建設コンサルタント大手の日本工営は12月22日、「量子コンピュータ×AI」サービスの株式会社グルーヴノーツと福岡市と共同で、福岡市の姉妹都市であるミャンマー連邦共和国(以下、ミャンマー)ヤンゴン市において、量子コンピューティング技術などを活用した最適な都市交通と環境づくりに向けた「グリーンリカバリー促進事業」を開始することを発表した。同事業は、環境省の「令和2年度 脱炭素社会実現のための都市間連携事業」に採択された。

日本工営は世界各国の社会資本整備を通じて、より快適なまちづくり・自然と共生する環境づくりを推進している。グルーヴノーツは、量子コンピューティング技術を活用した世界初の商用ソリューションとして、クラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」の開発を行うテクノロジーカンパニーだ。同社は、街を舞台にビッグデータや AI、量子コンピュータを駆使して快適で豊かな都市サービスを創出する「City as a Service(シティ・アズ・ア・サービス、CaaS)」を推進している。

今回、日本工営はグルーヴノーツのCity as a Serviceに賛同し、両社が培ってきた技術やノウハウを共有・連携していくことで、国際社会において極めて重要な課題である脱炭素社会の実現に貢献する。その取り組みとして、ミャンマー・ヤンゴン市で廃棄物分野のODA事業を行っている福岡市による検討内容への助言や現地活動への支援のもと、ヤンゴン市でCO2排出量削減を目指し、「グリーンリカバリー促進事業」を実施する。

ミャンマーは、経済成長率が6%台とアジア諸国の中でも高い伸びを示しているが、ヤンゴン市の廃棄物収集量は年々増加しており、2016年には2011年から1.7倍増え、85万トンを超えた。また、廃棄物収集運搬業務が非効率的に行われており、深刻な廃棄物問題が生じている。

こうした廃棄物問題に対し、日本工営とグルーヴノーツが取り組む「グリーンリカバリー促進事業」では、安全性・エネルギー効率・社会環境保全を視野に入れて、都市レベルの廃棄物戦略の策定、および量子コンピューティング技術や AI 技術を活用して収集運搬システムの整備を目指す。グルーヴノーツのMAGELLAN BLOCKSは、量子コンピューティング技術の中で「イジングマシン」(または、量子アニーリング)といわれる新技術を搭載している。これは、物理法則の原理を利用して、条件をすべて満たしたうえで対象が最も大きくなる・小さくなる答えを高速に導き出すことに長けた計算技術である。

廃棄物収集運搬業務においては、「収集作業員数を増やさず、規定の労働時間も超過させずに、一日の収集量を増やしたい」「すべての収集車の積載率を最大化して、遠い処分場までの往復回数を少なくしたい」「回収が必要なオフィスビルだけを最短ルートで回りたい」といった課題が挙げられる。MAGELLAN BLOCKSを活用すると、最も良いシフトや作業計画、運搬経路の作成などを容易かつ高速に行うことが可能になる。両社は、これを最適な人材配置、業務効率と運搬効率、および生産性の向上の実現により、燃料消費とCO2削減につなげていく考えだ。

廃棄物管理業務の効率化イメージ(出典:日本工営、グルーヴノーツ)

グルーヴノーツが海外で都市活動の最適化に取り組むのは今回が初めてとなり、海外での業務経験とネットワークが豊富な日本工営の支援のもと、今後「グリーンリカバリー促進事業」においてさまざまな施策の検討・推進を図り、ミャンマーのスマートシティ化や産業発展に寄与していく意向だ。同社は、他都市や他分野においても強固な協力関係を構築しながら、さまざまな社会課題の解決に向けた取り組みを展開し、持続可能な社会の発展に貢献していきたいとしている。

福岡市の髙島宗一郎市長は、「福岡発のサービス・技術を使って、都市全体の最適化を図り、ヤンゴンの方々の課題解決につなげることは非常に誇らしいことです。特にグルーヴノーツは、福岡を代表するスタートアップで、量子コンピュータの商用ソリューション化という、他にはないサービスを展開し、多くの成果を出していると思います。次に続くスタートアップのチャレンジャーたちにとっても大きな後押しになるでしょう。福岡市として、本プロジェクトをしっかりとサポートし、一緒に成功させることができればと思っています」と述べている。

【プレスリリース】日本工営とグルーヴノーツ ミャンマー・ヤンゴン市で量子コンピュータを活用して 最適な都市交通と環境づくりに向けた「グリーンリカバリー促進事業」を開始

*冒頭の写真の出典:グルーブノーツ