欧州リサイクル産業連盟(EuRIC)と欧州廃棄物管理協会(FEAD)は15日、自動車産業の循環移行には明確な規制枠組みが不可欠であるとする声明を発表した。
特に、使用済み自動車規則案(ELV規則案) はリサイクルと循環性の向上、およびEUの競争力強化に向けた大きな機会であり、公正かつ透明な実務を促進しリサイクル材の利用拡大を支える方策を導入すべきだと主張する。EuRICとFEADは政策立案者に対し、以下を求める。
- メーカーと生産者責任管理組織(PRO)の活動を監視する独立した監督機関を設立する
- 拡大生産者責任(EPR)制度だけでは不十分であるため、すでにEPRが導入されている場合も、すべてのリサイクルバリューチェーンがガバナンスに参画する
- メーカーは使用済み自動車の解体および処理に関わる費用を全額負担し、回収された部品と材料の所有権はリサイクル業者が保持する
自動車産業の真の循環移行には、高品質なリサイクルへの投資と循環性向上に向けたリサイクル材の普及が重要だとし、EuRICとFEADは下記を要求する。
- 欧州委員会の提案通り、使用済み自動車由来のプラスチックリサイクル材25%使用義務を維持すること。同目標は現実的かつ検証済みであり、目標の有効性を大きく損なう可能性のあるプレコンシューマー材料と生物由来プラスチックは対象外とする
- 自動車用鋼材のリサイクル材含有率目標を義務付け、使用済み自動車由来の鋼の品質向上と投資を促進する
EuRICとFEADは、自動車メーカーとACEA(欧州自動車工業会)に対する欧州委員会の決定も循環移行に向けた変革の必要性を示しているとみている。欧州委員会は4月1日、使用済み自動車のリサイクルに関してカルテルに関与したとし、大手自動車メーカー15社とACEAに総額4.5億ユーロの罰金を科した。
これらの組織は15年間、使用済み自動車のリサイクル慣行において共謀して競争を制限。使用済み自動車の処理費用を解体業者に支払わないことに合意するとともに、自社車両の環境主張を調整していた。これは、リサイクル費用の負担と環境主張の透明性確保をメーカーに義務付けるEU法に違反していた。
リサイクル材最低含有率については、同声明と反対の意見もある。ドイツ自動車工業会(VDA)は、現在の市場では達成できない高いリサイクル材最低含有率目標と需要のない部品の強制的な解体要件は、コスト要因となると批判した。ELV規則案をはじめとする循環経済に関する現在のEUの立法提案は自動車産業の競争力を強化せず、むしろ低下させるとしている。
【プレスリリース】EuRIC and FEAD point at ELV regulation to protect recycling and boost circularity
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