株式会社三菱総合研究所(以下、MRI)はこのほど、株式会社ジェーシービー(以下、JCB)の協力のもと、ウェルビーイングと消費に関する研究を実施した。同研究内でのアンケート調査結果からは、日本のエシカル消費の状況およびポストコロナの消費者像が浮き彫りとなった。MRIが発表した研究内容は以下のとおり。

背景

エシカル消費が注目されるなか、同研究では、エシカル消費の市場規模や内訳を明らかにするとともに、エシカル消費拡大を通じた人と社会のウェルビーイングを向上させるうえで企業が取り組むべき方向性を提言する。

主な研究成果

同研究では、エシカル消費を「企業が、消費者を『社会・地球の持続可能性を高める活動』へと巻き込み、ウェルビーイングを向上させる取り組み」と定義。そして、JCB会員を対象にしたアンケート調査(回答者数3,301名)を用い、MRI版ウェルビーイング指標を基に特定した15のエシカル消費形態別に消費頻度、消費額、消費目的を、個人を特定できない形で集計・分析し、エシカル消費の動向を探った。その結果、日本のエシカル消費について、以下のような状況が明らかになった。

  1. 日本のエシカル消費額は約8.8兆円、家計消費支出の約3.1%※1
  2. エシカル消費の50%が「社会・地域のため」と「自分のため」の両方を目的としており、純粋にエシカルを目的とした消費は約4割(約3.7兆円)
  3. エシカルな価値観を重視するほどエシカル消費の頻度・金額は増加する傾向がある一方、エシカルが重要と考える消費者でも実際にエシカル消費を行っている消費者は半数に満たない
  4. エシカルな価値観を持ちつつエシカル消費を行っていない消費者は、エシカル消費を行っている消費者と比較し、情報感度や価格重視度、ライフスタイル(インドア/アウトドア)などに有意な違いが認められる
  5. 消費者のウェルビーイングを高めるエシカル消費形態は「芸術作品、郷土品の購買」「地元地域での飲食、地元商店街での購買」「地元イベントでの購買」

また、同研究では、アンケート調査に加え20~60代の男女11名へエシカル消費に関するインタビュー調査を実施。その後、MRIは消費者が「エシカル消費」を認知してから購入に至るまでの一連のプロセス(カスタマージャーニー)を6つのステップに分類し、エシカル消費に関する消費者の率直な声を探った。

  1. エシカル消費を知るきっかけは、テレビ番組やネットニュース、ポイントアプリ内の宣伝などが多く、エシカル消費の実践者は、地域・社会に対する問題意識を持ち、情報感度が高い傾向(上記 4.に関連)
  2. 「自分のためにもなる」社会貢献の在り方としてエシカル消費は広がりつつあり、多くの消費者が「自身の無理のない範囲の」エシカル消費を継続(上記 2.に関連)
  3. エシカル消費の実施・継続にあたっては価格の高さ、選択肢の少なさ、(社会貢献)効果への疑念払拭などが課題、エシカル消費の一層の拡大・定着のためにも企業側の取り組みが重要

注:スクリーニング質問で全国のモニターから対象者を抽出し、上記6つのステップに沿って定性インタビューを実施。
出典:チャットインタビューサービス「Sprint」(2023年5月22~26日実施、11サンプル)の結果より三菱総合研究所作成

上記の分析結果や追加的に実施した消費者インタビュー、および企業ヒアリングの結果から、エシカル消費拡大に向けた課題と課題解決に向けた方向性を以下のとおり取りまとめた。出典:三菱総合研究所

同研究からは、消費者にとってエシカル消費がしやすいような選択肢の多様化と市場拡大、企業側の努力が期待されるが、企業によるマーケティングなど訴求力の強化も求められていることがわかる。現状の消費者ニーズを探る上で参考にしたい研究成果だといえる。(レポート全文はこちら

※1:世帯年収区分別・年齢区分別の世帯構成比でウェイトバック集計を行った結果。詳細は「【付録F】「エシカル消費規模の推計」」を参照。

【プレスリリース】ウェルビーイング時代の消費の在り方を提言 人や社会・環境に配慮したエシカル消費の拡大に向けて