プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けて作業を進めてきた国連環境計画(UNEP)は、文書の草案(ゼロドラフト)を2023年9月4日付で公開した。本文書には、プラスチック生産の削減、ポリマーや懸念される化学物質の排除、短命かつ使用を回避できるプラスチックの排除、プラスチックの削減と再利用のための目標とシステムの構築など、プラスチック汚染規制とプラスチック減産に向けた政策オプションが盛り込まれている。11月13日からナイロビで開催予定の第3回政府間交渉委員会で議論される。

生産量の削減、化学物質の排除につながる条項を盛り込めるかがカギ

今回公開された草案の第1部では、「目的」の見出しの下に2つの主要な選択肢が挙げられている。

目的の見出しの下の選択肢

選択肢1:この文書の目的は、海洋環境を含むプラスチック汚染をなくし、人間の健康と環境を保護することである。

選択肢2: この文書の目的は、海洋環境を含むプラスチック汚染から人間の健康と環境を守ることである。

上記2つの選択肢に対する4つの下位選択肢

1.1 プラスチック汚染を終わらせることによって。
1.2 プラスチックの全ライフサイクルに対応する包括的アプローチに基づく。
1.3 2040年までに、プラスチックのライフサイクル全体を通じて、プラスチック汚染の防止、段階的削減、廃絶を行う。
1.4 特に、プラスチックの利用とプラスチック廃棄物の両方を管理し、持続可能な開発の達成に貢献することを通して。

環境監視団体の反応は?

これに対して、環境監視団体のBreak Free From Plasticは「リサイクルや廃棄物管理対策に重点が置かれており、再生プラスチックの含有量や拡大生産者責任、廃棄物管理について、潜在的に問題のあるあいまいな条項や文言が含まれている。野心的な基準がなければ、これらの分野では条約の実効性が損なわれる可能性がある」と懸念を示した。同団体のグローバル・コーディネーターであるフォン・ヘルナンデス氏は「今回の草案は第3回政府間交渉委員会での交渉に向けた良い基礎にはなる。しかしながら、問題は細部にあり、とりわけポリマー、プラスチック製品、懸念される化学物質を削減・排除するための基準に合意しなければならない」とくぎを刺している。

プラ汚染規制、米中の立場の違いが鮮明

2023年5月に開催された第2回政府間交渉委員会では、プラスチックの使用と生産をどのように、どの程度規制するかについて、交渉参加国の見解が分かれた。

例えば、米国は規制の大部分を各国に委ねようとしている。一方、中国は国際社会としてプラスチック汚染の悪影響から人間の健康と環境を守るために、プラスチック廃棄物の環境への流出を減らすための必要な措置を講じるべきだという立場を崩していない。

プラスチック汚染規制に向けた政府間交渉委員会の会合は5回予定されている。11月の第3回を経て、最終会合は2024年12月に開催される予定。2025年までに強制力のある条約を作成するという、拘束力のない期限が設定されている。

【ドラフト全文】Zero draft text of the international legally binding instrument on plastic pollution, including in the marine environment