廃棄物の再資源化を促進する法律「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律(再資源化事業高度化法)」が5月22日、参院本会議で可決、成立した。廃棄物処理業は従来、自治体ごとに認可が必要だった。しかし同法によって、高度な技術を活用したリサイクル事業計画として国に認められることで、処理事業者は全国で事業を展開しやすくなる。高度な廃棄物処理を担う事業者として、AIによる廃棄物の選別や、ペットボトルからペットボトルを作る水平リサイクル、使用済み紙おむつの再利用、太陽光パネルのリサイクルなどが対象となる。

同法は、温室効果ガス排出量削減効果の高い資源循環を促すため、効率的かつ高度な再資源化の実施を目指すもの。製造業者が求める質・量の再生材を安定的に供給し資源自給率の向上と資源循環の効率化を促すこと、廃棄物の分離・回収技術を高度化し産業競争力を強化すること、温室効果ガス排出量の削減が推進されることなどが目的だ。

再資源化のために廃棄物の収集・運搬・処分に関わる事業者や、高度な技術を用いて廃棄物の分離・回収を行う事業者、そして再資源化工程の高度化に取り組む事業者が、再資源化事業に関する計画を作成し環境大臣の認定を受けることで、それぞれの事業計画に沿った再資源化事業の実施や廃棄物処理施設・設備の設置や導入をできるようになる。廃棄物処理法上求められる自治体別の許可に代わり、国による一括認定を受けることで、迅速に対応できるようになるという。

同法において環境大臣は、再資源化等の高度化を図るため廃棄物処分業者の判断の基準となるべき事項を定める。特定産業廃棄物処分業者(産業廃棄物処分業者のうち、年間の処分量が政令で定める要件に該当する廃棄物処分業者)の再資源化の実施の状況がそれと照らし再資源化の取組が著しく不十分なものは、必要な措置を取るべき旨の勧告ができる。

特定産業廃棄物処分業者は、毎年度、処分した産業廃棄物の数量や再資源化を実施した数量を環境大臣に報告することを求められている。国が廃棄物・再資源化に関するデータを集約することで、資源循環の情報基盤を整備。製造業者と廃棄物・リサイクル業者とのマッチング機会を創出する狙いだ。

環境省は、「資源循環はカーボンニュートラルのみならず、経済安全保障や地方創生など、あらゆる分野での社会課題解決につながる。欧州を中心に世界では再生材の利用を求める動きが拡大しており、わが国も対応が遅れると成長機会を失う可能性が高く、資源循環の産業競争力強化が急務だ」として法案を策定、関係省庁との調整を進めてきた。2024年3月15日に閣議決定され、国会成立を目指し審議されていた。

今後、関係省庁、地方自治体、企業が連携し、再資源化に関する事業計画の作成、人材の育成、生活者の理解醸成のための取り組みが加速することが期待される。

【プレスリリース】資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律案の閣議決定について
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【参照記事】環境省における資源循環に向けた取組(再資源化事業等高度化法案)について
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