WWFジャパンが事務局を務める国際プラスチック条約 企業連合(日本)は2025年6月27日、法的拘束力のある調和の取れた国際ルールを基盤としたプラスチック条約が、環境汚染の解決だけでなく経済活動にも有益であるとする新たな分析結果を発表した。この分析は、8月にスイスで開催される条約の最終交渉会合(INC-5.2)を前に、日本政府に対して野心的な条約の採択を求める提言の一環として公開された。
この分析は、同企業連合が英調査会社SYSTEMIQに委託して実施した。プラスチック製品の規制や設計、廃棄物管理などに関するルールが、各国で異なる「分散ルール」の場合と、国際的に統一された「調和の取れたルール」の場合とで、経済や環境に与える影響を比較している。分析によると、調和の取れた国際ルールを導入した場合、世界のプラスチック関連の経済活動規模は2040年に1兆4400億ドルに達し、2025年比で31%増大すると試算された。
環境面での効果も大きい。調和の取れたルールは、製品の生産者が使用後の製品の回収・リサイクルに責任を負うEPR(拡大生産者責任)制度の収入を倍増させ、廃棄物管理能力を向上させる。これにより、不適切に管理されるプラスチック廃棄物の量は、分散ルールの場合と比較して2040年時点で世界で23%、日本では11%削減できる可能性がある。
さらに、リサイクルの質と量を向上させる効果も示された。特に、使用済み製品を再び同じ製品の原料として利用する水平リサイクル由来の再生素材生産量は、2040年時点で分散ルールの場合に比べ、世界全体で77%(6800万トンから1億2000万トンへ)、日本では90%(170万トンから320万トンへ)増加する見込みだ。また、問題があり回避可能な使い捨てプラスチックの累積削減量は、2026年から2040年の期間で、分散ルールの場合と比べて世界で2.22倍、日本では2.25倍に達すると予測している。
企業連合は、こうした分析結果を基に、日本政府に対して公開書簡を提出。各国で異なる規制が企業の負担を増やし、サーキュラーエコノミーへの移行を遅らせている現状を指摘した。そのうえで、国際的に調和の取れたルールこそが、公正な競争環境を創出し、イノベーションを促進する最も効果的な方法だと訴えている。
国際プラスチック条約の交渉は、昨年12月の第5回会合(INC-5)で、生産段階での規制などを求める「野心的な条約」を支持する約100カ国と、それに反対する一部の産油国などとの間で議論が平行線をたどった。8月に再開される最終交渉では、これまで立場を明確にしてこなかった日本の動向が、条約の行方を左右する鍵の一つと見られている。
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社の代表職務執行者で、企業連合(日本)の代表を務める松井さやか氏は、「企業として、各国での異なる規制がプラスチック汚染対策の進展を著しく遅らせる様子を、直接目の当たりにしている。製品設計、段階的廃止、EPRに関する明確な規定を持つ統一された規制は、イノベーションを大いに促進するだけでなく、企業にとって公平な競争の場を創出する」とコメントした。
キリンホールディングス株式会社の藤川宏常務執行役員は、「各国でバラバラな規制では、企業の負担が増大し、リサイクル効率が低下する。共通の設計ルールがなければ、リサイクルの品質と供給に悪影響が出る。国際的な枠組みは、一貫したビジネス慣行を可能にし、環境への取り組みを強化し、公正な競争を促進する」と、調和の取れたルールの重要性を強調した。
テラサイクルジャパン合同会社でアジア統括責任者を務める馬場恒行氏は、「この条約が、各国における規制強化の流れを後押しし、世界的に具体的な行動を促す起点となること、また循環型ソリューションの拡大を妨げている経済的障壁の解消につながることを期待している」と述べた。
【プレスリリース】国際プラスチック条約の最終の交渉会議を前に、新たな分析結果を発表 法的拘束力のある調和の取れたルールは経済活動にも有益 ―世界のプラスチックに関連する経済活動31%増大―
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