用率」「最終処分量」を指標とする考え。2030年度を目標年次に、以下の数値目標を掲げる予定。

  • 資源生産性:約60万円/トン
  • 一人当たり天然資源消費量:約11トン/人・年
  • 再生可能資源及び循環資源の投入割合:約34%
  • 入口側の循環利用率:約19%
  • 出口側の循環利用率:約44%
  • 最終処分量:約1,100万トン/年

また物質フロー指標だけでは表せない、循環型社会づくりに関する取り組みの進捗度合いを評価する指標として、「循環型社会ビジネスの市場規模」「循環型社会形成に関する国民の意識・行動」「循環経済への移行に関わる部門由来の温室効果ガス排出量」「カーボンフットプリントを除いたエコロジカルフットプリント」が設定される見込み。

「循環型社会ビジネスの市場規模」は、2030年までに現在の約50兆円から80兆円以上にすることを目指す。「循環型社会形成に関する国民の意識・行動」はアンケート調査を実施し評価する予定。

また、新たな数値目標として、1人1日あたりのごみ焼却量を追加。2030年度までに約580グラムに削減することを目指す(2020年度は約700グラム)。

【プレスリリース】中央環境審議会循環型社会部会(第55回)議事次第・資料
【プレスリリース】循環型社会形成推進基本計画(案)~循環経済への国家戦略~
【参照記事】再生可能な原料34%に 30年度政府目標 循環経済を構築
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