プラスチック汚染対策の国際条約制定に向けた政府間交渉の第3回会合(INC-3)が11月13日からケニア・ナイロビで開催されるのを前に、野心的な国際共通ルールの制定などを求めるグローバル企業などで構成する国際プラスチック条約企業連合が、このほど日本でも発足した。

企業連合(日本)発足発表会の様子(WWFジャパン提供)

国際プラスチック条約企業連合(Business Coalition for a global plastics treaty)は、エレン・マッカーサー財団と WWF の呼びかけで2022年9月に発足。プラスチックをサーキュラーエコノミーへと移行させ、プラスチックが廃棄されて汚染を引き起こすことを阻止することのできる野心的な国連条約の締結を共同で求めており、2024年末を目途に多国間の条約交渉が終了するまで活動を継続する予定としている。

国際プラスチック条約企業連合にはプラスチックのバリューチェーン全体に関わる 160以上の企業や金融機関、NGOパートナーが参加しているが、日本企業としての参加はまだない。このため、INC-3 の開催に合わせて、プラスチック汚染の解決を推進する企業自らが、交渉で重要な役割を担う日本政府に対して野心的な国際条約を発足させるよう呼び掛けるため、テラサイクルジャパン合同会社(神奈川県横浜市、エリック・カワバタ代表)とWWFジャパン(東京都港区、末吉 竹二郎会長)が中心となって「国際プラスチック条約企業連合(日本)」が発足することになった。

発足時の参画企業は以下の10社(事務局はWWF)。

  • Uber Eats Japan 合同会社
  • 株式会社エコリカ
  • キリンホールディングス株式会社
  • サラヤ株式会社
  • テラサイクルジャパン合同会社
  • 日本コカ・コーラ株式会社
  • ネスレ日本株式会社
  • ユニ・チャーム株式会社
  • ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス合同会社
  • 株式会社ロッテ

企業連合(日本)に参加した企業は今後、国際プラスチック条約企業連合にも参加することになる。

企業連合(日本)は発足に際して「私たち日本で活動し、企業連合のビジョンステートメントに賛同する企業は、汚染の除去のみならず削減、循環、そして予防において、国際的に調和した規制を導入することで世界規模の変化を促進するための、法的拘束力を持つ世界共通ルールと対策とを盛り込んだ、プラスチック汚染に関する国際条約を支持する」とする声明を発表した。

声明の主なポイント

主なポイントは以下の通り。

基本的な立場

条約の草案は、各国政府が実施すべき中核的な義務と政策措置の明確な選択肢を示すことを基盤とすべき

企業連合が望む野心的な条約

1)サーキュラーエコノミーのアプローチによるプラスチックの生産と使用の削減

1.5度未満の気温上昇に抑えるために責任を果たすには、化石燃料から生産されるプラスチックを中心に、すべてのバージンプラスチックの使用を削減すべき

2)根絶ができないすべてのプラスチック製品を循環
  • すべてのプラスチックが安全に使用、リユース、リサイクルされるようにするために、世界的に統一された基準を確立し実施することが重要
  • リサイクルを可能とする設計を義務付けるとともに、リサイクルのシステムとインフラの規模を拡大させるためのターゲットをセットで導入すべき
  • 容器包装やその他の寿命の短い製品を市場に導入するすべての事業者に、使用後の回収・処理のコストを負担し、適正に管理することを義務付ける拡大生産者責任(EPR)制度を確立することは、プラスチック汚染に取り組む上で極めて重要な手段である
  • 廃棄物処理に従事するインフォーマルな労働者は、プラスチック廃棄物の収集、分別、リサイクルにおいて重要な役割を果たす。条約は、サーキュラーエコノミーへの安全で公正な移行を可能にするために、彼らの生計、健康、人権を保護し、尊重すべき
3)プラスチック流出の予防と回復
  • 強固な廃棄物管理手法の実践が必要。また、サーキュラーエコノミーの解決策の導入を地域レベルで促進するには、効果的な規制と財政的インセンティブが必要
  • すでに自然環境を汚染しているマイクロプラスチックおよびマクロのプラスチックの除去に取り組む手法が必要
4)その他
  • 経済的手法や財政的インセンティブの導入、監視および報告体制の構築等の、重要で分野横断的な課題に注意を払うべき
  • 気候変動問題におけるパリ協定の事例を踏まえ、条約は、プラスチック汚染を終結し、プラスチックの安全な循環を促進する対策に、公的・民間双方の資金の流れを集約させることを求める
  • 各国政府が国内および世界的な目標に向けた進捗状況を把握できるよう、効果的な監視・報告システムを構築するための明確な手順を定めるべき。これを支援するために、条約はプラスチック汚染に関連するリスク、機会、影響に関する企業情報をどのように取り扱うかについて原則を示すべき
  • 大企業、多国籍企業、および金融機関によるプラスチック関連の情報開示を義務付け、企業報告が統一された一貫性のある方法で行われるようにすべき

WWF ジャパン サーキュラーエコノミー・マネージャーで、企業連合(日本)事務局責任者の三沢行弘氏は「プラスチック国際条約を野心的で実効性のあるものとするためには、これまでの国別の規制の寄せ集めとしての形式的なものではなく、拘束力を持つ野心的な世界共通ルールに基づくものとすることが極めて重要だ。プラスチックの大量生産に起因する諸問題の解決にコミットする企業にとって、このことは公正な競争環境の下で活動できるようになるという意味でビジネスチャンスとなる」と指摘。その上で、「企業連合(日本)としても、日本政府に対して削減、循環、予防・軽減を3つの柱とした、法的拘束力のある世界共通のルールを基盤とした条約制定に向け、リーダーシップを発揮することを求めていく」などと述べた。

企業連合(日本)に参加する日本企業は、プラスチック使用量そのものの削減(リデュース)に優先的に着手し、その後循環(リサイクル)に取り組んでいくという姿勢を鮮明にした形だ。参加企業が今後具体的にどのように対応するのか、それらの取り組みがどのように他の企業、ブランドに波及していくのか注目したい。

【参照サイト】
共同声明(日本語版) 

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