環境省は6月6日、「令和7年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」が閣議決定されたことを受け、同白書を公表した。今回の白書のテーマは「『新たな成長』を導く持続可能な生産と消費を実現するグリーンな経済システムの構築」だ。

同省は、気候変動、生物多様性の損失、深刻な環境汚染といった複合的な環境危機を克服し、環境がもたらす恵みを将来世代へ引き継ぐためには、現在の経済社会をネット・ゼロ、循環型、ネイチャーポジティブが統合されたものへと大胆に変革する必要があるとの認識を示している。

2023年5月に閣議決定された第六次環境基本計画では、環境政策が目指すべき社会の姿として「循環共生型社会」の構築を掲げ、現在のみならず将来にわたり「ウェルビーイング/高い生活の質」をもたらす「新たな成長」の実現を目指す方針が打ち出された。

今回の白書は、この「新たな成長」を導くグリーンな経済システムの構築をテーマに、昨今の環境状況や施策等を概説している。白書の主なポイントは以下の通りだ。

第1章では、国内外の気象災害や環境問題による経済的影響を考察し、日本の地球温暖化対策の方向性を示す。また、近年拡大するサステナブルファイナンスや企業の環境情報開示といった、「新たな成長」を導く経済活動の取り組みや、環境とビジネスの動向について解説している。特に、線形経済から循環経済への移行や、持続可能なバリューチェーンの構築といった、サーキュラーエコノミーへの移行を支える経済活動が取り上げられている。

第2章では、気候変動、生物多様性の損失、汚染という相互に関連する3つの世界的危機に対し、最新の動向や施策を紹介。循環経済、自然再興、炭素中立といった政策の統合とシナジーを図ることの重要性を強調している。第五次循環型社会形成推進基本計画や、資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律など、循環型社会の形成に向けた具体的な取り組みも紹介されている。

第3章では、第六次環境基本計画で環境・経済・社会の統合的向上の実践・実装の場と位置付けられた「地域循環共生圏」のさらなる発展を目指すとともに、人々の暮らしを環境をきっかけに豊かさやウェルビーイングにつなげる取り組みを紹介している。

第4章では、東日本大震災や原発事故、能登半島地震の被災地の環境再生の取り組みの進捗や、復興の新たなステージに向けた未来志向の取り組みを紹介している。

白書は環境省ウェブサイトでPDFデータが公開されており、7月上旬以降にはHTML形式のデータも掲載予定だ。冊子版は政府刊行物センター等で購入可能で、電子書籍版も7月中下旬に無料配信される予定。環境省は今後、「白書を読む会」の開催や英語版の公開も予定している。

【プレスリリース】令和7年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の公表について
【白書】令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(PDF版)
【関連記事】環境省、第60回循環型社会部会6月10日開催。第五次循環型社会形成推進基本計画の評価・点検の進め方を議論
【関連記事】循環型社会形成推進基本計画、今夏改定へ。循環経済への国家戦略
【関連記事】環境省、新たな循環型社会形成推進基本計画の策定のための具体的な指針案を公表
【関連記事】環境省、循環経済工程表を策定。9つの方向性を提示